展覧会などいろいろと話題が出たところで我が家にある剣持デザイングッズについて書いておこう。佐藤商事で現在も生産されている(デザインされたのは1965年)カトラリーのシリーズ『笹(sasa)』。
一見してなんでもない至ってフツーのカトラリーだと思われるかもしれないが、さにあらず。デザインに興味のある方ならその細部にじっと目を凝らしてみて欲しい(他の写真はこちら)。頭部のスッキリとした丸み。ぎゅっと絞り込まれた細い首。そこから柄の端部に向かって広がる直線的なラインはバシっと切り落とされるようにして終わる。虚飾を排し、有機性にも幾何学性にも偏ることのないフォルム。実に清廉かつ優美ではないか。
先細りの柄を手に取ると、思いのほか角ばったエッジと厚手のステンレスによる適度な重みが印象的だ。なるほど、この感覚は具合のいい箸を持った時のものに近い。そこで私たちははっと気づく。これが剣持の言う“ジャパニーズモダン”かと。
もうひとつ、重要なことはこのカトラリーが極めて機能的だと言うこと。手に持ったときも皿に置いた時にも、その重量バランスの良さは抜群。ナイフ(このフォルムがまた素晴らしい)の切れ味も、フォークの刺さり具合も、スプーンの口当たりも申し分ない。
残念ながら佐藤商事の商品としてはまったく目立たない存在ではあるが、この『笹(sasa)』は間違いなく剣持勇の代表作であり、デザイナーズカトラリーの代表格として今後さらに注目されるべきプロダクトだと思う。引き合いに出して申し訳ないが、正直、柳宗理氏デザインのカトラリーとは比べ物にならないほど使いやすいんだこれが。
剣持勇という巨星(OZONE)
ジャパニーズモダン 剣持勇とその世界