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身体と空間の芸術 : 映画4本・カザフ-米-西-日

最近見た映画4本についての簡単な覚え書き。

ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習
スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー
ボルベール <帰郷>
殯の森

以下、若干ネタバレ気味かもしれないので読みたい方だけどうぞ。

ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習
Borat : Cultural Learnings of America for Make Benefit Glorious Nation of Kazakhstan
イギリスのユダヤ系コメディアン、サシャ・バロン・コーエン氏がカザフスタン人ジャーナリスト・ボラットに扮してのアメリカ横断取材旅行。登場人物のほとんどは役者ではなく、またボラットの正体は明かされていない様子で、映画は半ばドキュメンタリータッチで進行する。ホームパーティーを信じ難いマナー違反で滅茶滅茶にし、ロデオ場でアメリカ国家の替歌を歌い、住宅ローンブローカーの集会に全裸で突入するシーンは見ている分には傑作。当事者はマジ切れ。一見品性のかけらも無いボラットの行動を目の当たりにして、私たちは涙を流すほど大笑いしながらも、脳裏に薄ら寒いものを感じずにはいられない。それだけに終わり近くに差し掛かっての心温まる展開は思いも寄らず、不覚にもジーンと来た。この映画を見ることは、制作者と観客がともにリスクを負って、アメリカの保守層に対する風刺とシャレにならない冗談とのギリギリの境界線を確認する作業なのかもしれない。

スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー
Sketches of Frank Gehry
建築家・フランク・O・ゲーリー氏の仕事の現場と、その半生を紹介するドキュメンタリー。プロジェクトが具体化してゆく様子を追った生々しいシーンにも興味をそそられたが、個人的にはゲーリー氏が現在の作風を確立し、コンピューターテクノロジーの力を得ることで無類の造形力が開放されるまでの過程に感じ入るものがあった。特に1970年代の大口クライアントであったサンタモニカ・プレイス社長が、彼に対して「もうあんな建物は造るな」と命じたと言う男気溢れるエピソードは印象深い。作品を「愛している」と語るゲーリー氏の実直さにもシビれた。

ボルベール <帰郷>
Volver
何はさておき、ペネロペ・クルス嬢が凄い。これほどの役者だとはつゆ知らず。お見それしました。彼女の仕事を見るためだけにでも劇場に足を運ぶ価値は十二分にあるが、後半の要となるカルメン・マウラ氏の存在感もまた素晴らしい。カラフルで象徴的な映像の織りなすストーリーは小気味良く、時に目まぐるしい展開を見せ、観客はその加速度に導かれたまま、いきなり断ち切るようなエンディングで現実へと放り出される。紛うこと無きペドロ・アルモドヴァル監督作。力強く、爽快な映画だ。

殯の森(もがりのもり)
The Mourning Forest
以前から気になっていた河瀬直美監督の作品をようやく見ることができた。奈良山間部の茶畑と深い森の描写が圧倒的に美しい。その中にあって、傷つき弱々しい人間たちが、弔いと浄化を経て生き延びるストーリーは実にシンプルで骨太。尾野真千子、うだしげき両氏の抑制された演技が心を揺さぶる。編集や小道具の仕掛けに余分な要素はあるものの、素人目にもこの監督の才気は確かで、かつ計り知れない伸びしろがあることが伺えた。その意味で、この映画にパルム・ドールを与えず次点としたカンヌの判断は慧眼と言える。

2007年07月22日 03:00 | trackbacks (0) | comments (0)
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