4/4。阿佐ヶ谷で打合せを二件。夕刻早めに『ひねもすのたり』で食事とひと休み。作家ものの器の販売も行うカフェ。2006年7月オープン。場所はJR阿佐ヶ谷駅北口を出て、線路沿いの小さな商店街にある小さな木造商店の2F。ポットのマークが入ったグリーンの小さなテントと、横長の行灯サインが目印(外観の写真)。地上階には韓国総菜店が入っている。初めて訪れたのは前月のことで、この日は2度目。
テントの下にほとんど軒は無く、すぐ目の前に急な階段が現れる。すれ違いの不可能な幅を白漆喰の壁に挟まるようにして上り、左手にある白い木枠の引戸から店内へ。
コンパクトな空間は、白漆喰の壁、シルバーにペイントされた合板張りの天井、暗色のウッドフローリングによって簡潔にまとめられている。客席としてはおそらくオリジナルのテーブルが4つあるのみ。その他のチェアや展示棚などには、中古品と思しい家具類がバラバラに用いられている。
一見したところ緩めで、ともすると家庭的と形容したくなる体裁ながら、細部に施された仕事は厳しいものだ。各造作の見切の納まりがシンプルで実に美しい。天井は底目地でグリッド状に区切られ、照明や換気、スピーカーなどの設備類は全てその中に整然とレイアウトされている。真四角に切り抜かれた箇所の上部にはどうやら天窓があるようで、ふと見る度に光の色が変化することに不思議な感覚を覚える。
北側に面した開口部まわりは大方新しく作り直されたもの。引き違い窓の気密性は高く、不要となった雨戸の戸袋は木造作で丁寧に封印されている。ほとんど白色で覆われた展開面の中で窓枠だけは黒くペイントされており、外を見ると逆光と植栽の中に溶け込んで、まるで影のように存在感が無い。
建築的基本性能が高く、緩さの中に節度を要求する空間デザインを手がけられたのは堀部安嗣氏。
上の写真は前回にいただいたおぜんざい(温)。玄米の餅(ワッフルメーカーで焼いたのだろうか)と甘さ控えめの汁粉。穀物の食感がいい。こちらはゆずと小豆のパウンドケーキ。これまた香ばしく美味い。お茶はそれぞれ浅煎り初摘み白折茶と煎茶。特に煎茶が素晴らしく、帰りに茶葉を購入。京都・和束町にある中井製茶場の有機栽培茶とのこと。
この日は上のおそうざいセット(上)とオムカレー(下)を注文。どちらも素材の持ち味が引き立つ品。オムレツ+カレー+雑穀のマッチングは意外で新鮮だった。それぞれに個性的な器も楽しい。隅から隅まで女性オーナーのセンスが行き届いている。
営業の終わる時刻が早く、週休2日というマイペースさだが、この店の持つ計算された素朴さは他に代え難い。わざわざ訪れる価値は十二分にある。また近々にお伺いしたいものだ。
ひねもすのたり/東京都杉並区阿佐谷北1-3-6-2F/03-3330-8807
11:30-19:00/木日休