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都市とデザインと : 渡辺力展/前川国男展

1/18。打合せの帰りに東京国立近代美術館・ギャラリー4で『渡辺力 - リビング・デザインの革新』を、東京ステーションギャラリーで『前川国男建築展』を見た。

『渡辺力 - リビング・デザインの革新』の内容は以前METROCSで見た『渡辺力展』の大幅拡充版という印象。さすがに見応えは十二分なんだけど、渡辺氏の60年に及ぶデザイナーとしての活動を概観するには少々物足りない内容ではある。ほとんどの家具には触る事すら出来なかったのは残念。
渡辺氏は家具デザイナー、インテリアデザイナーとして、清家清をはじめとする様々な建築家や建設会社とコラボレートしてきた。そこで実際に用いられた家具の現物を、スライドショーや大判インクジェットなどの豊富なビジュアルとともに見る事が出来たのは収穫だった。軽井沢や志賀高原のプリンスホテルには今もまだ渡辺氏の手がけたインテリアが現存しているのだろうか。だとしたら改装されてしまう前にぜひ見ておきたいものだ。また、コパルやセイコーの製品としてデザインされた時計の図面(実に詳細で、しかも美しい)も興味深い資料だった。

対して『前川国男建築展』のボリュームたるや凄まじいものだった。スペース自体はそれほど広くないんだけど、そこに詰め込まれた図面や模型などの資料のなんと膨大な事か。見終わった頃にはもうぐったり。半ば朦朧としつつギャラリーのエントランス脇にあるカフェへと入ろうとすると、すでに営業時間が終わっていてがっくり。
展覧会の内容は前川の活動と、その背景となる時代の移り変わりとの密接な関わりを痛感させるものだった。コルビュジェのアトリエでモダニズムに触れ、それを日本の風土に取り入れようと奮闘を始めたところで戦争が始まり、戦後は仮設建築のプランニングを手がけ、東京海上ビルディングでの美観論争を経て、珠玉の美術館・公共建築の連作へと向かう前川の足跡は実にドラマティックだ。未完に終わった最晩年の東京海上ビル増築案や東京都芸術文化センター案のスケッチ集(プランやエレベーションのスケッチに「おむすび」とか「たこ」とか「モヒカン」とか書き込んであるのがなんとも)をめくる頃には正直感動すら覚えていた。
展覧会で見た中で、私たちにとって最も印象深かったプロジェクトはデビュー作とされる『森永キャンデーストア銀座売店』(1935)と木造の『紀伊国屋書店』(1947)だった。方や既存ビルのリノベーション、方や戦後のバラック街に建てられた仮設店舗だが、その資料からは時代と都市に常に真正面から対峙してきた前川の姿が鮮やかに浮かび上がってくる。

渡辺力 - リビング・デザインの革新(東京国立近代美術館・ギャラリー4)
前川国男建築展(東京ステーションギャラリー)

2006年01月30日 00:03 | trackbacks (0) | comments (4)
comments

前川國男展、実物が展示されている建築の展覧会は初めてでした(窓の外の東京海上ビル)

posted by: yoko : 2006年01月31日 07:01

>yokoさん
打ち込みタイルのサンプルと実際の建物を見比べられたのが良かったです。ホント、実に心憎い演出でしたね!

posted by: 勝野+ヤギ : 2006年02月03日 02:28

こんばんはー
どちらの展覧会も見たくなりました。
建築に詳しくていいですねー
ワタシみたいなシロウトだと、キレイとか気持ちいいとか、
感性でしか語るコトが出来なくて・・・

posted by: azumi : 2006年02月03日 22:06

>azumiさん
いやー何を隠そう、私たちもほぼ感性だけで書いてます(笑)。どちらの展覧会もとても良い内容でした。家具や建築の好きな方ならきっと楽しめますよ。

posted by: 勝野+ヤギ : 2006年02月03日 22:44

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