4/23。よみうりホールへ桂三枝独演会を見に行った。構成と演目(全て三枝師匠の創作落語)は下記の通り。
桂三若『待合せ』
桂三枝『妻の旅行』
桂三歩『国技・インターナショナル大相撲』
桂三枝『宿題』
中入
桂三枝『涙をこらえてカラオケを』
三枝師匠の近作の凄さは「いかにも面白そうなこと」を全く喋らないところにあるように思う。登場人物の会話はほとんど関西人の日常のなかに普通にありそうなものばかりだ。ところが、三枝師匠の手にかかると、その一見なんでもなさそうなやり取りの中から次々と爆発的な可笑しさが紡ぎ出される。
いささか短絡的に過ぎるかもしれないが、おそらくこの不思議な魅力に満ちた独特の話芸は、師匠が長年素人相手のテレビやラジオ番組で活躍する中で培った鋭い人間観察眼があってこそ成り立つものではないかと思う。この日の演目の中でも特に『妻の旅行』と『宿題』は、未来の古典と呼ぶにふさわしい風格を感じさせるものだった。
なんでもない日常の中からさりげなく可笑しさを取り出してみせる、という創作行為には、落語のみならずデザインの本質にも通ずる部分があるように思えてならない。さて、果たして私たちは未来の古典とされるような作品を生み出し得ているだろうか。
カフェテリアのマスターと心配性の男性客との会話で展開する『待合せ』は三若さんの芸風にマッチした軽妙な演目。三歩さんの『国技・インターナショナル大相撲』はほとんど駄洒落ばかりで残念ながら今ひとつ。ところでお囃子の代わりに関西ローカルTV番組のジングルみたいなBGMが流れるのは三枝師匠の会らしい演出かもしれないが、慣れるのはちょっと難しいなあ(笑)。