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空間デザイン読本 : 商店建築デザイン選書

1960年代半ばに起こったインテリアデザインのビッグバンをほぼリアルタイムの情報としてまとめた書籍、それがこの『商店建築デザイン選書』。1970年から1976年の間に発行されたこの10冊シリーズは、掲載写真のほとんどがモノクロ写真ではあるものの、当時のインテリアデザイナーや建築家、アーティストらが商空間における表現をいかにして自らの作品と呼べるものへと高めていったかを知ることのできる極めて貴重な資料集だ。

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上の写真はカバーを取り外した状態で撮影している。何分古いものなので、布張りの表紙はかなりカビにやられているものもあるが、幸いどれも中身は全く問題ない状態でコンプリートすることができた。クールに決まったタイポが印象的な装丁は、なんと河野鷹思氏が手がけたもの。各巻の表題は下記の通り。主な掲載作品も一応挙げておいたけど、他にも優れた作品が目白押しで一冊見終えるごとにどっと疲れがこみ上げるほど。

1:話題の喫茶店(ティールーム・ゴーゴー・ケーキ・スナック)/1970初版/ジュジュ(葉祥栄)、マロニエ(境沢孝)、ダグ(岩渕活輝)など
2:魅力ある外装の造形(ファサード・ウィンドー・看板)/1970初版/*国内外の商業建築ファサード、サインなどを数多く紹介
3:秀作レストラン(レストラン・ドライブイン・グリル・ステーキハウス)/1970初版/サーカス(倉俣史朗)、東京会館クリスタルラウンジ(北原進)、バルコンソワ(境沢孝)など
4:異色クラブ・バー(メンバーズ・パブ・スタンドバー・カクテルラウンジ)/1972初版/2番館(竹山実)、ヤングバー(北原進)、ジャッド(倉俣史朗)など
5:個性ある和風料理店(小料理・割烹・料亭・酒房・和食)/1972初版/柿傅(谷口吉郎)、畔居(境沢孝)、早鞆(河野鷹思)など
6:感覚的な服飾店(メンズウェア・レディースウェア・靴 バッグ・和装)/1972初版/マーケットワン(倉俣史朗)、シューパブオーツカ(竹山実)、コーナリア(葉祥栄)など
7:ドライブイン・レストラン/1974初版/焼肉アリカンテ(内田繁,三橋いく代)、テラッツァビアンカ(坂倉健,長大作)など
8:スナック&喫茶/1974初版/OSコーヒーショップ(安藤忠雄)、ともまつ(境沢孝)、ラジオ(高取邦和杉本貴志)など
9:貴金属宝石店・ショールーム/1975初版/四季ファブリック(倉俣史朗)、旭印刷ロビー(葉祥栄)、フェローウォーカー(吉尾浩次)など
10:ファッションショップ・美容院/1976初版/ブティックワイズ(杉本貴志高取邦和)、青山カサベラ(内田繁)、ホワイトハウス(岡山伸也)など

第1巻の末尾に収録された境沢孝氏、宮脇檀氏、倉俣史朗氏、竹山実氏による対談は、各人のクリエイターとしての立場の違いが良く現れており興味深い。また、同じ巻の前文として寄せられたマーティン・コーエン氏による日本の喫茶店に関するエッセイは美しい名文だ。第2巻末尾の境沢孝氏と内田繁氏、商店建築社編集者による3者対談は、商業建築のファサードについての考察として、いまだに十分通用するものとなっている。境沢氏の「モニュメンタルな建築の考え方なんて逆に邪道だと思う。外装なんか、お金があって毎日かえられるんならかえればいい」という発言にはシビれた。

2006年03月26日 09:00 | trackbacks (0) | comments (4)
comments

ジャケ良しですなぁ。

posted by: アラタメ : 2006年03月27日 12:36

志の高さが表れてますね。

posted by: 勝野+ヤギ : 2006年03月27日 15:59

喫茶篇/クラブ篇/服飾篇 僕ももってます
60-70sのインテリア誌(日本の)が好きなのです

例のお店なんとかオープンしました
結局ほぼDIYでやりました(大変でした...)
プロに見られるのは恥ずかしいのですが内装写真もUPしてます
次こそご依頼できるようにがんばります!

posted by: hiroshi : 2006年03月31日 12:56

>hiroshiさん
なんとシブいものをお持ちで!当時のインテリアデザインは今見ても全く色あせないものが多いです。
DIYは大変ですけど楽しいですよね。サイトの方、拝見させていただきます。お疲れさまでした!

posted by: 勝野+ヤギ : 2006年04月02日 12:14

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