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都市とデザインと : 京都・エクボ閉店

7/6。京都にあるレストラン『エクボ』から7/30の閉店を知らせるメールが届いた。『シナモ』の姉妹店として2002年にオープンした店。内外装のデザインを手がけたのはGLOMOROUS・森田恭通氏。以下の写真は2003年の末に撮影したもの。

『エクボ』があるのは地下鉄東山駅そばの古川町商店街。長さにして300メートル弱、間口は4メートルくらいあったりなかったりのこの商店街には、小さくて庶民的な商店がずらりと向き合って並ぶ。そんないい感じに気が置けない通りを真ん中あたりまで歩くと、ベージュのタイルに覆われたハコが静かに現れる。これが『エクボ』の店構え。

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暖簾をくぐり店内へ。外装と同じパターン貼りのタイルとオフホワイトの塗装によるインテリアはいたってシンプルな印象。

デザインの肝は足下にある。モルタルの床は手前が高く、奥全体が階段状に低い。高い方にはキッチンやトイレといった水廻り機能とカウンター席が設えられていて、店内中央の通路を挟んで低い方はテーブル席。テーブルに添えられたスツールは、床の段差を半ばベンチシートのように利用して、思い切り背を切り詰めたものをちょこんと置くようなかたちになっている。しかも形状といい質感といい、まるで場末のスナックを思わせるようなスタイルなのが面白い。

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もう一度壁の方に目をやると、タイルの下地がクリアミラーであることに気付く。この組み合わせが店内に独特な奥行き感を与えている。さほど高価ではない素材を組み合わせて、ユニークな視覚効果を生み出す手法は森田デザインの真骨頂だ。
モルタル床の高低差もまたしかり。設備配置と動線設定と空間デザインを左官工事ひとつで一度に成立させてしまうスマートな手法はコスト面でも有利にはたらく。ネオポップにも通ずるディスプレイ的手法と、現場で培われたマネージメント感覚によって、インテリアデザインの世界に「装飾」を鮮やかに復活させた当時の森田氏の功績は極めて大きかった。様々な意味で、『エクボ』は小さいながらも森田デザインの美点がぎゅっと詰まったプロ好みのする重要な作品だっただけに、閉店してしまうのは本当に残念でならない。料理やドリンク、サービスの質も悪くなかったからなおさらだ。

関西在住のクリエーターの方、または関西方面へ足を運ぶ機会のある方には、今のうちにぜひこの空間を体験されることをお薦めしたい。

エクボ/京都市東山区三条通白川橋西入ル古川町546-1
075-525-7039/11:45-14:00(LO),18:00-22:30(LO)/水休

GLOMOROUS(森田恭通)

2006年07月08日 04:00 | trackbacks (0) | comments (0)
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