3/16。午前中に青山で打合せ。早めのランチを摂ってからスパイラル・マーケットの脇で開かれている帯留のちいさな展示会へ。移動中に気になる喫茶店を見つけたので、引き返して立ち寄ってみることにした。
エントランスは青山通りに面したビル1Fの、階段室のようなスペースの奥にある。看板はごくごく控えめで、注視しないと何の店がどこにあるのか分からないほどだが、赤いラインで描かれた魚のマークだけは記憶の片隅に残っていた。そう言えばずいぶん前からあったような。
壁に連なった魚のマークをたどると、サッシュレスガラスの向こうに柔らかい自然光の差し込む白い空間が現れた。表からは全く想像のつかない端正な店構え。
店名の『POISSON D'AVRIL』(ポアソン・ダブリル)は四月の魚(フランス語でエイプリル・フール)という意味だそうだ。オープンは2004年3月。
通路はキッチンカウンターを回り込むかたちでL字型にとられており、その中ほどに一枚ガラスの大きな窓がある。向こう側は隣のビルとの狭間。白くペイントしたコンクリートブロックで囲われた中にウッドデッキが敷かれ、ちいさな庭となっている。ウッドデッキの高さは客席カウンターの天面に揃えられ、ガラス越しに感じられる空間のひろがりが心地良い。黒いカウンタートップに庭が写り込む様子がまた実にいい景色。この日たまたま展示されていた藤波洋平氏の平面作品も、その柔らかな風合いが店内の印象にマッチし、上手く引き立て合う存在となっていた。
最奥は白い壁をくり抜いたような羽目板張りの凹みとなっており、集成材のベンチが設えられている。その手前にはテーブルと黒いプラスティックチェア(KartellのMaui)。モノトーンと素材の使い分けがなんとも絶妙。造作のディテールの美しさ、施工精度の高さにも思わず唸らされる。デザインを手がけたのは藤岡新(プラッツデザイン)氏とのこと。
メニューはほぼ珈琲、紅茶類とケーキのみ。丁寧にいれられた珈琲は十分に満足できる味わい(堀口珈琲で指導を受けられた模様)。軽く上品でなおかつしっかりとインパクトのある自家製ケーキは文句無しに素晴らしい。食器類のセレクトについてはそのセンスこそコンサバティブではあるが、良いものを妥協無く選ばれていることは明確に伝わる。
物静かな女性オーナーによる真っ当で清楚な喫茶店。ぜひ末永く繁盛してほしいが、できればあまり人に教えたくないような気もする。青山にあって今時貴重な、宝物のような店だ。
POISSON D'AVRIL/東京都港区南青山5-1-25-1F/03-3499-0867
10:00-19:00(土12:00-19:00)/日祝休
おおっ!
POISSON D'AVRIL、みつけましたか〜!
藤岡新さんは、その並びにある、「希須林」の内装のデザインもされています。
「希須林」は、中華料理屋らしくないインテリアの中華料理屋です。
まさに端正、モダニズムっていうか、いかにも建築家くさい秩序だての造形です。
で、「希須林」のメニューやロゴのデザインは、坂雅子さん(坂茂夫人)がてがけています。
っていうか、そのあたり、お友だち関係ですね。
そしてまたまた藤岡新さんは、なんと、僕に給料くれてる会社の上司筋の僕もヒジョーにお世話になってるひとの前の奥さんの弟さんだったりします。
>えぐちさん
いやーもっと早く気付くべきでした『POISSON D'AVRIL』。あまりにキレ味の鋭いインテリアで、一瞬「原兆英・成光氏か?」と思ったのですが、オーナーさんに建築家の方とお聞きしてなるほど!と納得しました。『希須林』にも実はまだ行ったことがないんです。ぜひ拝見しなくては。
それにしても建築の世界は広いようで狭いと言うか、なんと言うか。とりあえず滅多なことは公言できませんね(笑)。