10/13。神保町で打合せの後、青山へ移動。Originで髪を切ってからギャラリー5610で開催中の『2人展「河野鷹思+Max Huber」』を見た。
河野鷹思(1906-1999)についてはこちらのエントリーを参照のこと。『商店建築デザイン選書』の装丁を手がけており、自身も和食店のアートディレクションを行っているため、グラフィックデザイナーのみならず、インテリアデザイナーにとっても馴染みのある先人だ。
マックス・フーバー(1919-1992)はスイスのグラフィックデザイナー。リナシャンテ、オリベッティ、ボルサリーノなどイタリア企業とのコラボレーションにおいて多くの業績を残している。バウハウスからの影響の見られるフォントや画面構成、そしてクリアでカラフルな色使いによるエレガントなデザインは、現代においても全く古さを感じさせない。今年スイスに美術館『m.a.x.Museo』がオープン。また没後初の作品集も刊行された。
展示されているのはポスターと装丁の作品が各20点ほど。おそらくなんらかの都合があってのことだとは思うが、マックス・フーバーの作品は比較的渋めなものばかりで(それでもジャコメッティの展覧会ポスターの構成は素晴らしかった)、結果的に河野鷹思の凄みが際立っていたように思う。上記の作品集の内容が素晴らしかっただけに少々残念だが、同じ印刷物と言えども書籍と実物とでは丸きり体験の質が違うこともまた事実。20世紀半ばのグラフィックデザインが持つ力強さを文字通り目と鼻の先で体感できる貴重な機会であることは間違いない。会期は水曜日までなのでお早めに。
-----
さらに日暮里へ移動して、SCAI THE BATHHOUSEで開催されていたジェニー・ホルツァー(1950-)氏の展覧会へ。『Xenon』プロジェクトを記録した写真の超大判プリントが数点と、84個の小型LEDディスプレイによるインスタレーション。
『Xenon』はキセノンランプによるプロジェクターを用いて世界各地のパブリックスペースにテキストメッセージを投影するインスタレーション。英語力がからきし無いため、どんなメッセージが投影されているのかは私たちには分からない。しかし歴史的建造物に対して、その形状とはまるで無関係にべったりと貼り付いたサンセリフの巨大なテキストは、それ自体が十二分にショッキングなビジュアル。畳一帖分くらいの大きさはありそうなマットな印画紙にプリントされたモノクロの緻密な画面が、そのインパクトをさらに強烈なものにしていた。
展示室奥の壁一面を使ったインスタレーションは、葉書よりひとまわり大きいくらいのLEDユニットの配置で構成されていた。各ユニットごとにタイミングをずらしながら横流れに表示される同一のテキストメッセージは、その輝度の高さと単純さにおいてある種暴力的であると同時に極めてスタイリッシュでもある。何が述べられているのかが分からないだけに、私たちにとってこのカッコ良さはかえって危険だ。ユニットごとにバラ売りしていたので、思わず衝動買いしそうになったが、ひとまずぐっとこらえておく。
近頃いわゆるファインアートに飽きが来てしまっている私たちだが、この展覧会の完璧なプレゼンテーションと、作品のプロダクトとしてのクオリティの高さにはすっかりやられてしまった。グラフィックとか建築とか、あるいはアートとかデザインとか、そう言った既存のフォーマットを無効にしながら自らを環境化してゆくような表現に強く惹かれる。
JENNY HOLZER : FOR THE CITY (CREATIVETIME)
Neue Nationalgalerie: Installation von Jenny Holzer (YouTube)
ベルリン新国立ギャラリー(設計:ミース・ファン・デル・ローエ)での展示