life
life of "love the life"

落語初心者のメモ : 談志VS文珍ふたり会

談志VS文珍ふたり会

9/10。東京芸術劇場へ『東西落語名人会/立川談志・桂文珍』を見に行った。老齢に入った東の名人と、今や誰もが突出した実力を認める西の天才との夢の競演。

立川志ら乃さんの『真田小僧』に続いて先ずは文珍師匠が登場。タイムリーな選挙の話題(東京芸術劇場のある場所は小池百合子氏が出馬した東京10区にあたる)を枕の中心に据えて、「談志師匠はまだ見えておりません。ま、いつものことなんですが。」と楽屋ネタも交えつつひとしきり盛り上げた後、始まった演目は関西落語のスタンダード『舟弁慶』。これがもう素晴らしかったのなんの。文珍師匠一流の美しくもファンキーな大阪ことば、キレの良い展開、チャーミングな仕草などなど、どこをとってもまさに絶品。今までに何度か見た師匠の落語の中でも最高の高座のひとつだった。

いきなり文珍落語の真骨頂をこれでもかと見せつけられた後、中入りを挟んで文珍師匠が再度登場。枕の途中で談志師匠がまだ楽屋に現れないことをバラしたところで客席の出入口から大きな声がかかった。これが談志師匠。いかにもらしい登場の仕方に会場は大ウケ。
文珍師匠の演目は創作落語『老楽風呂』。メインディッシュ後のデザートという感じの軽めの演目。以前に一度聞いた時よりもスーパー銭湯に登場する老人のキャラクターが強力に描かれ、テンポの良い展開。爽快な印象とともに高座を後にする文珍師匠。

で、いよいよ談志師匠の登場。「文珍があれだけ笑わせたんだから」というわけでいつもの小咄はそこそこに落語と狂気にまつわる持論をはなしはじめた。そして突如はじまった演目は『居残り左平次』。遊郭の勘定を煙に巻いたあげく大金をせしめて去ってゆく主人公・左平次の強烈なキャラクターはまさしく“狂気”をテーマにするにはもってこいだ。
ところがなんと談志師匠は途中うっかりはなしを抜かし、展開の順序を入れ替えて無理矢理通してしまう。図らずも(もしかするとわざとだったのか?)そのことがこの演目の持つ不条理さとナンセンスさを増幅していたように思われてならない。

なんとも言えない新鮮な感覚が残された後、文珍師匠が三たび登場し、談志師匠とふたり並んでのトーク。談志師匠は先ほどの枕での話題をさらに展開させ、「どこまでもドライで、全ての感情表現の裏にまた別の感情が存在するような落語を演りたい。できるような気がする。」と語る。「ご立派な病気だと思います」と笑顔で受け流す文珍師匠を談志師匠が「妖怪のようだ」と評していたのが印象的だった。

ただの失敗か、名人ならではのひらめきか。おそらくこの日の談志師匠の高座の評価は人によって真二つに分かれるだろう。少なくとも私たちは貴重でスリリングな体験ができたことを幸運だと思った。文珍師匠の至芸がますます研ぎすまされてゆくことも楽しみなら、枯れてなお新しい境地を目指す談志師匠の落語も一層楽しみだ。

立川談志
桂文珍 (geinin.jp)

2005年09月15日 05:59 | trackbacks (0) | comments (0)
comments

post a comment




*ご記入のメールアドレスはブログ管理者にのみ通知され非公開となります。



back|mail
copyright