1/7。横浜にぎわい座で『立川談春独演会』。横浜にぎわい座は桜木町駅近くのビル内にあるホール。訪れたのはこれが初めて。座席は背に小さな折り畳みテーブル付きで、2F桟敷席下には提灯がずらり。ステージには寄席囲い(提灯付きの和風プロセニアムみたいなもの)も仮設され、体裁はすっかり寄席仕様。客席には適度な傾斜があって割合に前が見易く、シートは小振りながら「きゅうきゅう」と言うほどではない。鈴本に比べれば天国のように快適だ。いいなあ横浜。
立川こはるさんの『小町』に続いて談春師匠の登場。演目は初めて聞く『棒鱈』(ぼうだら)。この噺の構造が実に面白い。
表面上は田舎侍の無粋に江戸っ子が腹を立ててひと騒動、という筋書き。田舎侍がマグロの刺身のことを「赤ベロベロの醤油漬け」と言うあたりで爆笑とともに噺が急展開し始めるが、ここでの笑いは田舎侍のおかしな言葉遣いと同時に江戸の悪食に対して向けられることになる。田舎では刺身と言えば白身であり、赤身やタコを濃い味にしたものなど下衆な食い物に過ぎない。垢抜けないのはお互い様なのだ。田舎侍の台詞はおそらく九州弁であろう訛で演じられる。時代背景は幕末。薩長と、国のイニシアチブをさらわれつつある江戸との微妙な力関係が噺の伏線として効いて来る。
シンプルなようでややこしい噺も談春師匠にかかればさらりと小気味良い。仲入りに続いての演目は談春師匠では2度目の『妾馬』。東京国際フォーラムで聞いたときよりもさらに可笑しく、かつ流麗。感動が沸き上がった。
1/29。よみうりホールで『第二十六回東西落語研鑽会』。先ずは柳家三三師匠で『権助提灯』。軽めの根多ながら、初めて聞く三三師匠の落語は力強かった。初っ端にもかかわらず客席との間合いが絶妙。こ、これはヤバい。今後チェックしなくちゃ。続いて二番目にはなんと桂春団治師匠が早々の登場。しかも『桃太郎』に『鋳掛屋』と上方の小憎たらしい子供の噺を立て続けに。以前に渋谷で拝見した折は惚れ惚れするような男前だったが、この日はなんとも可愛らしい春団治師匠だった。さらに続いては柳家小三治師匠。春団治師匠主演の映画『そうかもしれない』(小三治師匠も通行人Aで出演とのこと)の話題を枕に『あくび指南』へ。師匠ならではのとぼけた味わいが凝縮された根多。淡々としているのに聞き入ってしまう。
仲入りに続いて春風亭昇太師匠の『茶の湯』。毒性の高さとチャーミングさが見事にマッチして爆笑。ハマり根多。そしていよいよのトリは林家染丸師匠。鳴物に踊りまで加えての大胆で華やかな演出。それでいて落語の粋は決して失われることがない。この楽しさは染丸師匠の高座でしか味わえない貴重なものだ。いやはや、今回の『研鑽会』もお腹いっぱい。