12/28。明石散策の途中、『きむらや』に初めて立ち寄った。1924年創業(屋台営業はそれ以前からとのこと)の玉子焼(明石焼)専門店。
場所は魚の棚商店街からほど近いアーケード沿い。交差点に向かって斜めにガラス張りの調理場を構えた間口の狭い店構えは、いかにも地元庶民の店、と言った風情の静かな佇まい。赤い暖簾をくぐってアルミサッシの引戸を開けると店内は以外に広く、カウンターとテーブルを合わせて30ほどの席はほとんど埋まっていた。外からは想像のつかない賑わいぶりに驚く。
玉子焼は一人前で20個。朱塗りの下駄に乗って豪快に登場。思わず歓声を上げつつカメラを構えると、店主と思しいおばちゃんがにこやかに「撮りましょうか?」と声をかけて下さった。
出汁に着けたり、テーブルに置いてあるソースを塗ったりしつつ、熱々をいただく。ふわふわした食感と玉子の香ばしさが印象的。素朴で美味い。
味といい、おばちゃんといい、なんともしみじみとしたいい店だ。今度来た時はぜひ関東煮もいただいてみよう。
きむらや/兵庫県明石市鍛治屋町5-23/078-911-8320
9:00-17:30(売切御免)/月休,火不定休
12/28。勝野の実家から明石方面へドライブ。途中で安藤忠雄氏設計の住宅連作『4×4mの家』を見た。
面対称に近い形状で隣接する2棟の住宅は、明石海峡と山陽道に挟まった奥行きの小さな敷地に建つ。片側は交通の激しい幹線道路、反対側からは海風がダイレクトに吹き付ける過酷な環境にあって、肩を寄せ合うような姿が印象的だ。
山陽道から見て右側がRC造4階建の『4×4mの家I』(2003)。左側が木造3階建の『4×4mの家II』(2004)。他の写真はこちらとこちら。
“住む”という行為を徹底的にポジティブに楽しもうとする施主の意思無くしては、こんな住宅はとうてい成り立たないだろう。それに応える安藤氏のデザインもまた力強く、潔い。
12/26。『finerefine』大阪高島屋店から堺筋を北上して日本橋から地下街へ。四ツ橋線のなんば駅に向かう途中で久しぶりに鯨と遭遇。この石の彫刻は、1994年にこの地下街が『虹の街』から『なんばウォーク』に改装された際にお目見え。以来静かに物議を醸し続けている。
その胴体と尾はどうも自然には繋がりそうにない。「バキッ」という音が聞こえて来そう。
実のところ、2頭のセミクジラが遊ぶ様子を再現したんだそうだ。なるほどね。
12/26。大阪高島屋東別館で『finerefine』を視察。2005年5月オープン。インテリアデザインは銀座店と同じく設計事務所イマの小林恭氏、小林マナ氏。両氏は同年代の同業者として、私たちにとって今最もお会いしてみたいクリエーターだ。
この建物はもともと松坂屋大阪店として1934年に完成。難波の中心からは少し離れた場所に静かに佇むアールデコ様式の建物。堺筋に面したアーケードは国内では珍しいダイナミックな空間。設計は鈴木建築事務所(鈴木禎次)。エントランスまわりのディテールとエレベーターホールの写真はこちら。
『finerefine』はこの建物の内部をほぼスケルトン状態で活用しながら、最少限の造作を付け加えることで見事に共存し、引き立て合っている。天井の高さを生かした大胆な売場構成はスケール感において銀座店を上回るもの。今時の物販店としては、破格に気持ちのよい空間だ。
店舗としてのディテールの練り上げられ方は銀座店同様、実に巧みで思わず唸らされる。各エリアを繋ぐ上部の丸い出入口が建築と呼応するようで楽しい。各所にシンプルかつ象徴的に展示された東恩納裕一氏の円形蛍光灯を用いた作品が空間の味わいを一層深めている。その他のインテリアディテールはこちらとこちら。
アーケードの向こうは雑然とした日本橋電気街。この夢のような対比はまさに大阪そのものだ。
finerefine
都市の華 アールデコの百貨店(Galerie de Comte)
本日1/17より23日まで伊勢丹松戸店本館地階で開催されている『春のスウィーツ&ベーカリーフェスティバル』に『夢組』が参加しています。
『夢組』はlove the lifeが新松戸店のデザインを手がけさせていただいたプリン専門店。今回は特にお手伝いはしていませんが、全国的な有名店(千疋屋、木村屋、メゾンカイザー、ヒルトン東京ベイなどなど)に混じって登場する地元店の活躍ぶりに期待したいです。
目玉はイベント限定品の『キャラメル・ロイヤル』。販売は一日80個のみ。なおかつ一人2個までしか買えないそうですが、あっという間に売切れてしまいそうな予感が。。。
12/26。堂島ホテルを少し視察してから四ツ橋筋を南下。途中『朝日ビル』を見たところ。1931年完成のオフィスビル。地上10階地下2階建・鉄骨鉄筋コンクリート造。設計は竹中工務店・石川純一郎。
今となってはさほど大きな建物ではないが、その意匠には他を圧倒するようなダイナミックさがある。悪役っぽいカッコ良さ。
肥後橋駅へ連絡する地下フロアには大阪生まれファーストフードの代表格である『インディアンカレー』と『ぼてぢゅう総本家』が支店を置く。
朝日ビル竣成(大阪朝日新聞 1931.10.26)
朝日ビルディング
12/26。『山守屋』から堂島方面へ向かう途中で見たタクシー乗場。
周囲から取り残されたように佇む極小のモダニズム建築。
カラーリングもいい。
profileのページを地味にアップデートしました。今頃になってスタイルシートを導入したりして結構疲れました。。。英文の記述とか、おかしなところがあったら教えていただけると嬉しいです。
12/25。扇町『にし』で食事の後、西天満へと移動。梅田新道東側に面した『ポルトガリア』で2次会。ワインとポルトガル料理の店。予約時間を1時間以上過ぎての到着にも関わらず、オーナーのミラさんはしっかりテーブルを空けて待って下さっていた。ありがたや。
はじめていただいた2種類のポルトガル産ワインは、どっしりした深い味わいとキレの良さ、そして後口に残る華やかな香りが印象的だった。グラスを傾ける回数が自然と多くなる。
これまた初挑戦のポルトガル料理は、ワインを楽しむのにぴったりなものを選んでいただいた。チーズ、干し鱈のコロッケ、ピクルスと豚肉の炒め物、豚の耳と空豆のサラダなど。どれもが素材の味わいを見事に引き出したシンプルな料理。見た目に飾り気は無いが、つまみにはまさしく最高。もう、ワインが進むことこの上ない。
東さんによる内外装のデザインもまたシンプルかつ味わい深い。質感の高い木工造作と、簡潔ながら効果的な光の使い方に技あり。こうした何気なさの中にも品格のある空間を設計できるデザイナーの存在は、今時とても貴重なものだ。大変勉強になりました。
そして帰り際には勘定の安さにびっくり。2:00までという営業時間もまた嬉しい。ああ、こんな店が近所にあれば。マドレデウスに引き続き、ポルトガルに魅入られた年末となった。オブリガード。またきっとお伺いします。
ポルトガリア/大阪府大阪市北区西天満4-12-11/06-6362-6668
11:00-2:00/日休
12/25。前日から徹夜で仕事。飛行機の時間ギリギリになんとか羽田へたどり着き、正午前に伊丹へ。さらにバスと地下鉄を乗り継いで須賀さん宅に到着。あまりにくたびれていたので、いきなりではあったが少し仮眠させていただく。
で、夕刻に復活。凌子さんと勝野は着物に着替えて、ヤギと3人で地下鉄で扇町へ。改札で三好姉さんと落ち合い、慣れない道に迷いながらなんとか『にし』を発見。須賀さん、上田さん、寳納さん夫妻と合流して忘年会がスタート。
和牛焼肉店『にし』のオープンは1997年。焼肉店とは言うがメニュー構成はコース中心で、実際にはレストランであると考えた方がしっくり来る。焼き物はテーブルに埋込まれた炭火の無煙ロースターで店のスタッフが調理してくれる。
インテリアデザインは我らが心の師匠・野井成正さん。建築躯体とともに白く塗りつぶされた木造作による間仕切りと、オリジナルの黒いペンダントライトが特徴的。野井作品の中でも最も簡素なデザインではあるが、深い陰影をたたえたその空間は凛として気品があり、しかもどことなくミステリアスだ。完成から10年を経て、当初白一色だった壁面には所々、黒田征太郎氏のペインティングが控えめに散りばめられ、彩りを加えている。
料理も素晴らしい。サイコロタン、造りやにぎり、タンの唐揚げなどはどれも主にシンプルな白い器(黒田泰蔵氏の作品を含む)に置かれ、繊細な仕事によって最大限に引き出された霜降り和牛の旨味が咥内にひろがる。ずっしりと心地良くしびれるようなその感覚は、回転の抑えられた直球を受け止めた瞬間を彷彿させる。
こちらは締めの稲庭うどんとデザートのアイス最中。これまた美味い。
カジュアルながら行き届いたサービスもまた申し分無い。もしもこの店が東京にあったら、散財はまず避けられないだろう。恐るべき名店。
にし/大阪府大阪市北区同心2-13-6/06-6357-7600
17:30-23:00/日休
nishi (noi-shigemasa.com)
ドイツ・daab社から2006年9月に刊行された『YOUNG ASIAN ARCHITECTS』という本に『なんでやねん』、『kranz錦糸町駅前店』、『simpatica』、『dcb』、が掲載されています。
本の内容はタイトルの通りアジア各国の若手アーキテクト(日本語の「建築家」って言葉はどうも不便ですね)の作品を写真で紹介するもの。以前紹介した『JAPANESE DESIGN』や『BEAUTY DESIGN』と同じシリーズです。日本で活動するアーキテクトとしてはグエナエル・ニコラさん、手塚貴晴+手塚由比さん、芦澤竜一さん、トネリコさん他の皆さんが登場しています。
この年で「YOUNG」と言われるのも少々照れくさい感じですが、よろしければお時間のある折にご覧になっていただければ幸いです。
YOUNG ASIAN ARCHITECTS
YOUNG ASIAN ARCHITECTS (amazon.co.jp)
YOUNG ASIAN ARCHITECTS (amazon.com)