8/6。乃木坂・ギャラリー間で『カンポ・バエザの建築』。スペインの建築家、アルベルト・カンポ・バエザ氏はヤギにとって古くからの心の師匠的存在。簡潔な展示にやや物足りなさは残ったものの、ノーチェックだった近作をいくつも拝見できたのは有り難い。扱う空間のサイズは大きくなっても、作風は相変わらずミニマルなまま。そこを満たす光はますます詩情を豊かにしている。
同日、赤坂見附・ニューオータニ美術館で『謎のデザイナー 小林かいちの世界』。京都の図案化・小林かいちが大正後期から昭和初期にかけてデザインした絵葉書・絵封筒を一堂に集めた展覧会。ひとつひとつの作品はほんのちいさなもの。しかし木版で制作された精緻な画面が極めて饒舌に語りかける。和洋をひとつの世界観に束ねるかいち独特のセンスは今なお斬新で、そのクールな描線には生き生きとした力が漲っている。終わってみれば見応え十二分の重厚な展覧会だった。
同日、赤坂見附・オカムラデザインスペースRで『透明なかたち』。建築家・妹島和世氏、構造家・佐々木睦朗氏、美術家・荒神明香氏によるインスタレーション。厚さ3mmの透明アクリルの曲面パネルが組み合わさって自立し、迷宮的な空間が現れる。薄い紙で出来た押し花のような造花がパネルをなぞり、時折その内側に浸透しながら、境界の存在を一層曖昧なものにしてゆく。自分自身までが幻想の中に溶けてゆくような、不可思議な感覚。
8/8。ギンザグラフィックギャラリーで『ラストショウ:細谷巖アートディレクション展』。1Fに1950年代から90年代にかけての代表的なポスター作品が、B1Fには過去の細谷氏の発言、記述に新しくビジュアルを組み合わせたパネルがずらり。2006年の『クリエイターズ』展以来久しぶりに拝見した初期のポスターは、やはり強烈だ。『Oscar Peterson Quintet』が19歳、『勅使河原蒼風展』が20歳の頃の作品。骨太とはこういうことか。B1Fの展示では1956年の日宣美展出品前夜の様子を書き留めた文が心に染みた。デザインと青春。
同日、銀座・ギャラリー小柳で『石上純也+杉本博司』。両氏の建築作品を紹介する写真と模型、ドローイングなどの展示。美術家・写真家である杉本博司氏の建築作品を初めてまとまったかたちで見ることができた。地形を読み取り宇宙と繋がるランドアート的作風と、ディテールに集中することで一点突破する作風の対比が興味深い。石上純也氏の作品については、先ずは実物を拝見しないと。
8/14。上野・東京国立博物館で『染付 - 藍が彩るアジアの器』。中国、ベトナム、朝鮮、日本の染付の歴史を概観。スペースは平成館の特別展示室第1室と2室。いつもの特別展の半分なので余裕で見終わるかと思いきや、あまりの見応えにすっかり足が棒になった。染付の技術は元の時代の景徳鎮でいきなりほぼ完成の域に達している。『青花蓮池魚藻文壺』(せいかれんちぎょそうもんつぼ/1300年代・中国)の鮮やかな発色と、生命感あふれる筆致に思わず見入った。ベトナムの染付の奔放で力強い描線、朝鮮の染付の余白を生かした素朴美にも心惹かれる。それにしても1700年代後半以降の鍋島など、日本の染付に散見されるクールなグラフィックセンスはちょっと異様なほどだ。中でも『染付連鷺文三足皿』(そめつけれんろもんさんそくさら/1600-1700年代・鍋島)の洗練性は頂点にある。『染付子犬形香炉』(1800年代・三川内)のスーパーリアルな造形と愛らしい表情も忘れ難い。
8/21に六本木・AXISギャラリーで見た『ナインアワーズ展 - 都市における新しい宿泊のカタチ』についてはこちら。
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