8/17。上野・鈴本演芸場で『第20回 納涼名選会 鈴本夏まつり 吉例夏夜噺 さん喬 権太楼 特選集』。柳家喬之助師匠で『寄合酒』、三増紋之助師匠の曲独楽、柳亭燕路師匠で『だくだく』、ロケット団の漫才、古今亭菊之丞師匠で『片棒』、柳家甚語楼師匠で『狸賽』、鏡味仙三郎社中の太神楽、桃月庵白酒師匠で『佐々木政談』、仲入り、柳家小菊師匠の俗曲、柳家さん喬師匠で『木乃伊取り』、林家正楽師匠の紙切り、柳家権太楼師匠で『佃祭』。
燕路師匠は間抜けな登場人物ばかりのナンセンス極まりない噺を軽快に。菊之丞師匠は祭り好きの息子の場面だけをたっぷり。からくりの動作が最高。権太楼師匠の『佃祭』は期待を遥かに上回る素晴らしさ。多くの登場人物がそれぞれ魅力的に描かれ、それでいて全体の印象がちっとも重くならない。賑々しく、心を浮き立たせる。
8/18。お江戸日本橋亭で『第27回 オリンパスモビー寄席 春風亭百栄独演会』。春風亭ぽっぽさんで『ん廻し』、百栄師匠で『引っ越しの夢』、米粒写経の漫才、百栄師匠で『午後の審理』、仲入り、百栄師匠で『尼寺の怪』。
米粒写経が凄い。右翼とオタクが機関銃を打ち合うような掛け合い。こんな芸が見られるのが生の有り難いところ。百栄師匠の『午後の審理』は暴走するエロ妄想とキツい風刺の新作。こうした挑戦は今後もぜひ。対照的に前後の古典は至って馬鹿馬鹿しく長閑。師匠ならではのとぼけた風合いがほのぼのとして暖かい。
8/23。有楽町・よみうりホールで『立川志らく・林家たい平 二人会』。立川らく兵さんで『洒落小町』、たい平師匠で『青菜』、仲入り、翁家勝丸さんの太神楽、志らく師匠で『子別れ』。
らく兵さんから大いに笑う。こうした大きめの会場に向いた落語家さんかもしれない。たい平師匠の『青菜』は実に丁寧でくすぐりどころ満載。サービス精神のなんと旺盛なことか。お腹痛い。次が仲入りで命拾いした。志らく師匠の『子別れ』は亀吉以上に熊五郎とお光のふたりが可愛らしい。ラブコメとしての普遍性が高純度で抽出された素敵な高座。
8/28。人形町・日本橋社会教育会館で『市馬落語集』。柳亭市也さんで『道具屋』、柳亭市馬師匠で『お化け長屋』、仲入り、市馬師匠で『居残り佐平次』。
『居残り佐平次』の独創性に驚嘆。この佐平次は極めつけにドライな悪人だ。それまでのナンセンスな展開と、市馬師匠一流の明朗な口調が、サゲの恐さをより一層際立たせる。市馬師匠のダークサイドを垣間見たような気がした。『お化け長屋』も素晴らしかったと思うけど、おかげで吹っ飛んだ。
8/29。吉祥寺・前進座劇場で『寄席「噺を楽しむ」その三十八 納涼寄席 桂南光 米團治 ふたり会』。桂二乗さんで『子ほめ』、桂米團治師匠で『掛け取り』、桂南光師匠で『花筏』、仲入り、米團治師匠で『高津の富』、南光師匠で『あくびの稽古』。
たっぷりを二席ずつ。米團治師匠の『掛け取り』はオペラ根多を織り込んで賑々しく。初めて見た『高津の富』はサゲが可愛らしく控えめで魅力的な噺。大阪の風景が高座に浮かぶような好演。南光師匠は『花筏』が素晴らしいのなんの。提灯屋の徳さんと千鳥が浜がクラマックスに向けて次第に追い込まれてゆく様子が鮮やかな場面転換とともに小気味良く描かれる。『あくびの稽古』は極めつけに明るく軽妙に。お腹いっぱいの贅沢な会だった。