3/7。矢来能楽堂で『日本の伝統芸能絵巻』を見てから神楽坂を下って『龍公亭(りゅうこうてい)』へ。1889年に『あやめ寿司』として開業。1924年の改築時に2Fを『龍公亭』とし、その後全フロアを中国料理店に。現在4代目が店主を務められているとのこと。2007年にビルの建て替えに伴い一時閉店。その間にheads(山本宇一さん)プロデュース、Kata(形見一郎さん)デザインによる姉妹店『SO TIRED』が新丸ビルにオープン。『龍公亭』は2008年6月にリニューアルオープンした。
白く塗り潰された煉瓦調のファサードに黒いフレームの開放的なガラススクリーン。大きめの自動ドアから店内へ入ると、レジカウンターのすぐ手前にデザートのショーケースが置かれている。アイドルタイムを廃し、カフェとしての営業にも力を入れている模様。フロアは最奥にキッチンを備えた1Fと、神楽坂を見下ろすテラスのある2Fに分かれている。この日は1F中ほどのベンチシートへ。見渡すと『SO TIRED』と同じ三方の競演となった店構えのそこかしこに、それらしいディテールが見られる。特に階段脇のカラーガラスのスクリーンは、姉妹店の記号、と言った趣だ。
赤と銀による力強い構成が印象的なグラフィックデザインを手掛けたのは、なんと松永真氏。上の写真はメニュー表。裏面にはローマ字ロゴとイラストが。
蒸し鶏のネギ・ショウガ風味、中国野菜の海老味噌炒め、カニ玉に酢豚。どの味にも尖ったところが無く、ホっとするようなやさしさと安心感がある。
そしてチャーハンの食感の素晴らしいこと。まさにザ・スタンダード。甘さ控えめの中国茶あんみつにマンゴープリン、フルーツソースと相性抜群の杏仁豆腐も美味しくいただいた。サービスを含めどこを取っても至ってさりげなく、それでいて質の高い、新しい老舗。虚勢と厚化粧に彩られた神楽坂という街の真ん中にあって、実に地に足の着いた爽やかな印象の店だった。『SO TIRED』も含め、またぜひお伺いします。
龍公亭/東京都新宿区神楽坂3-5/050-5535-3972
11:00-22:00LO(金23:00LO)/年中無休