life
life of "love the life"

ちょっといい風景 : 立石仲見世商店街

9/22。午後から葛飾区立石で打合せ。京成立石駅の南口を出てすぐの場所に、『立石仲見世』と看板の付いたなんとも渋い商店街があった。1945年の終戦後からこの地にマーケットが自然発生。1960年にアーケードが設置され、現在に至る。

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商店街は120mほどの通りが2本と、30m弱の短い通りが南北方向に3本平行するかたちで構成されている。特に面白いのは西側にある長短ふたつの通りだ。幅3mも無いくらいの通りに様々な業種の店舗が狭い間口でぎゅう詰めになっている。軒先を一直線に走る蛍光灯、簡素なアーケードもまた味わい深い。上の写真はその通りを駅側入口から見たところ。

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上の写真は通りの中ほどから駅側を見返したところ。物価の安さ、総菜の充実ぶりについつい財布を取り出しそうになったが、これから電車で帰るんだよな、と思い出し踏みとどまった。

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上の写真は東側の通りの中ほどにあった『かぎや染物店』。シースルーの粋な佇まい。その斜め向かいの喫茶店『ルミエール』でさらに打合せの続き。商店街が2006年の個人的ベスト邦画『間宮兄弟』(森田芳光監督)の主要なロケ地であり、この喫茶店で撮影されたシーンも存在することを知ったのはついさっきのこと。

立石仲見世商店街
立石商店連合会

映画のある風景 その5 間宮兄弟ロケ地 - 立石商店街(日本映画劇場)
間宮兄弟

2008年09月30日 22:00 | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 港区赤坂区民ホール

9/12。『夕刊フジ第12回平成特選寄席』を見に港区赤坂区民ホールへ。ホールとその付帯施設のデザインは近藤康夫デザイン事務所。1995年にオープン。

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パンチングメタルのドーム。太いボーダーでオレンジとグレーに色分けされた壁。近藤デザインならではのインダストリアルで明朗な空間が心地良い。スロープを大きくとった400の客席はステージが見やすい上にとても近く感じられ、落語には打ってつけのこぢんまりしたホールとなっている。

港区のホームページによると、ホールは改装のため11月25日から来年の1月17日までクローズされるとのこと。内装デザインには手をつけないでもらえるといいんだが。

赤坂コミュニティぷらざ(YASUO KONDO DESIGN)
港区赤坂区民ホール(港区Kissポート)

2008年09月26日 23:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2008年8月

8/2。三鷹市芸術文化センター星のホールで『夏談春』昼の部。立川こはるさんの『浮世根問』に続いて、立川談春師匠で『鰻の幇間』。仲入を挟み談春師匠で『厩火事』。
ちくちくとねちっこいのになぜか嫌な気がしないのが師匠ならではの『鰻の幇間』。同じ根多でも市馬師匠とは丸きり印象が異なる。『厩火事』を談春師匠で聞くのは二度目。間抜けで、口が悪く、強烈にたくましい江戸っ子の夫婦喧嘩。最高に笑えてスカっとする。

8/2。新宿末廣亭で深夜寄席。柳家さん若さんで『棒鱈』。桂三木男さんで『猫の皿』。三遊亭金兵衛さんで『船徳』。春風亭栄助さんで『お血脈』。
それぞれに個性の際立った内容で大いに楽しませていただく。でもやはり栄助さんは別格。シュールかつ切れ味鋭いくすぐりの連続。馬鹿馬鹿しいことこの上ない石川五右衛門。

8/5。湯島天神で『市馬・三三ふたり会』。柳亭市朗さんの『湯屋番』に続いて柳家三三師匠で『南瓜屋』、柳亭市馬師匠の『佃祭』。仲入を挟んで市馬師匠で『山号寺号』。最後は三三師匠で『笠碁』。
人情味に溢れ、粋で滑稽な『佃祭』は実に完璧なる江戸落語。市馬師匠で拝見できて良かった。100%駄洒落の『山号寺号』も師匠に掛かれば大いに盛り上がる。喬太郎山肥満寺。三三師匠の2席はどちらもとぼけた味わいが絶品。たっぷりの『笠碁』で幸せな気分に。

8/6。みたか井心亭で『寄席井心亭 数えて百五十九夜 葉月』。柳家小んぶさんの『道灌』に続いて柳家さん若さんで『棒鱈』、柳家喬太郎師匠の『牡丹灯籠 刀屋』。仲入を挟んで古今亭志ん八さんで『黄金の大黒』。最後は喬太郎師匠で『鬼背参り』。
喬太郎師匠による感情の昂りの表現はつくづく鮮やかでカッコいい。シビれる『刀屋』。ホラーでスペクタクルな『鬼背参り』は夢枕獏氏の新作。あまりに切ない幕切れに涙。

8/13。鈴本演芸場で『納涼名選会 鈴本夏まつり 吉例夏夜噺 さん喬・権太楼特選集』三日目。柳亭市馬師匠で『たらちね』。鏡味仙三郎社中の太神楽。柳家我太楼師匠で『強情灸』。ロケット団の漫才。柳亭左龍師匠で『お菊の皿』。春風亭一朝師匠で『唖の釣り』。ダーク広和先生の奇術。柳家喬太郎師匠で『夫婦に乾杯』。仲入。昭和のいる・こいるの漫才。柳家権太楼師匠で『蛙茶番』。林家正楽師匠の紙切り。柳家さん喬師匠で『らくだ』。
市馬師匠の前座噺は何席でも見たくなる素晴らしさ。左龍師匠のハイテンションに抱腹絶倒。私的ベストオブ『お菊の皿』。初めて拝見した一朝師匠はカラフルで濃密。のいる・こいる両先生も初めて拝見。モザイクを思わせる繊細で完成された掛け合いに感動。権太楼師匠の半公は最高にチャーミング。さん喬師匠の『らくだ』は火屋のサゲまで一気に。まさに比類の無い流麗さ。

8/16。鈴本演芸場で『納涼名選会 鈴本夏まつり 吉例夏夜噺 さん喬・権太楼特選集』六日目。柳家甚語楼師匠で『つる』。鏡味仙三郎社中の大神楽。柳亭市馬師匠で『芋俵』。ロケット団の漫才。柳家喬之助師匠で『寄合酒』。春風亭一朝師匠で『芝居の喧嘩』。ダーク広和先生の奇術。柳家喬太郎師匠で『落語大学』。仲入。あしたひろし・順子の漫才。柳家さん喬師匠で『船徳』。林家正楽師匠の紙切り。柳家権太楼師匠で『幾代餅』。
甚語楼師匠の密度の高い『つる』。三日目以上にカラフルさ全開の一朝師匠。前に登場した師匠先生方の演目をアドリブで見事に組み込んでしまう喬太郎師匠には思わず唖然。ひろし・順子両先生を拝見するのは初めて。一見和やか。しかしシュールなことこの上ないビジュアルが強烈な印象を残す。さん喬師匠の『船徳』はため息ものの素晴らしさ。緻密なディテール。ええカッコしいな徳さんのダメさが愛らしい。最後は権太楼師匠で感涙。師匠の演ずる女性はどうしてこんなに魅力的なのか。談志師匠の『紺屋高尾』がオーバーラップするようにして思い出された。

8/16。鈴本演芸場で『納涼名選会 鈴本夏まつり 吉例夏夜噺 さん喬・権太楼特選集』九日目。柳家我太楼師匠で『強情灸』。鏡味仙三郎社中の太神楽。古今亭菊丸師匠で『たがや』。ホームランの漫才。柳亭左龍師匠で『初天神』。春風亭一朝師匠で『祇園祭』。ダーク広和先生の奇術。柳家喬太郎師匠で『孫、帰る』。仲入。昭和のいる・こいるの漫才。柳家権太楼師匠で『寝床』。林家正楽師匠の紙切り。柳家さん喬師匠の『明鳥』。
金坊の表情が絶品の左龍師匠。私的ベスト2オブ『初天神』(ベスト1はやっぱりさん喬師匠)。一朝師匠は嫌みな京都人と短気な江戸っ子の対比に思わずにんまり。喬太郎師匠の新作は祖父と孫の微笑ましい会話から急転直下の涙へ。権太楼師匠の『寝床』とさん喬師匠の『明鳥』は事前の想像を遥かに超える可笑しさ。番頭の造形が際立つ『寝床』。吉原の光景が目の前に拡がるような『明鳥』。

8/30。谷中・全生庵で『第8回特撰落語会 全生庵で聴く 林家正雀夏の怪談』。春風亭一左さんの『金明竹』に続いて林家彦丸さんで『粗忽の釘』、林家正雀師匠で『真景累ヶ淵 深見新五郎』。仲入を挟み正雀師匠で『怪談累草紙 親不知の場』。師匠とオフィスぼんがさんとの対談があって、さらに『奴さん』と『姐さん』の踊り。
正雀師匠の緻密な情景描写に思わずのめり込む。園朝直系の名人芸を実感。最後は彦六の物真似を交えた見事な踊りで爆笑させていただいた。

8/31。お江戸日本橋亭で『第16回 無限落語』。三遊亭たん丈さんの『漁師親子』に続いて三遊亭亜郎さんで『桃園の誓い』、林家彦いち師匠で『さいとう』、三遊亭円丈師匠で『あんたのせい家族』。仲入を挟んで柳家小ゑん師匠で『トニノリ』、最後は柳家喬太郎師匠で『同棲したい』。すべて自作の新作。
ナンセンスでホラーで不条理な展開に彦いち師匠の風貌や芸風が最高にハマる。古典になりうる傑作。ハイテンションで押し切る円丈師匠もたまに拝見する分には魅力的。この日個人的に一番感動したのは小ゑん師匠。ほぼ全編を通じて電車の車中だけでの展開。淡々とした声色。時折垣間見せる表情が剃刀のように鬼気迫るリアリティを醸し出す。ライブじゃないと絶対に伝わらない凄み。喬太郎師匠の根多は団塊世代のハートを直撃の内容。それにしてもくすぐりが見事。

2008年09月24日 12:00 | trackbacks (0) | comments (0)

コレ買いですか? : Leica C-LUX 3 & D-LUX 4

ライカ、25mmからの5倍ズーム機「C-LUX 3」
Impress Watch / 2008.09.15

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ショック。おととい「LUMIX DMC-FX37」買っちゃったよ。。。
ま、でも「C-LUX 2」を買わなかった分だけ傷は浅いか。。。

ライカ、開放F2の超広角コンパクト「D-LUX 4」
Impress Watch / 2008.09.15

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こっちも登場。「LUMIX DMC-LX3」ベース。
こうなったらこっちを買うか。貯金しよう。

2008年09月16日 09:00 | trackbacks (0) | comments (6)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2008年8月

8/3。サントリー美術館で『小袖 江戸のオートクチュール』。展示作品のほとんどは松坂屋京都染織参考館のコレクション。先ずはその質的内容の高さに驚く。国立博物館でもお目にかかったことの無い優れたデザインの小袖が延々並ぶ壮観に思わず目眩いがした。染色と刺繍とを巧みに組み合わせた超絶技巧は友禅を除いてほとんど桃山時代には完成されており、江戸時代を通してそのグラフィックセンスは最高潮に達することが見て取れる。中ほどに展示された雛形本(ファッション誌みたいなもの)にはお洒落を楽しむ女性たちが「気に入ッたもやうヲ見や」とか「めづらしいひながたじや」などとおしゃべりする様子も。これまた楽しい。

8/20。ギンザグラフィックギャラリーで『THA/中村勇吾のインタラクティブデザイン』。場内に入ると黒い壁をバックにモニターが縦位置でずらりと並ぶgggではお馴染みの展示風景。階段を降りて地下のスペースへ。こちらは白い壁にPCや配線が剥き出しのワイルドな展示手法。『FFFFOUND!』のネオンサインが絶妙にハマる。そして、数十秒後に鳥肌が立った。インタラクティブな作品も含む全てのモニター展示が突如連動し、1分ごとの時報とともにthaのロゴにポーンと切り替わるではないか。カ、カッコいい。多くは既にどこかで見たことのある作品ながら、こうして見事に整理して展示されることで、その表現はより明快になり強度を増す。パソコンの画面の中でこんなに凄いことが起こっていたのか、と、あらためて感動を覚えた。それはそうと、ここの係員はなんでいつもあからさまに不機嫌なんだろうね。

8/21。スパイラルマーケットで『モノエ(森昭子 尾上耕太)古展』。陶を主素材とするオブジェや容器の展示。手のひらに収まりそうな大きさの中に、古びた佇まいと乾いたユーモアを含んだ作品の数々。フォルムと質感に対する作家の繊細な感覚が伝わる。底に家のかたちがくっついたカップと、階段がくっついたカップをひとつづつ購入。

8/22。東京国立近代美術館工芸館で『所蔵作品展 こども工芸館 [装飾/デコ]』。1室から4室までの内容が素晴らしい。高度な伝統的技術と現代的なセンスがシンプルに、かつ分ち難く結びついた20世紀工芸の名品たち。中でも田口善国(たぐちよしくに)、佐々木英(ささきえい)、音丸耕堂(おとまるこうどう)、松田権六(まつだごんろく)、磯井如真(いそいじょしん)らの漆器が印象深かった。稲垣稔次郎(いながきとしじろう)の虎の型絵染のタペストリーはグラフィックセンス抜群。加藤土師萌(かとうはじめ)の磁器飾壺は実に繊細で可愛らしい。最後の5室はほとんど秘宝館もかくや、と言った有様。過剰なアイコンにまみれたドロドロな作品ばかり。蛇足の感は否めない。

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8/22。オカムラガーデンコートショールームで『伊東豊雄×タクラム・デザイン・エンジニアリング「風鈴」』。うすはりガラスシェードのLED照明が、うねるような高低差とともに斜めのグリッドに沿って細かなピッチで配置されていた。その天井取付部にはハンマー式のチャイムが内蔵されており、下を通るとその周辺でLEDが点灯し、涼しい音が鳴る。互いに連絡し合う人感センサーの微妙なチューニング、ローテクなサウンド、半工芸的なガラスの造形の組み合わせ。なんとも不思議な感覚を覚えるインスタレーションだった。

8/27。松屋銀座8階大催場で『デザイン物産展ニッポン』。デザイン性に優れた地域物産を各都道府県別に紹介する内容。各地域におよそ1m四方のステージが割り当てられ、その脇に下がった札を帰りに提示すれば展示品を購入することもできた。ただし品物を手に取ってみることはできない。必ずしも各地域において最高の品が選ばれているわけでもない。この程度がニッポンのデザインの実力だと思われたりするとちょっと困るな、と一瞬思ったが、おそらく一般消費者の見識はそんなに甘くはないから大丈夫だろう。とは言え、見たことがないものも多かったので簡易なショーケースとしてはそこそこ楽しむことができた。iPod touch / iPhone用の解説サイトは、会場では回線の混雑のためあまり活用できず、アトリエに帰ってからゆっくり拝見した。

8/30。全生庵で『円朝コレクション幽霊画展』。江戸後期から明治期にわたるコレクションは、事前の予想以上に質の高いものだった。各々個性的な幽霊の表現は見飽きることがない。渡辺省亭(わたなべせいてい)、月岡芳年(つきおかよしとし)、歌川国歳(うたがわくにとし)、河鍋暁斎(かわなべきょうさい)、高橋由一(たかはしゆいち)、尾形月耕(おがたげっこう)、伊藤晴雨(いとうせいう)、林隣(りんりん)、萩原芳州(はぎわらほうしゅう)など印象的な作品は数多い。しかしやはり池田綾岡(いけだあやおか)の『皿屋敷』の美しさは群を抜く。来年、またお菊さんに会えるだろうか。

2008年09月15日 13:00 | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 御茶ノ水・黒岩スリッパ店

8/21。西小松川町(江戸川区)で型小紋の三橋工房を見学の後、総武線を御茶ノ水まで引き返して『ミロ』で軽く食事。途中、駅の聖橋口を出て右手にある『黒岩スリッパ店』という店の前で足が止まった。

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4本の光柱を中央に据え、まわりを無機質な内装造作が取り囲むガラス張りの店構え。エントランスの両脇にあるクローム色の階段型のディスプレイ棚といい、その上にカールコードで吊るされた蛍光灯のペンダントライトといい、実にクールなデザインでまとめられている。スリッパだけがひたすら整然と並ぶ様子がまた渋い。

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所々で造作の軸線のズレが多少気にはなるものの、設計者の方の腕前はなかなかのものと見た。濃厚な70年代の香り漂う秀作だ。機会があればぜひスリッパをオーダーしてみたい。

黒岩スリッパ店/東京都千代田区神田駿河台2-6-4/03-3291-9618

2008年09月14日 06:00 | trackbacks (0) | comments (4)

都市とデザインと : 銀座・マーケットワン跡地

8/20。ギンザグラフィックギャラリーで『THA/中村勇吾のインタラクティブデザイン』を見た後、以前に東さんのブログで話題となっていた『マーケットワン』の跡地前を通りかかった。倉俣史朗が1970年にデザインしたブティック。現在はその内装をほぼ残したままの状態で別のブティックが入居し、営業している。

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ところどころあるべきものが取り去られ、無かったはずのものが付け加えられた姿は痛々しい(なんて書いてしまうのは現在の店舗オーナーに申し訳ないが)。研ぎ澄まされた空間が生命線の倉俣作品であればなおのこと。彼が存命であればいっそのこと跡形も無くなってほしいと願うことだろう。

とは言え、FRPで造形された洞穴のような空間はほぼ健在。ここは敢えて、今のうちに足を運んで往時を偲んでみられることを(特にプロの設計者の方々に)お勧めしておく。ちなみにこの『マーケットワン』跡地のある尾張町ビルは1933年竣工(設計者は不明)の近代建築とのこと。『ビヤホールライオン』しかり、そこかしこで意外なデザイン史の堆積が、その断面をのぞかせているのが銀座という街の面白いところだ。

見つけました「MARKET ONE」(JA Laboratory / News 2007/09/21)

2008年09月10日 01:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2008年7月

7/7。下北沢「劇」小劇場で『第5回 栄助・天どん会』。お二人のゆるゆるな前説に続いて春風亭栄助さんで『芝居の喧嘩』。派手なキャラが続々と登場するだけのナンセンスな展開は古典ながらまさに栄助さんに打ってつけ。さらに三遊亭天どんさん(拝見するのは初めて)自作の新作で『ひと夏の経験』。こちらもキャラ描写が主題でヘンな女性ばかりが現れる。天どんさんが気持ち悪くていい。仲入を挟んで栄助さん自作の新作で『7つのツボを押す男』。じわじわと追い込まれてゆくケンシロウ。最後は天どんさんで『妾馬』。人間的深みの全く無いどこまでもダメな八五郎が新鮮で、かえって共感。

7/10。国立劇場小劇場で『桂文珍 大東京独演会 vol.2』。林家うさぎ師匠で『手水廻し』の後、巨大な演目表を背に文珍師匠がリクエスト受付。客席から『青菜』の声がかかり、あれがああなってこうなって、、、と早口で内容をおさらいする師匠。1、2分後「あ、全部やってしもた」で会場は爆笑と拍手に包まれた。決まった演目は『七段目』、『地獄八景亡者戯』と『商社殺油地獄』。抜粋版ながら『地獄八景亡者戯』の素晴らしいこと。文珍師匠ならではの時事感覚満載の駄洒落とくすぐりにお腹を抱えっ放し。

7/11。大井町きゅりあん大ホールで『きゅりあん寄席夏特選落語会』。春風亭正太郎さんの『たらちね』に続いて柳家喬太郎師匠で『竹の水仙』。傲慢でマイペースでアーティスト肌の左甚五郎が素晴らしく魅力的。現代的な人物描写にシビれる。仲入を挟んで柳家三三師匠で『五目講釈』。こんなに時事根多満載の三三師匠を見たのは初めて。大いに盛り上がって、最後は立川談春師匠の『らくだ』。丁目の半次はもっと恐い方が好み。

7/19昼。銀座小劇場で『大銀座落語祭2008 春風亭栄助独演会』。桂笑生師匠の『表彰状』に続いて栄助さんで『浮世床』。妄想根多がどんどん膨らんで、膨らみ切ったところでサゲ。仲入を挟んで元気いいぞう先生(拝見するのは初めて)のギター漫談。これがもう震撼ものの凄まじさ。アヴァンギャルドなことこの上ないステージ後には、まるでロックコンサートを見終えたような高揚感と虚脱感。ダメ過ぎてカッコ良過ぎる中年男子。きっと明日はイエスタデイ!!最後は栄助さん自作の新作で 『マザコン調べ』の序。マキヒコの母の極悪なキャラに爆笑しつつも、空恐ろしさがトラウマのようにいつまでも残る。

7/19夜。博品館で『大銀座落語祭2008 米團治への道/可朝・鶴光二人会』。桂吉坊さんの軽快で綺麗な『商売根問』に続いて桂小米朝師匠の『青菜』。こんな噺だっけ?と思うほどの圧倒的濃厚さは師匠ならでは。さらに林家いっ平師匠(拝見するのは初めて)で『浜野矩随』。見事な熱演にもかかわらず、空々しいのは何故か。第一部の最後は小米朝師匠で『景清』。京都の木彫職人の噺。定次郎の虚勢と俗人ぶりが師匠ご自身のキャラクターと重なり、なんとも痛々しく、涙を誘う。二世であることや育ちの良さが、これほどの魅力に結びつき得るとは。やはり落語は人間力なんだなあ。
仲入を挟んで笑福亭学光師匠で『試し酒』。続いて笑福亭鶴光師匠で『竹の水仙』。軽妙にして流麗。素晴らしい。最後は待ちに待った月亭可朝師匠(拝見するのは初めて)で『狸賽』とギター漫談『出てきた男』。とびきり下品で哀愁漂う根多。逮捕の前に拝見できて良かった。

7/20。博品館で『大銀座落語祭2008 三遊亭白鳥vs旬のお笑いたち/電撃ネットワーク/昔昔亭桃太郎の「死神」』。5GAP、ハイキングウォーキング、髭男爵、フルーツポンチ、はんにゃ、狩野英孝を立て続けに。巧みな観客いじりを交えた髭男爵が抜群。さらに三遊亭白鳥師匠自作の新作で『はらぺこ奇談』。擬人化と可哀想な子供は師匠のお得意。
仲入を挟んで電撃ネットワーク(拝見するのは初めて)。花火は鳴るわ牛乳は飛ぶわで場内は悲鳴と爆笑の坩堝。体を張った変態芸で観客と博品館をこれでもかと蹂躙する。カッコいい。
仲入と掃除を挟み、花火の煙がおさまるまでの繋ぎに三遊亭かっ好さんが急遽高座へ。やっつけの小咄が大いにウケたが、『からぬけ』はイマイチ。「落語やらなきゃよかった」でまたウケる。最後に昔昔亭桃太郎師匠で根多下しの『死神』。客層が若い上に必ずしも落語を聞きに来たわけでもなく、完全にアウェイの状況で桃太郎師匠の良さが出ないまま終演。

7/24。博品館で『昔昔亭桃太郎独演会 桃太郎三番勝負 第三夜』。春風亭昇吉さんの『たらちね』に続いて桃太郎師匠で『春雨宿』。師匠のために作られた根多では、と思うくらいにとぼけた味わいの絶品。続いて立川談春師匠で『紙入れ』。絶体絶命の状況下で浮気をさらりと誤摩化してしまう女将。その凄みと色気、そして軽妙な展開の素晴らしいこと。これまでに見た談春師匠による女性キャラ中ダントツのベストアクト。仲入を挟んでお二人のトーク。互いの腹黒さが滲み出た内容に爆笑。最後は桃太郎師匠で『死神』。大銀座落語祭の時とは打って変わった盛り上がりよう。客席との一体感無しに落語は有り得ないことを痛感。桃太郎師匠ならなおさらか。

7/27。深川江戸資料館で『特撰落語会第7回 柳家喬太郎・真夏の夜の怪談噺』。柳家小んぶさんの『道灌』に続いて喬太郎師匠で『へっつい幽霊』(このときの出囃子は『怪奇大作戦』)。鮮やかで小気味良い。仲入を挟んで柳亭左龍師匠の『片棒』。荒唐無稽な葬儀プランを超ノリノリでプレゼンする長男と次男が絶品の味わいでこれまた最高。最後は喬太郎師匠で『牡丹灯籠』のお札はがしから栗橋宿まで。期待に違わぬ緻密さと生々しさを大いに堪能させていただいた。

2008年09月09日 06:00 | trackbacks (0) | comments (0)
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