life
life of "love the life"

食べたり飲んだり : 外苑前・磯美家本店

3/4。正午から外苑前で打合せ。その後、近くで昼食を採ることに。以前から気になっていた天婦羅店『磯美家本店』(いそみやほんてん)に行ってみた。場所は外苑前駅の1A出口を出てすぐの青山通り沿い。開業は1944年とのこと。

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ベージュの左官壁に閉ざされた店構えは、近隣に比較していささか極端に思えるほどもの静かだ。一見敷居の高そうな佇まいながら、表の品書きに並んだ価格はさほど高くない。白い麻暖簾を分けて半間の引戸から店内へ入ると、おおよそ八畳間ほどのフロアには4人掛けのテーブル席が5つ6つ。最奥に3、4人の並ぶカウンター席があり、ガラスの間仕切りを挟んでその向こうがキッチン。入口のすぐ右手に2F客席への階段。さらに上階はおそらく住居だろうか。内装はクロス張りの壁に塩ビタイルの床、と至って簡素だが、要所のみに和風の木造作がセンス良く用いられ、明るく清潔感のある引き締まった空間となっている。手前のテーブル席に落ち着いて、穴子天丼と上天丼を注文。ほどなく穴子天丼から先に登場。出て来た瞬間、その強烈なビジュアルに思わず笑ってしまった。これは大変だ。

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30cmはあろうかという長さの穴子天が二本、ご飯の上には着地せず丼の両端に支えられている。途中で満腹感を覚えぬよう一気に胃袋に収めてしまおうと箸をつけたところ、巨大な天婦羅は実に香ばしく、その食感は意外に軽い。甘めのつゆと穴子の相性も良く、さくさくと食べ進んでしまった。海老2本にかき揚げ、きすの上天丼もまた具が大きく食べごたえ十分。

決して高級ではないが、十分に満足の行く味。価格は文句無しにリーズナブルだ。青山の雑踏のただ中にあって、取り残されたように小体で粋な空間。もっと早く発見したかったなあ。

磯美家本店/東京都港区南青山2-26-36/03-3401-2308‎
11:30-14:30,17:00-22:00(日祝11:30-14:00,17:00-19:30)/ 土休

2008年03月29日 22:00 | trackbacks (0) | comments (2)

日々の生活と雑記 : 新東京タワーの名称募集

新東京タワーの開業まであと4年。昨年秋から名称の募集が行われていたとのこと。最終候補案は6つに絞り込まれており、4月1日から5月30日までの間、ウェブサイトとはがきでの投票が受け付けられるそうだ。

投票の対象となるのは以下の6案。

・東京EDOタワー
・東京スカイツリー
・みらいタワー
・ゆめみやぐら
・ライジングイーストタワー
・ライジングタワー

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新東京タワーじゃダメなんだろうか。

Rising East project

新東京タワー(November 25, 2006)
第二東京タワー(March 30, 2006)

2008年03月21日 10:00 | trackbacks (0) | comments (4)

都市とデザインと : 日本橋・カフェテラス東洋

2/28。午後一番に東新宿でプレゼンテーションの後、日本橋へ移動。諸々の視察と買い物の前に『東洋』の1Fカフェテラスで遅い昼食を摂ることにした。開業は1964年。インテリアデザインは故・境沢孝が手がけており、1981年に同氏のデザインで一度全面改装された。その後、1983年に2Fにレストラン(こちらのインテリアも同氏のデザイン)がオープン。2001年には両フロアに境沢健次(ケンジデザインスタジオ)氏による部分改装が施され、現在に至っている。2Fレストランなどについての記事はこちら

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上の写真は中央通り側から店舗区画の奥側を見た全景。この眺めはおそらくほぼ1981年当時のままだ。入り組んだ斜め動線によるユニークな座席レイアウト、天井や壁面にちりばめられた摩訶不思議な照明オブジェはまさに「境沢節」と呼ぶにふさわしい。「造形のパターンはすべてが、たった今考えついたような執念のない、グラフィティのように実感のともなわない軽いものを考えて行った。」(境沢孝/商店建築1981年7月号)

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上の写真は中央通りに面した2001年の改装部分。以前はシックなパブカウンターの設えられていた場所が、オープンなテーブル席に変わっている。赤、白、黒のグラフィカルな造作とナチュラルな節有りの羽目板との組み合わせが特徴的。あっけらかんとカラフルな印象ではあるものの、家具については81年当時のデザインが踏襲されていることもあって、新旧の空間にはさほど違和感は無い。

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フードメニューは2Fのレストラン同様、これぞ軽食、と言った味わい(海鮮グラタンはなかなかの美味だった)。食後にいただいた苺ショートケーキとコーヒーも含め、昭和のカフェテラスとしての完成度は高い。

境沢デザインを詣でる意味も含め、これからも何度となく訪れたい日本橋の憩いの場。機会があれば各部のディテールをきちんと撮影させていただきたいものだ。

2008年03月18日 10:00 | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2008年2月

2/3。リトルモア地下で『DECOTORA 田附勝写真展』。小さなスペースにデコトラとそのドライバーたちの写真がぎっしりと並べられていた。それらは単純な生々しさをフレームの外に捨て置き、造形と色彩の完璧なる構成として新たなダイナミズムを獲得し、視覚を鷲掴みにする。田附(たつき)氏と被写体との距離感が絶妙だ。写真集、買わなきゃ。作品点数をもっと絞り込んでサイズの大きなプリントを主体にした方が、展示としてはより成功したかもしれない。

2/7。みつばちトート8studioで『naho ogawa / my life as a (petit) jetsetter #3』。バッグ屋さんの店先に、ナホさんの手描きイラストを切り抜いたボードが天井から無数にぶら下がった様は実に楽しく、キュートで、壮観。イラストの題材はバンコク、台北、ニューヨークの旅のワンシーン。首が疲れるまで眺める頃には、なんだかどこか遠くへ行きたい気分になっていた。
六本木に移動してギャラリー・ル・ベインで『深沢直人「木の椅子とテーブル展」』。新作椅子は一見シンプル極まりないフォルムが事も無げに身体にフィットし、違和感が無い。違和感が無いどころか、あまりの手触りの良さにうっとりするくらい。新作テーブルとの相性も完璧。これはぜひセットで欲しい、と思ったものの、そんなお金は無いし、だいいち置き場所が無い。マルニ木工の定番家具「地中海シリーズ」と「ベルサイユシリーズ」をリファインした椅子のシリーズは、深沢氏の志向する造形を間接的ながらかえって明快に示すものとして興味深い。本来のキャラクターをかろうじて留めるところまでディテールを取り除かれた猫足の椅子は、まるでその装飾性のみで存在するかのような軽やかさを感じさせる。

2/10。戸栗美術館で『鍋島 - 至宝の磁器・創出された美 - 』。17世紀半ばから18世紀半ばにかけて隆盛した鍋島の名品を一気に、かつ大量に見ることができた。何よりグラフィックデザインとしての格調の高さと洗練性に思わずため息が漏れる。精緻な絵付の技術は全て手描きであることがにわかには信じ難いほどだ。見応えがあり過ぎてぐったり。でもくたびれた分以上の収穫があった。
その後、神楽坂へ移動してラ・ロンダジルで『ハウスの革モノと金モノ』ハウスと言うブランドで先ず頭に浮かぶのは当然靴。その次に多分バッグ。しかしここで私たちの目に留まったのは革と真鍮のパーツを組み合わせたちいさなオブジェの数々だった。折り紙を思わせる素朴さと、素材の持つ確かな存在感。手のひらに乗るくらいのサイズに増満さんの造形センスがしっかりと込められている。犬のオブジェを一匹飼うことに。

2/14。ギャラリー現で『倉重光則展』。倉重氏は1960年代末頃から活動するライト・アートの第一人者。蛍光灯やネオンを用いたミニマルなインスタレーションで知られる。ここで見ることができたのは、ちいさなギャラリーの長方形の壁3面を縁取るようにして設置された赤、青、黄のネオン作品と、2点のドローイング。ネオンの縁取りはそれぞれ一部が欠落しており、その不在が見る者の意識を作品をとりまく空間そのものへと誘導する。カッコいい。

2/22。ギャラリー・エフで『トーマス・ボーレ「ちび陶」』。詳細はこちらの記事で。

2/28。SCAI THE BATHHOUSEで『横尾忠則の壺』。アーティストに転身してからの横尾氏の作品は全くのノーチェックで、申し訳ないことに見もしないうちに勝手に醒めていた、と言うのが正直なところ。初めて実作の前に佇んで、その巨大な画面から放たれる形容不可能な禍々しい魅力に圧倒された。絵画とコラージュをシームレスに混在させる手法は極めて巧みで、洗練されたものだ。物語を予感させる象徴的でミステリアスなモチーフの狭間に、群衆が細かく描かれてるな、と思って近づくと、その顔は全て白黒写真の切り抜き。背筋に悪寒が走った。

2008年03月16日 05:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2008年2月

2/14。なかのZERO小ホールで『柳屋喬太郎独演会』。こちらの大ホールには以前に何度か訪れたことがある。あまりに空間が広過ぎて、落語の場合どうもステージに集中し辛いため、最近はここでの公演チケットを取るのを避けていた。初めて入った小ホールは客席の奥行きが小さく、傾斜が大きくとられており、後方でもステージの様子が手に取るように分かる。かなり古そうな施設で、時折外の音がわずかに漏れ聞こえたりはするものの、落語を見る分にはほぼ言うこと無し。いいハコだ。
柳屋こぞうさんの『真田小僧』に続いて喬太郎師匠の登場。バレンタインデーに因んでの演目は自作の新作『白日の約束』。同僚のOLとモテ男社員の演技が違和感アリアリに誇張されるのに対して、噺の中心となる男は丸っきりの与太郎で、そのギャップが面白い。夜のデートの途中でOLに「そろそろ行こうか」と連れ出されてからの不条理な展開で観客を一層引き込んだと思ったら、見事な駄洒落でさげて終わってみるとちゃっかり落語になっている。流石。
さらにねこマジさんの美声で寿限無を堪能してから仲入り。この流れで最後に喬太郎師匠が持ってきたのは驚いたことに人情噺バージョンでの『おせつ徳三郎』通し。師匠一流の美しく映像的なラストシーンに涙。

2/17。三鷹市芸術センター星のホールで『林家たい平独演会』。こたい平さん(たい平師匠の御子息。小学生!)の『転失気』(てんしき)に続いてたい平師匠の『不動坊』。終盤、幽霊登場の場面の描写がやたらと細かくて、もう笑いっ放し。
仲入りに続いて花島世津子師匠のゆるーいマジックで和んだ後、たい平師匠の『愛宕山』。以前からこの演目は師匠にハマるだろうな、と思っていたが、これがもう想像以上の素晴らしさ。最初から最後まで、先ほどの『不動坊』を上回る鮮やかさでディテールを紡ぎながら、まさに全力疾走での熱演は感動的なものだった。いやーよく笑った。

2/23。深川江戸資料館小劇場で『特撰落語会第4回 柳屋喬太郎とすわ親治の二人LIVE』。柳屋小きちさんの『松竹梅』、喬太郎師匠の『金明竹』(きんめいちく)に続き、楽しみにしていたすわ親治氏の一人コメディ。静かにステージへと登場し、自己紹介がてらあの甲高い笑い声を一瞬聞かせて下さった。この時点ですでに私たちは鳥肌状態。イッセー尾形方式でステージ袖で衣装替えをしつつ、次々に繰り出されるコントはどれも短時間で極めつけにシンプル。一瞬の間合いで虚を突くようにして挿入されるオチが凄い。ショックと同時に爆発的な笑いが劇場を包み込む。新鮮さと懐かしさ。私たちが目の当たりにしたのは間違いなくあのドリフターズの笑いであり、そのひとつの進化形だった。今後のライブをしっかりチェックせねば。お二人の対談後、仲入り。
続いて喬太郎師匠で『錦木検校』(にしきぎけんぎょう)。三味線栗毛のエピソードを前半に置いて、人情噺に仕上げたもの。角三郎が友人の按摩師・錦木に口語で話しかけるところで思わず涙。また泣かされた。喬太郎師匠の演じる武士は本当に格好良い。

2/27。東京芸術劇場小ホール2で『上方落語の花形来る!vol.2 桂南光・こごろう親子会』。最初に登場した桂ちょうばさんの『時うどん』が良かった。上方の若手は人材豊富だ。続いて桂こごろう師匠で『動物園』。シンプルな根多を豊かな表情と丁寧な演技で見事に膨らませる。園長が着ぐるみの男に虎の歩き方を教えるところがいい。そしていよいよ南光師匠の登場。演目は『初天神』。軽めに終わるかと思いきや、師匠の手にかかるとこれが実にひねりと小技の詰まった根多となるのに驚いた。買い物をせがむ子供がなんともしたたかさで憎たらしい。
仲入り後、こごろう師匠の『阿弥陀池』(東京に『新聞記事』と言う似た根多がある。何か関係がありそうだが、はて)。知ったかぶりの男の間抜けぶりが、上方落語らしくオーバー気味に描写されるのがこれまたいい。軽妙にして濃厚。最後は南光師匠の『素人浄瑠璃』(『寝床浄瑠璃』とも言う。東京の『寝床』の原型)。以前林家染丸師匠で見た時とはがらりと印象の異なる爆笑根多だった。先の『初天神』といい、エピソードだけを抜き出すとえげつなかったりしつこかったりするはずが、流麗な関西言葉や巧みな間合いと相まって、終わってみると不思議なくらいに上品な後味を残す。独特のかすれた声質もまた耳に心地良い。格調高く骨太な芸を堪能させていただいた。もっと東京で演って下さらないものか。

2008年03月13日 07:00 | trackbacks (0) | comments (0)

オルタナ系日本茶 : 徳島/上勝・山田産業

2006年に『阿波番茶の謎』なる記事を掲載したところ、阿波晩茶の生産者である山田産業の方からコメントをいただいた。その後、そちらの商品『上勝阿波晩茶』を2006年と2007年にそれぞれ取り寄せてみたところ、どちらも実に素晴らしい。差し当たり、安定して上質な阿波晩茶を購入できる方法として、私たちにとって最も手堅いのが『上勝阿波晩茶』のインターネット直販だ。

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上の写真は2007年のパッケージ。他の阿波晩茶と同様、クラフト紙の袋にほとんど落ち葉のような茶葉がざっくりと詰まっている。開けた瞬間に立ち上る独特の発酵香は、良質な阿波晩茶ならではのもの。

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ハーブを思わせる清涼な味と香りは、これまでにいただいたことのある(と言ってもわずかなものだけど)阿波晩茶の中でも文句無しのトップクラス。特に2006年は凄かった。「強烈」と言いたくなるくらいの爽やかな芳香が忘れられない。届いて数週間もするとその印象は徐々に弱まったが、それでも長らく十分に強い風味を楽しむことができた。全部飲むのが勿体なくて、今でも少量を取り置いている。

2007年は前年ほどのインパクトは無く、最初から落ち着いたお茶だった。この違いが気候や栽培状況によるものだとすると、かえって面白い。『上勝阿波晩茶』にはおそらくワイン(あるいは中国茶や紅茶)のごとき「ヴィンテージイヤー」が存在するのではないだろうか。産地別ストレート茶をいただく楽しみがまた少し広がった。

上勝阿波晩茶(山田産業)

*今後阿波晩茶のことを書く際にはなるべく「番茶」ではなく「晩茶」で統一することにした。「番茶」には本来一番茶(新芽)ではなく二番摘み、三番摘みの茶葉が用いられる。阿波晩茶には十分に生育した一番茶が用いられており、しかも発酵茶なわけで、実のところ所謂「番茶」とは丸きり別ものだ。そんなわけで、遅摘みの一番茶との意味合いから「晩茶」とする表記が近年一般化しつつある。

2008年03月06日 05:00 | trackbacks (0) | comments (1)
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