先月全面リニューアルされた渋谷パルコPART3。買い物のついでにいちおう一通り視察。
もともと壁際にあった(しかも上りしかなかった気がする)エスカレーターの位置がフロア中央に変わって、普通のテナントビルっぽいレイアウトに。客の側としては使いやすくて助かる。しかし肝心の各ショップのデザインがどれもこれも酷いのなんの。カネもなければ工夫も無い、まったくやる気の無い感じで不景気感全開。ぜんぜん買い物する気がしなくて、結局5・6FにあるMUJIまで完全に素通りしてしまった。で、B1Fをまだ見てなかったのでエレベーターで直接下る。ひとまわりして出入口方面へ。
そこにあったんですよ。スゴいお店が。
『poker face』と言う名前のアイウェアショップ。通路に張り付くように配置された細長い区画なんだけど、きれいなペールイエローに塗装されたパンチングメタルの間仕切りを効果的に使って、不思議な奥行き感のある空間に仕上がっている。床のカーペットタイルの鮮やかなブルーがビシっと映える。
写真は全景だけしか撮れなかったんだけど、圧巻なのはディテール。棚板はスチールの支持棒をパンチングメタルの間仕切りから持ち出して(溶接跡は研磨されて完璧にフラットな状態に仕上がっている)、その上に薄いスチールプレートを溶接。スチールプレートの端部は絶妙な角度で折り曲げてあって、強度を出すとともに支持棒の存在を消し去っている。
眼鏡と一緒に棚の上に置かれた小さなミラーはステンレスの鏡面仕上(つまり落としても割れない)。間仕切りの上下の納まりも極めてスッキリ。スチールプレートとガラスを組み合わせた中央什器も美しい。ダウンライト中心のライティングはオーソドックスながら完璧。
とてもシンプルでカジュアルな雰囲気の小さなお店なんだけど、その実、恐るべきクオリティの高さ。久しぶりに本物の“いい仕事”を見たなあ。果たして誰がデザインしたんだろう?
と思って、帰宅してから調べてみたところ、、、なんと!内田繁氏でした。
パルコPART3にあるそれこそ何十店舗もの中で、見るべきものは唯一、大御所中の大御所・内田氏が手がけたこれだけ、と言うのはなんとも愉快でもあり、また寂しくもある。いったい下の世代のデザイナーたち(自分たちも含めて)は何をやってるんだか。そしてパルコよ、これでいいのかね、まったく。
内田繁氏ではなく、内田氏の事務所「スタジオ80」によるデザインです。
デザインされた方は、この後スタジオから独立されたようです。
>きよふみさん
ご指摘を大変ありがとうございます。当時の『poker face』のホームページに空間デザイナーとして内田さんの名前が前面に出されていたこと、内田氏の作品集(内田繁with三橋いく代/六耀社)に『poker face』の初期の店舗が掲載されていることなどから、パルコPART3店のデザインもてっきり内田氏が主導されたものだと考えていました(実際のデザイン作業にスタジオ80の方が大いに関わっていらっしゃることはもちろん理解していました)。
もし実際のところ内田氏がほとんど関わっていないとなると、記事を書き直さなくてはなりません。正しくはどうクレジットするべきでしょうか?よろしければきよふみさんがお持ちの情報と、その出所を教えていただけましたら大変幸いです。
その後、『poker face』渋谷店の担当デザイナーがどなただったかがようやく分かりました。スタジオ80から独立された山本達雄さん。現在も引き続き『poker face』各店のデザインを手がけておられる模様です。
同世代のデザイナーとして、今後の活躍がとても楽しみな方です。