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life of "love the life"

名言コレクション : 内田繁の言葉

明治の近代化は、日本の文化のなかに美術と芸術という概念を移植しました。本来、日本の文化には、美術や芸術というカテゴリーはありません。今日でいう「日本の美術品」はすべて「道具」でした。中世絵巻や水墨画も、雪舟の大和絵屏風も永徳の障屏風も、狩野派の風俗画も、宗達・光琳の工芸も、もちろん日用のためのものも、すべて道具でした。道具は、生活や儀礼や芸能のために使われます。刀や槍のような武具も道具でした。日本の文化にとって、道具とは使えるものに他なりません。

貴族の暮らし、武家の暮らし、裕福な人びとの暮らし、庶民の暮らしと、さまざまな暮らしがありますが、道具とは一様に暮らしのためのものです。こうした道具の中にこそ「美」は存在したのです。それらは、どのレベルの暮らしにおいても、それぞれの日常生活をつくり出すものです。「美」は日常の中にあるのです。それは普通の暮らしの中にあります。「普通のデザイン」にとってもっとも大切なのは、美しいかどうかということです。美とは決して高価なものを指すわけではありません。どれほど質素で素朴なものでも、美しいものと、美しくないものがあります。それはおそらく普通であるか、否かの違いにあるのだと思います。(内田繁)

普通のデザイン(著:内田繁/編集:米澤敬/工作舎)より。

2007年08月22日 01:00 | trackbacks (0) | comments (0)
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