1/9。大手町・日経ホールで『桂春團治 春風亭小朝 二人会』。林家まめ平さんで「転失気」、桂吉坊さんで「千早ふる」 、桂春團治師匠で「祝いのし」 、仲入り、翁家勝丸師匠の大神楽、春風亭小朝で「中村仲蔵」。
上方と東京、双方の美しい言葉の響きを堪能させていただいた。春團治師匠の老いてなお粋(すい)な佇まいに思わず背筋を正し、時折見せる無邪気な笑みに癒される。「祝いのし」は本当にいい根多だ。小朝師匠は毒のある小噺を巧みにはさみながら、流れるような構成で見せる。談志師匠を彷彿させるイリュージョン性。良い席で見ることができて幸せ。小朝師匠周辺の方々は落語マニアからはなぜか避けられることが多いようだが、勿体ないことだ。
経団連、JA、日経が連なる複合ビル3Fにある日経ホールは白木丸太の壁造作が美しい。東山魁夷の緞帳も良い取り合わせ。ただ、この会場ならではの客層なのか、身なりの良さのわりにマナーの悪い中高年が目についた。日本経済の中枢に近いところはおそらくこの辺の方々が占めていらっしゃるのだろう。
1/20。みたか井心亭で『寄席井心亭 百七十六夜』立川志らく師匠の会。立川らく太さんで「ざるや」、立川志ら乃さんで「壺算」、志らく師匠で「たぬき」、仲入り、志らく師匠で「富久」。
荒んだキャラクターが板に付いて高座に凄みを増しつつある志ら乃さん。実に腹黒く、かつ能天気で魅力的な「壺算」だった。志らく師匠の「たぬき」は子狸の脊髄反射的な言動が可笑しく、実に可愛らしい。そして素晴らしい「富久」。酒癖が悪くて欲深く、間抜けでお人好し。俗人の業を全部背負い込んだがゆえに誰にも憎まれない幇間の久さん。単純なようで複雑な人物像と、それをとりまく境遇を、志らく師匠は極めて自然に造形してゆく。どんでん返しのサゲに心から「久さん良かったね」と言いたくなる。
1/27。三鷹市芸術文化センター星のホールで『立川談春独演会』。立川春太さんで「千早ふる」、談春師匠で「百川」、仲入り、談春師匠で「包丁」。
「百川」を談春師匠で見るのは初めて。キュートで怪しい百兵衛さんが独特。居るだけで笑いがこみ上げる。でも実際側に居るとちょっとヤだな。「包丁」を談春師匠で最初に拝見できたのは幸運。悪巧みあり、啖呵あり、与太郎キャラあり。水を得た魚、とはまさにこの高座での師匠のこと。そして脱力を誘いつつも実に切れ味鋭いサゲ。それぞれに業の塊のように思えたアクの強い登場人物たちが、ここに来て見事に愛すべき人々へと転化される。粋だ。