love the lifeの作品「Itsutsuya」のページを更新しました(Aug. 31, 2012)。Worksからご覧下さい。フォトグラファーは佐藤振一さん。
小田原市内では近年新しい駅ビルや郊外型の大型商業施設の完成に伴い旧市街地の空洞化が進行している。「井筒屋」があるのはその旧市街地のちょうど真ん中、小田原駅東口から海に向かって延びるメインストリートに面したビルの地上階だ。
私たちが念頭に置いたのは、通りと一体となって機能し、地域を訪れた人々の回遊を活性化するような場所をデザインすることだった。フロアに高さのある中央什器を置かないこと、エリアごとに異なる形態の什器を作り付けることをルールとしてプランニングは進められた。
什器とその上部の天井造作には高低差をつけ、店内を移動するにつれて変化のあるパースペクティブが感じられるようにした。各エリアの造作はそれぞれに特徴的な「地」となり、商品を「図」として浮かび上がらせる。全体の様子がどこからも見渡せるレイアウトは、時節ごとの自由なディスプレイや商品構成の変化に対応する。シンプルなボリュームの構成はいかにも明朗でニュートラルだが、こうしたデザイン手法には書院の基本的な概念に通じるところがある。
エントランス正面のテーブル什器の上にある天井造作には、城下町の記号でありクライアントの家紋でもある梅の模様をパターン抜きし、内側に紅梅を思わせるピンクをあしらった。スチールパイプのパーティションは、動線をさりげなく制御すると同時に、天気雨のようなきらめきを感じさせる。ちいさな店は「街に開かれた書院」として機能する。