9/2。銀座『十一房珈琲』に初めて行った。ヴィンテージ(オールドビーン)コーヒーも揃う自家焙煎店。『ランブル』出身の山田幸男氏(高円寺『十一房珈琲』,荻窪『移山房』)から焙煎を学んだ故・及川俊彦氏が1978年に開業(開業当初の店名は『ベシェ珈琲店』だった)。阿佐ヶ谷『ドゥ・ワゾー』のマスターはこの銀座『十一房珈琲』の出身と聞く。
と、そんな事前情報から来る緊張感が一気に弛緩するくらいに『十一房珈琲』はあっけらかんと明るく清潔な雰囲気の店だった。店の手前半分を占領するロースターこそ多少物々しいものの、オフホワイトの壁や天井にダークウッドの造作やリブ材が控えめにあしらわれたインテリアはまるでフレッシュネスバーガー。ただし、どこを見てもほこり一つ無く掃除が行き届いていることが、この店のオーナーの気質を物語る。カウンター席に座ると、銅板製の換気フードやカウンターバックのディスプレイ棚が鈍い光沢を放つ様子が印象的。真空管アンプから古いジャズが控えめに流れる。
この日いただいたのはフルシティローストのブレンドと、開店26周年記念のヴィンテージ・パプア・ニューギニア(1978)。ネルドリップの動作は実に丁寧だ。時折豆を動かすようにネルを傾けるのと、抽出した珈琲を加熱してから提供するという2点がこの店の珈琲に対する考え方と場所柄とを表しているように思われた。
ブレンドはバランスの良さが際立つ味わい。予想した通り、店構え同様の親しみやすさ。一緒に注文したクッキーも甘さ控えめで美味しかった。対してパプア・ニューギニアのインパクトは実に強烈。あれほど深く、しかもクリアな珈琲を飲んだのは久しぶりな気がする。ほかのヴィンテージやストレートもぜひいただいてみなくては。
カジュアルさと奥深さの同居する銀座の名店。何度も足を運びたくなる珈琲店がまた増えた。
十一房珈琲店/東京都中央区銀座2-2-19/03-3564-3176
10:00-22:00(土11:00-21:00,日祝12:00-21:00)/無休