11/22。二週見ないうちに現場の様相はずいぶんと変わった。
床、壁、天井の木下地組が急ピッチで進行中。
今回はフロアの大部分にイゼナの床暖房システムを導入。根太に沿って水の入った真空パックがずらりと並べられてゆく。上の3枚の写真は1Fの様子。
こちらは3F。右の写真は和室の天井の間接照明部分の下地組。
屋外ではコンクリート型枠が全て撤去され、庭を取り囲む木柵の工事のための足場が組まれつつある。右の写真は2Fテラスのウッドデッキの下地の下地。
写真左はアプローチのブリッジを見上げたところ。
B1Fでは倉庫壁の下地モルタル塗りが進行中。
11/14。イタリアに来てから初めての晴天。
朝のヴェネチアは美しい。晴れていればなおさらと言うものだ。
運河は静かな活気に満たされている。
が、11時過ぎには飛行機に乗らなくてはならない。バスやタクシーのターミナルとなっているローマ広場へとゆっくり向かいながら写真を何枚も撮る。
結局のところ、イタリアではほとんど仕事ばかりで満足に観光名所を巡ることは丸きりかなわなかったが、代わりにまた訪れなくてはならない理由がたくさん出来た。
それでもボローニャ、フィレンツェ、ヴェネチアという全く構造の異なる3都市を歩くことが出来たのは大きな収穫だった。ヨーロッパの都市文化とその成立ちは実に奥深く、興味をそそられる。おそらく今後は日本の都市を見る目も変わるだろう。
マルコ・ポーロ空港へはタクシーで十数分。木構造のトップライトが印象的な明るい内部空間。
行きと同じくオーストリア空港のプロペラ機に乗り込み、2時間後にはウィーンでのトランジット。さらに10時間余りで成田に到着する。
飛行機の窓から広がる眼下にはヴェネチアとその周辺のラグーン(潟)。世界遺産に指定された独特の複雑な地形に思わず目を奪われる。
アリヴェデルチ・イターリア。
さらに11/13の続き。ヴェネチアでの食事は魚介三昧。
上の写真はこの日遅いランチをとった『Trattria dai Peochi』という小さな店。サンタ・フォスカ教会のそば。つつましやかで枯れた感じのいい佇まい。
木の梁が露出した低い天井と現場打ちテラゾの床はヴェネチアの商店で多く見かけるスタイル。ペンダントライトの貝殻のように波打ったかたちの陶製シェードがこの店のインテリアを特徴づけている。
フロアを仕切るのはカウンター左に居るヒゲのオヤジ。長身で強面。客を寄せ付けない風貌。応対にも全く愛想というものが無い。可愛らしい店のつくりとは明らかにミスマッチ。
が、しかし料理は旨い。見た目は素っ気ないが、素材の味が嬉しい。「ヴォーノ!」と伝えると、ニヤりと一瞬口元で笑うオヤジ。ワインもいただいてお腹いっぱいで一人3000円くらい。この店、気に入った。
遅い夕食はサント・ステファーノ教会脇の路地裏にある『Da Fiore』で。魚のマークの赤い看板がかわいい。店内は意外に広く、バースペースもある。キッチンに面したフロア中央にある冷蔵ショーケースには旨そうな食材が満載。
訪れた時間のせいかもしれないが、テーブルは地元客と思しい人たちでいっぱい。それでもフロアを切り盛りする女性たちの親しみやすく、かつ上品な応対のおかげで疎外感を感じるようなことは無い。ソムリエール(この人が素晴らしくお洒落でカッコ良かった)に薦めていただいた白ワインが実にキリっとした絶品の味だったんだけど、銘柄を忘失。
で、料理がこれまた素晴らしかった。貝や海老が中心の前菜盛り合わせ(写真右上)の旨かったのなんの。仕事がいい、と言うのも当然あるが、イタリアの魚介も侮れないと痛感。アサリとトマトのパスタ、メインの魚介グリル(それぞれ写真左下・右下/どちらも取り分けられた状態)も言うこと無し。ちょっと食べ過ぎくらいで会計は一人6、7000円くらい。大満足。
帰り際、閉店時間を大幅に押していることに気がついた。まったくそれとは気付かせない応対に感謝。また行かねば。
上はおまけの写真。ヴェネチアのスーパーマーケットの風景。タコのパッケージが強烈な魚売場(写真左)。鶏と兎の剥身が仲良く並ぶ肉売場(写真右)。魚の値段はそこそこだったが、肉や野菜はとにかく安い。
ヴェネチアでは『Hotel Principe』に一泊。
エントランスロビー(写真左)。こぢんまりとして適度に古びたいい感じのホテル。フロント手前のドーム天井が美しい(写真右)。通路やエレベータ前のスペースは狭くて段差が多く迷路っぽい。
部屋もまたこぢんまりとして居心地が良い。バスルームもコンパクト。セーフティボックスの鍵が無かったことだけはいただけないが、ポーターさんの映画に登場しそうなコメディアン顔に免じて大目に見よう。
ホテル内のレストラン。間接照明とヴェネチアンガラスのシャンデリア。
部屋の窓から見たヴェネチアの街並。
11/13の続き。
ヴェネチアに来た目的は商店のショーウィンドウをリサーチすること。実際に歩いてみると、なるほど、そのディスプレイデザインとしてのレベルの高さに驚く。これもまたヒューマンスケールの街並ならではの傾向だろう。
これは毛皮のお店。こうして半円形のカーテンで仕切られた傾斜ステージのショーウィンドウが5面ほどある。カーテンの吊元を見ると、天井からの支えがパールで装飾されている。どこまでも上質でエレガント。
これは寝具のお店。軒のメタリックな質感が効果的な額縁となる。球形のスポットライトもいい。
手袋のお店(写真左)。ショーウィンドウであると同時に什器でもあるディスプレイ。店内にはカウンターとストックしかない。狭い店舗区画を効率的に生かしたつくり。
写真右はマスクのお店。デザインがどうこうと言うものではないが、なにしろものすごいインパクト。怖過ぎ。
魚介料理をメインに提供するリストランテのウィンドウディスプレイ。静物画のような美しさ。
冷蔵ショーケースを路面にせり出して、そのまま販売カウンターにしている店も多く見かける。閉店時にはそれを引っ込めてシャッターを降ろす。上の写真はジェラート屋さん。クッキーがナメクジの角のように刺さっているのがかわいい。
ショーウィンドウではないが、ヴェネチアではホテルの構えも独特だ。
写真左はLocande Ca Gottardiのエントランス。ガラス越しには美しくライトアップされたシンプルなオフホワイトの空間と階段(大理石の階段を切断するようなガラスの手摺の納まりが印象的)が見えるだけ。知らなければ店なのか何なのか全く分からない。
写真右はHotel Antico Dogeのエントランス。こちらもまた廊下と階段だけ。観音開きの自動ドア。壁際に並ぶ装飾がとてもセンス良く、可愛らしかった。
11/13。ユーロスターでヴェネチアへ。
F.S.サンタ・ルチア駅のホーム(写真左)。緑がかったダークグレーの天井面はガラス質のモザイクタイル。さすがにところどころ剥がれ落ちてはいるものの、ヴェネチアに来たな、と実感が湧く。
駅を出たところの風景(写真右)。ボローニャとフィレンツェを見た後の私たちには、まるで街並がミニチュアセットのように感じられる。なんとまあ可愛らしいこと。
スケールが小さいのは建物だけではない。街路や水路もまたしかり。クルマの入れない街では全ての距離感が実に親密だ。
写真右はサン・ジェレミア広場。
建物と建物の間に洗濯物が干される路地裏の風景(写真左)。
アパートの呼鈴(写真右)。
リアルト橋からの夜景。
11/12の続き。
フィレンツェの街並はボローニャに比較すると実にカジュアルだ。雑然として、まとまりが無く、親しみやすい。もちろん日本の都市に比べると、細部ははるかに整理されているが。
フィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェッラ駅。大理石をふんだんに用いつつ大胆な構造でモダンにまとめたコンコースのデザインがカッコいい。一方、案内サインや時刻表はひどく不親切だけど、その辺はどうもこの駅に限った話では無いらしい。
補修工事中のドゥオモにチェレッターニ通りを挟んだ向かい側から仮設のブリッジが渡されていた(写真左)。素材は全て亜鉛メッキのスチール。柱上のリブのデザインが面白い。
写真右は駅近くのサンタ・マリア・ノヴェッラ教会。
サンロレンツォ教会。写真には写っていないが、その周りは無数のテントに包囲され、怪しい衣類や雑貨で賑わっていた。それにしてもフィレンツェには露天商が多い。しかも売り物は恐ろしく下らない土産物ばかり。巨大な工芸品のような古建築群との対比はあまりに激しい。雰囲気としては修学旅行シーズンの奈良と浅草と京都嵐山とが合体した感じ(どんなだそりゃ)に近いんじゃないか。ハイパー観光地。
夕食を採ったドゥオモ脇のリストランテ。古いインテリアを生かしつつディテールを省いて上手く2001年的空間に仕上げてある。照明もいい。が、パスタやリゾットの味は日本のファミレス並み。料金はエラく高かった。まあ、ある意味期待通り。
ドゥオモ近くの大型バルにあったパニーニのショーケース(写真左)。宝石箱のような美しさ。
カルツァイウォーリ通りにあったシューズショップ『FAUSTO SANTINI』(写真右)。白い大理石とスチールによるシンメトリーでスクエアな空間構成と冷ややかな質感が印象的。写真はあまり良くないけど、このイタリア視察中で最も感心したインテリアデザイン。ウェブサイトを見ると、このブランドのインテリアデザインはどのショップもかなり見応えがありそうだ。チェックしとこう。
11/12。夕方にユーロスターでフィレンツェ入り。
駅近くを下調べ無しでフラフラと数時間だけ観光。
夜空に浮かび上がるドゥオモの異様。まるで巨大生物の骸骨を思わせる。
それにしてもデカい。デカ過ぎる。しかもそのディテールの精緻なこと。
カテドラーレのファサードを洗礼堂の足下から見上げると、無数の聖人がこちらへと一斉に視線を投げ掛ける。思わず冷や汗。
現在はあちこちに足場がかけられ、補修工事が行われている模様。工事箇所以外にも大理石の剥がれた部分や汚れの激しい部分は多い。これだけデカいと常に直しながらじゃないと維持できなさそうだ。
これだけのものを作り上げた人々に心底敬服する。また同時に、宗教の力と言うのはつくづく恐ろしいとも思う。
11/12。午前中に少しだけ散歩。
『kartell』のショップと街角の公衆電話。
天井のデザインとレンガの使い方が美しいポルティコ(写真左)。
平日と違ってクルマの往来の少ないインディペンデンツァ通り(写真右)。
少し街外れに行くと、新しい建物の多くに写真左(これはボローニャ中央駅の近くにあったホテル)のようなコンクリートと煉瓦の繊細なコンビネーションが用いられていることに気付く。良くできている。
写真右は工事フェンスに覆われた改装中の劇場。ストライプの工事フェンスも良く見かけた。イタリアではこういうのが標準仕様なのだろうか?
写真左は道路工事中のおじさん。車道の石畳をひとつひとつ人力で取り除いている。このペースじゃあ一生終わらないんじゃないかと心配になってしまう。
写真右はバッグ屋さんのカッコいいレジスター。
ボローニャでは『Royal Hotel Carlton』に5泊。
地上階・エントランスロビーの様子。
ロビーの別カット。そこそこクラシカル、そこそこモダン。なんてことの無いインテリアだが、質感の高さには脱帽する。シンプルなデザインながら見事な光を放つシャンデリアは、最近クリスタルビーズを安易に用いがちな日本のダメデザイナーの皆さんに「これを参考にして全部やり直しなさい」と言いたいくらい。
壁や天井にはアンティコ・スタッコがふんだんに用いられている。あらためてその良さを再認識。
ロビーからレストランエリアへと続く通路沿いの様子。目地無しでピッタリと敷き詰められた大理石の床。この美しさと施工精度はまさに驚愕モノだ。
泊まった部屋はこんな具合。そこそこ広く、設備も行き届いているが、わりと無味乾燥。
建物の外観(写真左)はかなり無味乾燥。悪くはないが、ボローニャの街並には今ひとつ調和していないのが残念。
写真右は客室フロアの通路。アンティコ・スタッコの壁に荷物をぶつけないようヒヤヒヤしながら歩いてしまうのは貧乏デザイナーの性か。
もうひとつ11/11の続きを。ランチタイムに『Pinterre』を再訪。
写真左が『Pintetrre』の店構え。写真中央はパスタを取り分ける店主氏。写真右はイカ入りのニョッキ。盛りつけがかわいい。
で、カニ入りのシンプルな海鮮パスタがもう激ウマ。いい出汁でてるねえ。これまた忘れ難い味となった。
午後遅くにBagnara社へ。この日はプロジェクターでlove the lifeのホームページを見せつつ軽く作品解説。これにてボローニャでの業務は終了。20:00過ぎにジャコモさんとシルヴィアさんのクルマで再び市街へ。
ジャコモさんの馴染みのオステリアで軽く夕食。店主氏はスキンヘッドの大男。7人連れの一行のために重たい木のテーブルを持ち上げてひょいとセッティングして、皿やグラスをガツガツ置いてゆく。生ハムにプロシュートにサラミにモッツァレラ。ポルチーニとペコロスとカルチョーフォ(アーティチョーク)の甘酢煮もなかなか。帰り際にはカウンターの中のスキンヘッド氏から店内の段差に気をつけろと声がかかった。おっかないが気遣いはある。これもまたイタリア的サービスか。
それからジャコモさんがアレックスさんと2人でシェアするアパートにお邪魔。古い建物の3Fにあるこぢんまりとしたワンルーム。
天井は低いが、14畳くらいの面積はありそう。モノトーンの小奇麗なインテリア。
ホワイトで統一されたキッチン(写真左)。左端にスッキリとスクエアな給湯器が見える。
電灯スイッチと電話(写真右)。間に挟まっているのはこれまたスッキリとスクエアな分電盤。
さらに細い階段を上がったところに3畳間ほどの寝室があって、窓の外にはボローニャの赤い屋根が連なる。奇麗好きなアレックスさんのおかげ、という面はあるものの、なんとも天然でオシャレな住まい。日本の雑誌の俺部屋特集とかがアホらしくなるな。
気になる家賃は12万円くらいとのこと。
さらに11/11の続き。マーケットリサーチ途中で目についたお店。
美容室(写真左)とテキスタイルショップ(写真右)。
カフェ(写真左)と不動産屋さん(写真右)。
さらにボローニャ郊外エリアにクルマで移動。コマーシャルセンターと呼ばれる大きなショッピングモールに到着。外観はまるっきりジャスコなんだけど、テナントとして入っている『coop』に思わず立ち止まった。
木集成材の梁に支えられた高い屋根にボックス状の蛍光灯が整然と並ぶ広大な売場。各什器はフロアに斜めのボーダーラインを描くようにこれまた整然と並び、視認性の高いサインが完璧なゾーニングを示す。
残念ながら買い物をしている時間は無かったんだけど、「いつかスーパーマーケットをデザインすることが夢」の私たちとしては思わずグっと来てしまう眺めだった。
アトリウムのマクドナルド(写真左)。
通路のど真ん中に屹立する案内サイン(写真右)。
11/11の続き。
リサーチの途中で通り過ぎた路地沿いに小さな食料品店がたくさん軒を並べていた。
八百屋さん。なんと美しいディスプレイ。過剰包装の生鮮食品が並ぶ日本のスーパーマーケットからはかけ離れた世界。
魚屋さんと肉屋さん。
大きめの肉屋さんと乾物屋さん(チョコレートや乾燥ポルチーニ、お酒などが売られていた)。
界隈で一番の人だかりを誇っていたのがこの魚屋さん。モザイクタイルのグラフィックウォールが実にかわいらしい。
11/11。この日は朝からマーケットリサーチ。Bagnara製品が地元で実際にどのように売られているのかを見て回る。ボローニャの街を日中に歩くのは滞在4日目にしてこれが初めて。
朝のネットゥーノ広場。市庁舎(コムナーレ宮/中にモランディ美術館と市美術コレクションがある)やエンツォ王宮殿などがここに面する。
ネットゥーノ広場を通り抜けてマッジョーレ広場へ。北側に面するポデスタ館のポルティコ。ヴォールト天井の描く優美なラインと柱の装飾との対比が印象的。
ポデスタ館のポルティコ越しに見るサン・ペトロニオ聖堂(写真左)。14世紀末から工事中のままのファサード。
路地裏をあるくと時折斜塔が姿をのぞかせる(写真右)。
小さな広場とそこに面した繊細なデザインのポルティコ(写真左)。詳しい場所と建物の名前は不明。
ボローニャ大学は11世紀から続くヨーロッパ最古の大学(写真右)。入口からパティオの方を見た様子。
11/10。この日は朝から晩までみっちりミーティング。イタリアのビジネスマンは朝8時くらいから仕事を始め、納得のゆくまで時間を気にせず延々と働き続ける。日本人以上にハードワーカーじゃないか。Bagnaraだけが特別なのかもしれないが。
ランチではBagnara代表のジャンルカ・バニャーラ氏と奥様でデザイナーのダニエラ氏を含む8人で工業団地内のバルを訪れた。デザートはボローニャの伝統的お菓子。鮮やかなピンクとグリーンに一瞬ひるむが、意外にも甘さ控えめで素朴な味。まるで和菓子のようだった。が、またもや写真を撮るのを忘れる。
夕食はジャコモさんの古い友人が店主を務めるダウンタウンのピッツェリア『Pinterre』で。ナポリ風ピッツァと魚介料理のお店。
内陸の都市・ボローニャまで毎日わざわざ往復3時間以上をかけて新鮮な魚を仕入れているとのこと。派手ではあるが、見かけ倒しかと言うとさにあらず。これがどれも素材を生かしたシンプルな味付けで(塩味は少し強め)実に旨い。
ジャコモさんの注文で出て来たピッツアは直径60cm近いものが1つと、ひと回り小さなものが2つ。これまた強力な見た目に反する軽くさっぱりとした食感。食後はレモンリキュールのジェラートとエスプレッソ。ボローニャに着いて初めて全メニューをきれいに平らげることが出来た。長身でまつげクリクリ(『キカ』とかに登場しそうな感じ)の若い店主氏をはじめ、分厚い眼鏡の奥の瞳がキュートなフランチェスコおじさんら、愉快なスタッフたちのフランクかつきちんと行き届いたサービスがまた素晴らしい。
夕食の後、ジャコモさんがボローニャの中心街をしばらく案内してくれた。これまでほとんどホテルと工場の間をクルマで行き来するだけでボローニャがどんなところなのかさっぱり分からなかっただけに有り難い。
エミリア・ロマーニャ州最大の都市・ボローニャを特徴づけるのはポルティコ(柱廊)だ。中世以降、ヨーロッパの他の都市ではポルティコがほぼ全て取り払われたが、ボローニャでは私有地の一部をポルティコにすることが法律で義務づけられ、それがそのまま現代に至っている。中心街の歩道と言う歩道は全て列柱に支えられたヴォールト天井に覆われ、ポルティコは横断歩道や広場を除いてほとんど切れ目無く網目状にどこまでも果てしなく続いてゆく。その規模たるや日本の都市のアーケードや地下街には比肩するものなど思い当たらないくらい圧倒的に巨大なものだ。
ポルティコを逸れると、建物の内部にはさらにちいさなポルティコが連なり、各部屋とパティオ(中庭)を繋いでいることが分かる。極めてシンプルでかつ複雑な都市構造。
写真右はポルタ・ラヴェニャーナ広場近くにある斜塔。かつて貴族同士が覇権を競い合っていた頃の名残。高い方(アシネッリの塔)は97mで低い方(ガリセンダの塔)は48m。どちらもあり得ないくらいに傾いている。北イタリアはよほど地震が少ないのだろう。唐突に地面に突き刺さったような荒々しい存在感が強く印象に残る。
道路の上では建物と建物の間にワイヤーが渡され、そこに街灯がぶら下がっている。ポール状の街灯や電柱のような無粋なものは当然のごとく存在しない。道路上の街灯はどれも青白い光を放ち、ポルティコの天井は暖色の光によって照らし出される。見事にデザインされたライティング。
予備知識ゼロで訪れたボローニャはとてつもなく美しい大都市だった。
11/9。午前中にBagnaraの工場視察。
場所はボローニャ郊外の新興工業団地の一角。
プレキャストコンクリートによる構造がトップライトからの自然光に照らされる様が美しい。イタリアじゃあきっと何でも無い建物なんだろうだけど。
その後ジャコモさん、シルヴィアさんと工場近くの小さなリストランテへ。写真右は最初にいただいたパスタ盛り合わせ。この後出て来たポルチーニの盛り合わせには思わず仰天。旨過ぎる!このとろけるような深い味わいは間違いなく一生モノだろう。が、しかし迂闊にも写真を撮るのを忘れる。
日本語の話せるシルヴィアさんにイタリアでの食事作法について根掘り葉掘り伺っている間、神田さんとジャコモさんはずっと仕事の話。
2時間ほどのランチの後、ショールーム兼ミーティングルームでBagnaraの日本でのビジネスについて本格的な打ち合わせがはじまる。ほぼ中休み無しで気がつけば時計は20時を回っていた。
その後、ジャコモさんとシルヴィアさんのクルマでボローニャ中心街へ。ライブステージのあるジャズバーで夕食。高いヴォールト天井を持つ細長いアプローチ(写真左)を抜けて半地下のメインフロアへ。一転して低くて広い洞窟のような空間だが、ライティングが上手く実に居心地がいい。
昼間にたっぷり食べたので、さすがにみんな小食。早々とデザートに移行して、ピアノ、ベース、ドラムのトリオの演奏を見ながら談笑。シルヴィアさんに“ビミョー”の使い方を伝授。
11/8。成田でクライアントのアクトベータ社・神田さん、古屋さんと待ち合わせ。オーストリア航空で10時間あまり。ウィーン(ヴィエナ)に到着。
管制塔の造形が特徴的なヴィエナ空港。
空港近くの駐車場ビル(写真左)と『NH Vienna Airport』の空調吸排口(写真右)。
フンデルトヴァッサーなタクシー&バスオフィス。
その後、プロペラ機に乗って2時間でボローニャ空港に到着。赤い大理石をふんだんに用いたインテリアは重厚かつモダンでなかなかカッコ良かった。Bagnara社のジャコモ・バニャーラ氏に出迎えていただく。
『Royal Hotel Carlton』にチェックインした後、ジャコモ氏の案内でボローニャ中心街・マッジョーレ広場近くのイングリッシュパブへ。イタリアでパブ?と不思議に思うが、人気の無い中2階席へ上がるとそこには中世のヴォールト天井が。隠れ家のような落ち着いた空間で、生ハム、トルテリーニ、ポルチーニソースのステーキなどエミリア・ロマーニャ州ならではの料理を一気にいただく。どれも美味しかったけどボリュームがあり過ぎてぜんぜん食べきれず。無念。ボローニャに着いてから、あんまり疲れたので写真を撮る余裕が無かったのも無念。
そんなこんなで起床時間はかれこれ30時間越え。ホテルに帰って気を失うように眠る。
『Bagnara』の日本のショールーム開設に関する打ち合わせと工房・会社視察のため今日(11/8)から11/15日までボローニャへ行って来ます。携帯電話は多分通じます(番号は日本と同じ)が、受信側にもかなりの料金がかかってしまうため、すみませんがご連絡は緊急時のみ、手短にお願いします。メールは日程前半ならホテルで送受信できるかもしれません。ブログの更新をしてる余裕はおそらく無いと思います。
ところでボローニャってどんな街なんでしょうか。中田英寿選手はもう居ないんですよね。海外は10年以上前に行った切りで英語もイタリア語も全くダメなチビっこがふらふらしてても平気でしょうか。フランスの暴動が近隣諸国にも波及しているみたいですがイタリアは大丈夫なんでしょうか。
いろいろ不安だらけですが、皆様、諸々何卒よろしくお願い申し上げます。
11/1。遅れに遅れていた木工事がB1Fからようやくスタート。
写真手前はRC梁に設備配管用の貫通穴を空ける職人さん。カッコいいです。
大工さんは15:00の休憩中。
10/25。遅れていたサッシの取付け工事がようやくはじまっていた。
結局コストダウンのため高級なサッシは使用せず、普通のアルミサッシ(グレーメタリック)に。仕様については妥協した訳だが、各フロアの庭やデッキに面した開口部のサイズとデザインは死守することができた。実際に取付けられた様子を見ると図面から想像していた以上のダイナミックさ。これは相当に開放感のある建物に仕上がりそうだ。
外構の型枠工事は依然進行中。コンクリートを流し込むための足場が3F天井辺りの高さに仮構されていた。
上の写真左は型枠の内部を見上げたところ。建物本体の内部では設備配管工事が追い込み中。温水・冷水配管が床スラブ上に鮮やかなオレンジとブルーのラインを描く(上の写真右)。