9/20。定例の現場打ち合わせ。大工さんに内装工事の概要を説明。ガレージ用シャッターの仕様を決定。
上の写真は先日下地ができた屋根の様子。この上からFRP防水を施す。手摺の無い足場を上ってなんとか撮影。こ、こえ〜。3枚ほど撮ったら慌てて退散。
玄関まわりやガレージなど、建築本体とは切り離された構造となる部分の基礎工事が始まった。大工さんとコンクリートミキサー車のオペレーター(兼運転手)さんとの連携作業。
インテリア・デザインは舞台装置のように<虚構>の世界に入り込むことも十分に考えられます。しかし舞台と役者のかもし出す空間と時間が観客にとって虚構を乗り越えた<何か>でなければなりません。虚構がみえみえではしらけてしまいます。(渡辺力)
SD 1986年5月号(鹿島出版会)より。
9/13。午前中から現場打ち合わせ。いまだ決まっていなかったサッシの仕様について、ここに来てようやく踏ん切りを付けられるだけの資料が揃った。半ばストップしていた現場もこれで動き出すだろう。
それにしてもなぜ国内サッシメーカーはどこも揃って住宅用アルミサッシのラインアップからアルミシルバー色を外してしまったのか。アルミはアルミらしい色である方が美しいのに。
また、ビル用サッシは住宅用サッシに比べて同等かそれ以上の強度があるはずなのに、使用建築物の高さに関わらず住宅用よりも小さなサイズまでしかメーカー保証されないのはどういうわけか。矛盾も甚だしい、と言うか杓子定規にも程があるってもんだ。言い訳は既にあちこちでさんざん聞いたが、聞けば聞くほど大手業者による消費者不在のなし崩しを痛感するばかり。
現場では屋根の下地工事が終わり、壁胴縁の溶接が進行中。建物は白と緑のシートに包まれた状態に。
1Fでは午後からの上棟式に備えたセッティングが行われていた。ベニヤと角材が養生シートにくるまれてテーブルとベンチに早変わり。
15時から上棟式。たくさんの職人さんとはじめてご挨拶をさせていただき、酒を酌み交わしつつ、宴は夜20時頃まで続いた。戦いはこれからが本番だ。
談志VS文珍ふたり会
9/10。東京芸術劇場へ『東西落語名人会/立川談志・桂文珍』を見に行った。老齢に入った東の名人と、今や誰もが突出した実力を認める西の天才との夢の競演。
立川志ら乃さんの『真田小僧』に続いて先ずは文珍師匠が登場。タイムリーな選挙の話題(東京芸術劇場のある場所は小池百合子氏が出馬した東京10区にあたる)を枕の中心に据えて、「談志師匠はまだ見えておりません。ま、いつものことなんですが。」と楽屋ネタも交えつつひとしきり盛り上げた後、始まった演目は関西落語のスタンダード『舟弁慶』。これがもう素晴らしかったのなんの。文珍師匠一流の美しくもファンキーな大阪ことば、キレの良い展開、チャーミングな仕草などなど、どこをとってもまさに絶品。今までに何度か見た師匠の落語の中でも最高の高座のひとつだった。
いきなり文珍落語の真骨頂をこれでもかと見せつけられた後、中入りを挟んで文珍師匠が再度登場。枕の途中で談志師匠がまだ楽屋に現れないことをバラしたところで客席の出入口から大きな声がかかった。これが談志師匠。いかにもらしい登場の仕方に会場は大ウケ。
文珍師匠の演目は創作落語『老楽風呂』。メインディッシュ後のデザートという感じの軽めの演目。以前に一度聞いた時よりもスーパー銭湯に登場する老人のキャラクターが強力に描かれ、テンポの良い展開。爽快な印象とともに高座を後にする文珍師匠。
で、いよいよ談志師匠の登場。「文珍があれだけ笑わせたんだから」というわけでいつもの小咄はそこそこに落語と狂気にまつわる持論をはなしはじめた。そして突如はじまった演目は『居残り左平次』。遊郭の勘定を煙に巻いたあげく大金をせしめて去ってゆく主人公・左平次の強烈なキャラクターはまさしく“狂気”をテーマにするにはもってこいだ。
ところがなんと談志師匠は途中うっかりはなしを抜かし、展開の順序を入れ替えて無理矢理通してしまう。図らずも(もしかするとわざとだったのか?)そのことがこの演目の持つ不条理さとナンセンスさを増幅していたように思われてならない。
なんとも言えない新鮮な感覚が残された後、文珍師匠が三たび登場し、談志師匠とふたり並んでのトーク。談志師匠は先ほどの枕での話題をさらに展開させ、「どこまでもドライで、全ての感情表現の裏にまた別の感情が存在するような落語を演りたい。できるような気がする。」と語る。「ご立派な病気だと思います」と笑顔で受け流す文珍師匠を談志師匠が「妖怪のようだ」と評していたのが印象的だった。
ただの失敗か、名人ならではのひらめきか。おそらくこの日の談志師匠の高座の評価は人によって真二つに分かれるだろう。少なくとも私たちは貴重でスリリングな体験ができたことを幸運だと思った。文珍師匠の至芸がますます研ぎすまされてゆくことも楽しみなら、枯れてなお新しい境地を目指す談志師匠の落語も一層楽しみだ。
9/6。このところ毎週恒例の現場打ち合わせ。床スラブコンクリートの打設が終わり、屋根工事が進行中。地下フロアはこの間まですごい密度で林立していたサポートが撤去され、ようやく歩き回れる状態となっていた。
午後一番から始まった打ち合わせが終わる頃にはもうすっかり夕方。暗い階段を足下に注意しながら上がり、各フロアの空間ボリュームを確認。
南側の庭に向かって大きく開かれた開口部は、当初の狙い通りかなり気持ちのよいものになりそうだ。
9/3にlove the lifeがプロデュースするプロダクトレーベル『勝野屋』のホームページを全面リニューアルしました。現在の取り扱い製品は照明器具、ラグ、手拭の3種類。計12品目がラインナップされています。国内工場での生産にこだわり、ほとんどコスト度外視でクオリティを追求した製品は全て『勝野屋』のオリジナル。love the life、押本祐二さん、spiralgraphixが勢いとノリと心意気でデザインを手がけています。
簡易なシステムで恐縮ではありますが、web通販も可能です。少しくらい高くても本当にユニークなものを、と言う方にぜひご覧いただきたいです。アクセスしてね。
9/2。銀座『十一房珈琲』に初めて行った。ヴィンテージ(オールドビーン)コーヒーも揃う自家焙煎店。『ランブル』出身の山田幸男氏(高円寺『十一房珈琲』,荻窪『移山房』)から焙煎を学んだ故・及川俊彦氏が1978年に開業(開業当初の店名は『ベシェ珈琲店』だった)。阿佐ヶ谷『ドゥ・ワゾー』のマスターはこの銀座『十一房珈琲』の出身と聞く。
と、そんな事前情報から来る緊張感が一気に弛緩するくらいに『十一房珈琲』はあっけらかんと明るく清潔な雰囲気の店だった。店の手前半分を占領するロースターこそ多少物々しいものの、オフホワイトの壁や天井にダークウッドの造作やリブ材が控えめにあしらわれたインテリアはまるでフレッシュネスバーガー。ただし、どこを見てもほこり一つ無く掃除が行き届いていることが、この店のオーナーの気質を物語る。カウンター席に座ると、銅板製の換気フードやカウンターバックのディスプレイ棚が鈍い光沢を放つ様子が印象的。真空管アンプから古いジャズが控えめに流れる。
この日いただいたのはフルシティローストのブレンドと、開店26周年記念のヴィンテージ・パプア・ニューギニア(1978)。ネルドリップの動作は実に丁寧だ。時折豆を動かすようにネルを傾けるのと、抽出した珈琲を加熱してから提供するという2点がこの店の珈琲に対する考え方と場所柄とを表しているように思われた。
ブレンドはバランスの良さが際立つ味わい。予想した通り、店構え同様の親しみやすさ。一緒に注文したクッキーも甘さ控えめで美味しかった。対してパプア・ニューギニアのインパクトは実に強烈。あれほど深く、しかもクリアな珈琲を飲んだのは久しぶりな気がする。ほかのヴィンテージやストレートもぜひいただいてみなくては。
カジュアルさと奥深さの同居する銀座の名店。何度も足を運びたくなる珈琲店がまた増えた。
十一房珈琲店/東京都中央区銀座2-2-19/03-3564-3176
10:00-22:00(土11:00-21:00,日祝12:00-21:00)/無休