昨年12/27。須賀さんご夫妻にご同行いただいての大阪市内視察。先ず目指したのが『バーンホーフ』。2003年オープンの自家焙煎珈琲店。マスター氏は田口護氏(バッハ)の指導を仰いだ人物と聴く。
JR大阪環状線を野田駅で降りて高架脇をしばらく福島駅方面へ。高速道路との立体交差を見上げつつ信号を渡ると、高架下右側に『バーンホーフ』のエントランス。白壁にスチールサッシを嵌めた店構えはすっきりとして落ち着きがある。向かって左側のガラス越しに焙煎室。手前のワークカウンターではスタッフがハンドピックに勤しまれていた。右側には「B」の字を象った正方形の看板。中央の自動ドアから店内へ。
左にレジカウンターと焙煎室、右に物販スペースを見ながら奥へ進んで客席へ。通路を挟み左側にはゆったりとしたカウンター席があり、その突き当たりにキッチン。右側にはベンチシート式のテーブル席が一列にずらり。至って明快なフロア構成となっている。天井は割合高い。オフホワイトの箱に飴色のカウンターや棚などの木造作、黒レザーのベンチシートに間接照明を配した内装も、店構え同様さりげなく質感は高い。
ブレンドと栗のケーキ(上の写真)、パナマとフレンチトーストを注文。珈琲は鮮やかな豆の風味とバッハ系らしいキレが見事なペーパードリップ。ケーキ類の味もなかなかのもの。若いスタッフの明るい応対に気分は晴れやかだ。趣味の良い設えと申し分ないサービス。これほどのカフェには滅多にお目にかかれるものではない。近所にあったら確実に通うだろう。野田周辺の方々が心底うらやましい。
バーンホーフ/大阪府大阪市福島区吉野1-14-8/06-6449-5075
10:00-20:30/不定休
地下鉄で四ツ橋へ移動して四ツ橋筋を北上。新増一丁目南の交差点を左折し、しばらく行くと右手の高層ビル1Fに『日月餅』新町店の控えめな店構えが現れる。ISOLATION UNIT(柳原照弘氏)が内外装デザインを手がけた和菓子店。オープンは2008年。
大きな木製サッシの引戸から店内へ入ると、フロア中央にコンクリート製の大テーブル。壁面はモルタルで仕上げられ、単一素材から掘り出したような空間となっている。商品ディスプレイに接客、イートインなどの主な機能要素は大テーブルひとつに集約されており、小さな空間ながら最少限の要素が余裕を持って配置された様子に窮屈さは無く実に潔い。要所に見られる床や躙口を彷彿させる設えは空間に象徴性と華やぎを与えている。ただミニマルなだけには終わらない奥行きを感じさせるデザインだ。
黒豆大福とラズベリー大福(上の写真)、抹茶ぜんざいをいただく。特に黒豆大福が秀逸。次回は草餅と、品切れだった塩大福をいただいてみよう。
器や備品のセレクトも含め、装いには一切の隙がない。引き替えに運営上苦労なさりそうな点はいくつか見受けられるが(収納の無いWCなどなど)、目先の実利に流されず見栄にこだわるのも上方らしい商いのやり方だ。ぜひとも頑張って維持して頂きたい。
日月餅 新町店/大阪府大阪市西区新町1-17-17/06-6536-0805
10:30-19:00/無休
下って長堀通りを西へ。西大橋の交差点でなにわ筋をさらに南へ。西労働基準監督署前の交差点をさらに西へと進み、ひとつめの信号を左折すると『ヴェーク』にたどり着く。女性オーナーがほぼ一人で切り盛りする2008年オープンの自家焙煎珈琲店。こちらもまた田口氏直系の店で修行をなさった方とのこと。焙煎室を左に見ながらドアを開けると右側に数席のカウンター。左側奥にテーブル席がいくつか。小さなフロアで焼き菓子までをこなす様子はいかにも手狭で大変そうではあるが、白い箱にナチュラルな木造作の内装は明るく清潔に保たれている。
ブレンドとドミニカを注文。柔らかな輪郭の中に芯の通ったところを感じさせる珈琲。特に浅煎りのドミニカの風味豊かさには驚いた。これは他のメニューもさぞかし、と大いに期待はふくらんだものの、さすがにこの日は水分を採り過ぎてお腹いっぱい。またの機会とさせていただくことにした。
ヴェーク/大阪府大阪市西区南堀江2-13-16/06-6532-7010
9:30-18:30/火休
堀江の変貌ぶりを見ながら地下鉄の難波駅へ。黒川勉氏デザインの『ローリーズファーム』が健在で嬉しい。O-CATはもうダメらしいと伺う。梅田からJRで垂水まで。梅田駅周辺の開発ラッシュの凄さには驚愕した。ヒルズとミッドタウンとサザンテラスをいっぺんに作ってるみたいだ。景気いいじゃないか大阪。これがとどめとなってしまわないことを心から祈る。
そして『ふつうの家01』に初の宿泊。使われている様子もやっぱりふつうだ。必要十分。これで良い。