7/30。東京オペラシティアートギャラリーへ『光の魔術師:インゴ・マウラー展』を見に行った。ドイツのライティングクリエーター、インゴ・マウラー氏とインゴ・マウラー社の1960年代から現在までの業績を網羅する内容の世界巡回展。
最初期の作品である『バルブ』(1966)にはじまりOLEDを挟み込んだガラステーブルのインスタレーションへと至る展示のボリュームは、一人のデザイナーとそのカンパニーの活動を紹介するものとして最近では破格のものであると言っていいだろう。大空間を全く持て余すことなく生かし切った構成も素晴らしい。
それでも個人的にはなんとなく物足りない感覚を覚えたのは、1997年に東京デザインセンターで開催された『Ingo Maurer in Japan』の印象が強過ぎるためかもしれない。街路に直接面した屋外アトリウムに吊るされた巨大なハート型の照明オブジェを目にした時に感じたインパクトは、私たちの記憶の中にいまだ深く刻み込まれている。会場規模は今回に比較するとかなり小さく、動線は変形していたが、ひとつひとつの作品が本当に丁寧に展示されていたように思う。さらにはっきりしているのは『Ingo Maurer in Japan』の会場は今回の会場よりもずっと暗かったこと。この違いはライティングデザインを紹介する上であまりに大きい。今回の展覧会が結果的に「光」を体験することよりもむしろ「もの」を見ることにウェイトを置いた内容となってしまったことはちょっと残念だ。
とは言え、インゴ・マウラー氏の詩的でテクノロジカルなコンセプトと実際の作品を見る上で、ここまで密度が高く内容的にもクオリティの高いイベントは、日本では極めて貴重であることは間違いない。プロダクトデザイナーや建築家はもちろん、他の多くのクリエーターにとっても大いに見るべき価値のある展覧会だ。
光の魔術師:インゴ・マウラー展
JDNリポート/光の魔術師 インゴ・マウラー展