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life of "love the life"

都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2009年11月

11/4。六本木・AXISギャラリーで『三保谷硝子店 101年目の試作展』。イシマル、倉俣史朗との協同などで有名な三保谷硝子店と16名のクリエーターによるガラスの試作展。個人的に最も印象深かったのは八木保氏によるルーチョ・フォンタナへのオマージュ。単純明解で力強く、群を抜いて美しい造形。しかしフォンタナの名をキャプションにはっきりと記載していなかったことが気になる。

同日、乃木坂・ギャラリー間で『隈研吾展 Kengo Kuma Studies in Organic』。夥しい数のスタディ模型が会場を埋める様子に圧倒された。興味深く拝見したのはグラナダのパフォーミングアーツセンターと浅草文化観光センターの模型。特に浅草はこれまでCGから想像していたイメージよりもずいぶん楽しげな空間が期待できそうに思われた。地元住民としては少し安心。

11/6。恵比寿・山種美術館で『速水御舟 - 日本画への挑戦 - 』。速水御舟の実作をまとめて見たのは初めて。日曜美術館で取り上げられていたような、超絶技巧の画家ではないことは一見して明らか。それでもいくつかの突出した作品は聞きしに勝る凄みを感じさせる。マットゴールドの地に厚塗りの椿を描いた『名樹散椿』の迫力。特に蕾の描写の生々しいこと。『炎舞』の深く微細なグラデーションには目を奪われた。それらに勝るとも劣らない強い印象を残したのが別室にあった『墨牡丹』と『白芙蓉』。花の重さまで感じられるくらいの生命感漲る墨画彩色。これもまた御舟のひとつの到達点。山種美術館はまだ新しい建物に運営が慣れていないせいもあってか、応対に手抜きや刺々しさが目立つ。この様子だと休日はますます辛いだろう。頑張っていただきたい。

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11/28。横浜本牧・三渓園内三渓記念館で『原三渓と美術』。三渓園は三方を高台に囲まれた大池を中心に、様々な古建築を移築点在させた庭園。人工の鄙なる風景はいかにも茶人好みの美しさだった。外から覗くだけではあったものの、京都二条城の楼閣を移築した『聴秋閣』の内部(写真1234)を見ることができたのは幸運だ。遊び心に溢れた小さな宝石のような建物。持って帰りたかったなあ。また、紀州徳川家の別荘であった『臨春閣』(こちらも外から覗くだけ)の簡素美も見事なもの。特に水屋まわりのコンポジションにはシビれた。展覧会での作品は以前に別のイベントで拝見したことのあるものが多かったが、コレクター・三渓の一貫した美意識の伝わる内容が印象的だった。例年、夏には『臨春閣』と『白雲邸』に入ることが出来るらしい。また行かねば。

2009年12月23日 22:00 | trackbacks (0) | comments (4)
comments

水屋やら書院やらもろもろ遊んでますよね本当に
この手の建築ってかなり盛りだくさんで一見ごちゃごちゃになりそうなんだけど
なぜかできてみるとしっくりくるんですよね
着物やその他色々と合わないだろうと思う組み合わせでも
不自然じゃないんですよね
日本人がもってる微妙なバランス感覚がなせる業なのか・・・
昔の人が偉大なのか? きっと今の人も一切合財気にしなければ
同じ才能があるかも知れませんね
無に有を求めて
極力省くデザインが得意な日本人なら
きっと盛りだくさんでも余白のとり方が絶妙なんじゃないかな???

posted by: kiyo : 2010年01月05日 12:32

>kiyoさん
いやー現代人としては残念ですが、やっぱり「昔の人は偉大」だと思うんですよ。特に三渓園全体を見ると、庭にしても建物にしても美術品にしても、結局三渓とその周りの人々の知識とセンスが卓越しているからこそ、一見無造作に寄せ集めたようでいてまとまりがある。今の日本人にこれだけのスケールとクオリティを両立できるプロデューサーが居るかなあ。

posted by: 勝野+ヤギ : 2010年01月06日 09:00

ランドスケープという観点から考えたらいないかもしれませんね
時間がゆるしたのかもしれませんが
微妙なこだわりが随所にあるわりに鼻につかないですからね
時間が経過してさらにスケールアップするのもすごいですよね
今きれいと言うよりいつまでたっても・・・という具合に・・・
50年100年先を見越したレイアウトだったり庭だったりしますからね

posted by: kiyo : 2010年01月07日 10:01

>kiyoさん
空間的にも時間的にもスケールがでかい。ホントにそうですね。考えると遠い目になっちゃいます。内装や建物も、聴秋閣とかほとんど過剰なくらいに遊びまくってる。なのに可愛くて、かつ凛とした佇まいがある。それに引き換え建築関連誌をめくっているとがっかりすることが多いのなんの。今の時代にどうにか昔の人に恥ずかしくないものが作れるよう、まずは自分の足下から耕してゆこうと思う今日この頃です。

posted by: 勝野+ヤギ : 2010年01月07日 16:27

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