3/21。ヤギの京都移転前日。完全移転はまだしばらく先という事情でひとまずはこっそり立つつもりにしていたが、ウヱハラ夫妻と細川夫妻が急遽壮行会をこしらえてくださるとのこと。有り難や。
場所はアルザス料理店『ジョンティ』。浅草橋駅から江戸通りを少し北上。柳橋二丁目の交差点を左折してしばらく行くと、青の外壁に黄色のテントを張り出した二階建てが右手に現れる。二間ほどの間口の右脇にあるドアから店内へ入ると正面に階段。左手にテーブルが並び、最奥にブラッスリーとしてはやや小振りなキッチンを備える。急な階段を上がると若干のパントリーが突き当たりにあり、残りのフロアはテーブル席。1Fは白い壁に赤いテーブルクロス、2Fは赤い壁に青いテーブルクロス。どちらの内装も至って簡素ながら、フロアごとに異なる雰囲気を上手く演出している。この日は2Fでゆっくりと食事を楽しませていただいた(以下、写真はクリックで拡大)。
注文は細川夫妻にほぼおまかせ。エスカルゴ、水タコのマリネ、豚足と豚耳のテリーヌ、その他諸々。個人的にはシュークルートやアルザス風パスタなどが印象深い。独特の酸味をベースにした深い味わい。デサートもまた素晴らしい。
なるほどドイツ料理に似た部分もあるが、むしろ未体験の鮮やかな美味しさに驚きっぱなし、と言った方がいい。綺麗な盛り付け、さらにはこれまた独特の重厚さを持つアルザスワインも宴を大いに楽しく盛り上げてくれた。
未知のメニューがまだまだたくさんある。京都と東京を往き交う楽しみがまた増えた。
ジョンティ/東京都台東区浅草橋2-5-3/03-5829-9971
11:30-14:00LO,18:00-21:30LO(土日祝12:00-15:00LO,18:00-21:00LO)/水休
3/16。大門で打ち合わせ、恵比寿でうどん店視察の後『ヴェルデ』でひと休み。駒沢通りをしばらく代官山方面へ。恵比寿南交差点を過ぎた右側にある自家焙煎珈琲店。開業は1981年頃と聞くが定かではない。この十数年のあいだに幾度となく前を通っているにも関わらず、伺うのはこの日が初めてだった。
ビルの1Fからくすんだグリーンのテントを持ち出したガラス張りの店構えは開放的ではあるものの一見素っ気無い。テントの下に掲げられた木製看板にはポットの絵と「自家焙煎」、「ヴェルデ」の文字。近づいて店内を覗くまで喫茶店なのか豆売り専門なのかはっきりとは分からない。
駒沢通り側中央の入口ドアから店に入ると右手前にテーブルがひとつ。そこから奥へとカウンター席が連なる。左手にはガラス面とのあいだに若干の隙間を挟んでビル構造の大きな柱があり、表から比較的良く見えるその隙間の駒沢通り側に焙煎機が鎮座し鈍い光沢を放つ。飴色に変色した壁と天井から判断するに、少なくとも20年前後を経た店であることは間違いない。棚や間仕切りは暗色の木造作。階段状に折り上げられた天井を除けば装飾的な要素のほとんど見当たらない空間は開業当時にはさぞかしクールだったろう。客層は年代も性別も人数もまちまちで、近くの人々が気軽に利用されている様子が伺える。
柱の奥側にいくつか並んだテーブル席のひとつに落ち着いて軽めのブレンドとコスタリカ、レアチーズケーキを注文。珈琲はネルドリップ。特に素晴らしかったのが中深煎りのコスタリカだ。甘味と苦味と芳香、そのクリアなこと。軽めのブレンドは驚くほど酸味が少なく、豆の香りが爽やかにひろがる。実に美味い。
店構え同様、マスター氏とスタッフ氏の応対もクールで良い。恵比寿にこんな都会的な店があることをもっと早くに知っておくべきだった。他のメニューもぜひいただいてみなくては。
ヴェルデ/東京都渋谷区恵比寿西1-20-8/03-3496-1692
10:00-20:00(日祝13:00-)/無休
3/5。人形町で落語の後は『あっぷる』へ。1982年開業の喫茶店。炭火焙煎で有名な神戸・萩原珈琲の豆を使用している。人形町の交差点から日本橋方面へ歩くとほどなく煉瓦壁にくすんだグリーンの木製ドアを両開きに開け放った間口2間ほどのちいさな店構えが現れる。ドアの上に掲げられた木地の看板には達筆過ぎてほとんど判読できないアルファベットの白いカリグラフィ。道路から少し引いた位置にもう一枚ある木製ドアから店内へ。
内装は白い漆喰調の壁、天井に暗色の木造作をあしらったもの。細部の意匠は控えめで、すっきりと引き締まった印象の空間となっている。テーブル側からカウンター側へと曲面を描く天井が特徴的だ。古材風の装飾梁やエッチングガラスの用い方は往年の松樹新平スタイルを彷彿させる。ご当人が手掛けられたのかどうかは定かではない。入って右側手前にケーキのショーケースとレジ。その向こうにカウンター席があり、突き当たりの壁越しにキッチンがあるのが伺える。通路を挟んで左側はテーブル席が並び、壁にいくつか嵌め込まれたステンドグラスを間接照明が照らし出す。
遅い時間には大抵年配のご婦人が一人で店を切り盛りされている。一番手前のテーブル席に落ち着いて深煎りブレンドとマンデリンを注文。
丁寧にペーパードリップされた珈琲もまた店の雰囲気同様に押し付けがましさが無く、それでいてピンと筋の通った味わいがある。この日供されたカップはパープルの小花模様。おそらく勝野の着物の色に合わせて下さったのだと思う。さりげなく、嬉しくなる演出。毎日2、3種類の自家製ケーキもまたこの店の大きな魅力となっている。黒糖とピーカンナッツのタルトとは意外な組み合わせに思われたが、これが実に上品にマッチしており珈琲にも良く合う深みのある美味しさだった。
夜の人形町にあって極めて貴重な骨太の喫茶店だ。
あっぷる/東京都中央区日本橋人形町3-4-13/03-3639-1445
10:30-22:30(土12:00-22:30)/日祝休
2/22。ギンザグラフィックギャラリーで『田中一光ポスター 1953-1979』を見た後、ハナエモリ銀座店の脇を通り掛ると、こんなウィンドウディスプレイが。
これはまさしく。展覧会に合わせた計らいだとしたら実に粋ではないか。
2010年4月1日付でヤギタカシが京都造形芸術大学の芸術学部環境デザイン学科に専任講師として着任しました。主にインテリアデザインコースを担当します。ここ数年のあいだ、誰もお呼びでないのは重々承知で細々と勝手に続けられてきたlove the lifeの研究活動にも、これを機会により深みを増した新しい展開がもたらされるのではないかと期待しています。実り多い挑戦となるよう、ヤギ、勝野ともども、ますます大手を振って明後日の方向へと突き進んでゆく所存です。今後もlove the lifeへの応援、ご指導をいただければ幸せです。
2、3ヶ月中にlove the lifeはひとまず京都に拠点を移します。とは言え、インテリアと建築のデザインを中心に全国のあちこちで活動を展開してゆくことについては、これまでと変わりありません。現在ヤギはすでに京都に単身赴任中で、勝野はまだしばらく東京です。諸々落ち着きましたらまたあらためてご連絡します。
着任に先立ち親身にご協力を下さった須賀成人さんとタカマスヨシコさんにこの場を借りて心より感謝を申し上げます。いやホント、言い続けてみるもんですね。