9/17。『ポーラ美術館』を離れ東海道を東へ。再び渋滞に遭いつつ1時間余りをかけて箱根町湯本に到着。最終目的地の『まんじゅう屋 菜の花』を訪れた。街道沿いの小さなビルは3Fまでが店舗として使用され、1Fが『まんじゅう屋 菜の花』(2001)、2Fが『茶房 菜の花』(2001)、3Fが『そば切り 十六夜』(2006)。インテリアデザインは1Fが中村好文氏(レミングハウス)、2Fが小泉誠氏(コイズミスタジオ)の師弟共演。3Fのインテリアは小泉氏と彫刻家の神林學氏による共作(ロゴは望月通陽氏、焼物の器は内田鋼一氏の作)となっている。
箱根の宵は極めて短く、この店も1Fと2Fの営業時間は17:30まで。3Fも18:00にはラストオーダーとなる。残念ながら1Fをじっくり見ることはあきらめ、2Fでお茶とデザートをいただいてから3Fで蕎麦、という妙な順序での見学となった。
2F『茶房』のインテリアは、塗装と左官による白い空間に大型の木造作を配置することで大胆に構成されている。エントランスから区画の長手へのパースペクティブを強調するように、各造作はゆったりとした奥行きを持つ。開口部の大きさも手伝って、全体の印象は至って開放的だ。この「開放感」は小泉デザインとしてはユニークな要素かもしれない。
フロア中央の大テーブルに落ち着いてキッチン側を見ると、鋭角的に造形されたフードまわりの垂壁がシンプルな空間に絶妙な破調を加えていることが分かる。セットメニューは桐のプレートで、草木の飾りを沿えて提供される。
階段を上がって3Fの『十六夜』へ。スチールドアの向こう側に帯状の木材と和紙で出来たゲートが現れる。うねるような造形が『茶房』の直線的なデザインとの鮮やかな対比を印象づける。
客席は三角形の小上がりと2つの大テーブルにゆったりと配置されている。武蔵美COZ15と店のスタッフも制作に加わったというインテリアは手作り感たっぷりの仕上がり。フロア中央には白漆喰のパーティションが象徴的に置かれ、沸き上がる雲を思わせる造形が目を引く。別アングルからの写真はこちら。
店主氏は京橋『三日月』にゆかりのある方とのこと。道理で二八のそばは見目麗しく食感・風味ともに素晴らしい。つゆは出汁の香りの際立つ上品で優しい仕上がり。インパクトには欠けるが、観光地の場所柄にはちょうど良いのかもしれない。今後趣味性と立地のどちらに比重を置いてゆかれるのか、少々気になる。
驚いたのはウヱハラ先生に分けてもらった納豆そば(撮影:ウヱハラ先生)。なんともふくよかでクリーミーな食感。そばとつゆとの相性も抜群。これはぜひともまたいただきたい。