2/7。原宿で打合せと現場視察の後、六本木へ移動。ル・ベインで深沢直人氏デザインのチェアを見てから『カファ・ブンナ』でひと休みさせていただくことにした。六本木通りを駅方面へ少し進み、明治屋の手前の角で左折。ほどなく右側に現れる古いアパートビルを見上げると、プランターをいくつか下げた格子窓と控えめな木彫りの看板が2Fから出迎える。ビル中央の階段を上がり、テラス風の通路に面したドアを開けて店内へ。
エントランスから正面の白漆喰壁沿いに左手へ進むと、奥に延びた10席弱のカウンターにぶつかる。老マスターに会釈して、カウンター向かいのテーブル席に落ち着いた。テーブルは小さなものが3つあるだけなので、店の席数はおそらく全部で20あるかないか、と言ったところ。カウンター席はそこそこ明るいが、この一角の照明はベンチシートの隅に置かれたスタンドライトがふたつに壁掛けされた電球が一個と極めて暗い。オープンしたのは1960年代末とのことで、内装も、家具もそれなりに古い。BGMのシャンソンに耳を傾け、灯油ストーブで暖をとりつつ、次第に六本木の喧噪から遠く離れた気分になる。ラテンブレンドとデミタス、ババロアを注文。
店内の演出はフランス風ながら、コーヒーの味はさほど重くない。バランスに優れ、飲みやすく、ほっとするような味わいだ。特に私たちが好きなのは、まろやかでかつキレのあるデミタス(注文時、マスターに「砂糖を入れずにお飲みになっていただきますがよろしいですか?」と確認される)。ブランデーの効いたソースでいただくババロアもまたコーヒーを引き立てる逸品。マスター(能勢氏)は、林玄氏(コクテール堂創業者)、松樹新平氏(建築家)と共にコクテール堂系の喫茶店スタイルの確立に寄与した人物なのだそうだ。
2004年初頭まで、この店のすぐ階下にはインテリアデザイン史上伝説的な存在のバー『バルコン』(内田繁氏デザイン/1973)があったが、今はその面影はどこにも無い。立て続けの大開発が余波を残す六本木界隈にあって、『カファ・ブンナ』の存在は奇跡に等しく思われる。
カファ・ブンナ/東京都港区六本木7-17-20-2F/03-3405-1937
12:00-22:30/日休
「げんさん」のオールドコーヒー(SALUT/オハヨー乳業)