11/10。この日は朝から晩までみっちりミーティング。イタリアのビジネスマンは朝8時くらいから仕事を始め、納得のゆくまで時間を気にせず延々と働き続ける。日本人以上にハードワーカーじゃないか。Bagnaraだけが特別なのかもしれないが。
ランチではBagnara代表のジャンルカ・バニャーラ氏と奥様でデザイナーのダニエラ氏を含む8人で工業団地内のバルを訪れた。デザートはボローニャの伝統的お菓子。鮮やかなピンクとグリーンに一瞬ひるむが、意外にも甘さ控えめで素朴な味。まるで和菓子のようだった。が、またもや写真を撮るのを忘れる。
夕食はジャコモさんの古い友人が店主を務めるダウンタウンのピッツェリア『Pinterre』で。ナポリ風ピッツァと魚介料理のお店。
内陸の都市・ボローニャまで毎日わざわざ往復3時間以上をかけて新鮮な魚を仕入れているとのこと。派手ではあるが、見かけ倒しかと言うとさにあらず。これがどれも素材を生かしたシンプルな味付けで(塩味は少し強め)実に旨い。
ジャコモさんの注文で出て来たピッツアは直径60cm近いものが1つと、ひと回り小さなものが2つ。これまた強力な見た目に反する軽くさっぱりとした食感。食後はレモンリキュールのジェラートとエスプレッソ。ボローニャに着いて初めて全メニューをきれいに平らげることが出来た。長身でまつげクリクリ(『キカ』とかに登場しそうな感じ)の若い店主氏をはじめ、分厚い眼鏡の奥の瞳がキュートなフランチェスコおじさんら、愉快なスタッフたちのフランクかつきちんと行き届いたサービスがまた素晴らしい。
夕食の後、ジャコモさんがボローニャの中心街をしばらく案内してくれた。これまでほとんどホテルと工場の間をクルマで行き来するだけでボローニャがどんなところなのかさっぱり分からなかっただけに有り難い。
エミリア・ロマーニャ州最大の都市・ボローニャを特徴づけるのはポルティコ(柱廊)だ。中世以降、ヨーロッパの他の都市ではポルティコがほぼ全て取り払われたが、ボローニャでは私有地の一部をポルティコにすることが法律で義務づけられ、それがそのまま現代に至っている。中心街の歩道と言う歩道は全て列柱に支えられたヴォールト天井に覆われ、ポルティコは横断歩道や広場を除いてほとんど切れ目無く網目状にどこまでも果てしなく続いてゆく。その規模たるや日本の都市のアーケードや地下街には比肩するものなど思い当たらないくらい圧倒的に巨大なものだ。
ポルティコを逸れると、建物の内部にはさらにちいさなポルティコが連なり、各部屋とパティオ(中庭)を繋いでいることが分かる。極めてシンプルでかつ複雑な都市構造。
写真右はポルタ・ラヴェニャーナ広場近くにある斜塔。かつて貴族同士が覇権を競い合っていた頃の名残。高い方(アシネッリの塔)は97mで低い方(ガリセンダの塔)は48m。どちらもあり得ないくらいに傾いている。北イタリアはよほど地震が少ないのだろう。唐突に地面に突き刺さったような荒々しい存在感が強く印象に残る。
道路の上では建物と建物の間にワイヤーが渡され、そこに街灯がぶら下がっている。ポール状の街灯や電柱のような無粋なものは当然のごとく存在しない。道路上の街灯はどれも青白い光を放ち、ポルティコの天井は暖色の光によって照らし出される。見事にデザインされたライティング。
予備知識ゼロで訪れたボローニャはとてつもなく美しい大都市だった。