12/22。羽田から伊丹へ飛び、高速バスで京都駅へ。地下鉄を烏丸御池で降り、ホテルに荷物を預けて、散策を開始したのがちょうど正午過ぎ。
烏丸御池のひとつ上の北東角にある『とり安』で昼食。鶏肉販売と鶏料理の店。1890年創業。中高層のビルに囲まれた簡素な木造二階建が印象的だ。骨格のみを残してその身体をすっかり失いつつある京都市街にあって、その佇まいは毅然として見える。少し出遅れたようで、しばらく並んでから店内へ。10ほどのカウンター席と4人掛けのテーブル席ふたつがぎゅう詰めになっている。最奥のテーブルに相席させていただいて「からあげ丼」を注文。
とろとろの卵とだし汁がたっぷり。ご飯の中には驚くほどたくさんの唐揚げがごろごろと混じっている。見目麗しく、すこぶる美味い。その上、安くてボリューム満点。
烏丸通を西側に渡って、『ユニオン』(1953年創業の喫茶店/外観・内観)で少し時間をつぶしてから『omo』(森田元子氏の和装店/外観)で凌子さんと合流。続いて『三浦清商店(みうらせいしょうてん)』へ。白生地の販売と染め・悉皆(しっかい)の店。帯揚の染めをオーダー。
先ずは白生地を選ぶ。シンプルかつ大胆なストライプ調の織の2種。色見本帳を何冊か拝見して、それぞれの色を決める。
小一時間で発注完了。ほんの小さな買い物にも関わらず、とても親切丁寧に対応していただいたことに恐縮し、感動する。
『総屋(そうや)』(友禅)と『SHINA』(『誉田屋(こんだや)』(帯)の奥にある永澤陽一氏プロデュースの雑貨店)を覗いてから『紫織庵(しおりあん)』(川崎家住宅)へ。大堀造に洋館をくっつけたユニークな住宅(外観・洋館内部)。1926年築。現在は襦袢の展示販売施設として公開されている。
建物はふたつの庭を取り囲むように配置されている。広縁と庭を隔てる大きな引戸には大判の波打ちガラスが用いられており、これは建設当時から一度も割れずにそのまま残された貴重なものであるとのこと。
町家にもこんなに開放的なスタイルがあったのか、と興味深く拝見した。レトロ襦袢のコレクションも堪能。
堀川通まで西進。『岡重』(おかじゅう/友禅・雑貨/外観)で洒落衣復刻文様柄・鯛の風呂敷をゲットしてから東へ戻り、年の瀬の『錦市場(にしきいちば)』を歩いてみる。
つい嬉しくなっていろいろと買い物したくなったものの、どうにか思いとどまる。『錦 そや』(豆腐料理)で夕食。接客も行う料理長氏はちょっとびっくりするくらいに覇気のない人物だったが、腕は悪く無さそうだ。料理はさっぱりと上品な味付けに手が込んだ盛り付けで、そのわりにあまりに安い。いろいろと心配な部分はあったが、客としては十二分に満足させていただいた。内外装のデザインは杉木源三氏(スペース)。市場の賑わいとは対照的な簡潔さがいい。
凌子さんを三条で見送ってから祇園へ移動。ほぼ10年ぶりに『It's Gion Duex』へ。水谷光宏氏(クル)デザインのバー。オープンは1995年。柔らかい光を放つ楕円のFRP壁に包まれると、だんだんと重力が無くなってゆくような心地がする。白川沿い(中央の建物2階が『It's Gion Duex』)も随分雑然としてきたが、この店の風景は相変わらずで安心。
と、思ったらどんどん席が埋まって騒がしくなったので、河原町まで引き返して京都BAL裏手の『LOOP』に行ってみた。辻村久信氏(辻村久信デザイン事務所)デザインのバー。1999年オープン。こちらへ伺うのは初めて。床壁天井が大胆な角Rで繋がってカウンターへと続くアルミ張りの空間。凄い納まり。地下2階であることを忘れるような賑わい。そして激しくリーズナブルな勘定に驚いて、この日の行程は終了。
かならずしも“いけず”ではなかったりするのが京都の奥深さ。