9/10。夕刻『Cafe Ring』銀座並木通り店のプレオープンに伺った。名前はカフェだがお茶やコーヒーの店ではなく、プラチナとダイヤモンドをメインに扱うジュエリー店。内外装を手掛けたのは野井成正デザイン事務所。場所はプランタン裏の並木通り沿い。隣にはワークショップ108(西野和宏氏)デザインの『蕪屋』(1994)、斜め向かいには設計事務所imaデザインの『marimekko』銀座(2009)がある。店の様子のより良く分かる写真はこちらで。
明るいグレートーンのモザイクタイルで仕上げた内外装をサッシュレスのガラススクリーンで隔てた店構えは実に開放的だ。照明を埋め込んだボーダー状の天井造作のラインと、手前右側に2本ズラして配置された柱形ショーケースラインが縦横に連なり、店の奥行きを強調する。
店内の動線は左右の壁沿いに置かれた楕円形のカウンターショーケースによって滑らかにかたちづくられており、そのまん中から微妙にズレた場所にふたたび柱形のショーケースが1本そそり立つように登場する。この最少限の破調の要素が、せせらぎの中に打たれた杭のように、店内の移動にゆらぎをもたらし、眺めの起点となる。
上の写真はカウンターショーケースとその内部照明のディテール。回転可能な円いステンレスミガキのプレートは三本の柱で支えられており上下にも動かすことができる。このユニットがカウンター腰に内蔵されたハロゲンランプの光を商品へと反射する仕組み。調整にはやや手間取るかもしれないが、LEDなどでまんべんなくギラギラと照らすよりもずっと見た目に軽やかで品がある。
細かなアクリルのディスプレイ什器やミラー什器も野井さんのデザイン。これらがまた機能的で、いい佇まいなのだ。なんたる繊細さとクオリティ。
中央の柱形ショーケースには野井さんがデザインを手掛けたプラチナのリングが数種展示されていた。プレートを半円形に切って起こしただけのかたちが至ってシンプルで可愛らしい。野井さんもお気に入りとのことだった。
店構えから細部に至るまで、野井デザインならではの簡素の美に貫かれた快作。私たちもここまでの仕事を目指さねば。まだまだ精進。