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食べたり飲んだり : 乃木坂/六本木・展覧会とさかなのさけ

5/1。青山から乃木坂へ移動。国立新美術館(内観12/外観12)で『ルーシー・リー展』
陶芸家ルーシー・リーの活動をその最初期から晩年に至るまで丁寧に、膨大な物量で紹介した素晴らしい内容だった。元来のモダニストとしての感性と李朝陶器のフォルムからの直接的な影響とを改めて確認。それにしても美しい景色。
フロアに対してところどころ斜めに展示台が置かれた様子は一見するといかにも自由な印象を与える。それでいて実は作品をどの方向からも無理なく見せながら順路の整合性を確保した合理的なレイアウトとなっていた。展示デザインはどなたの仕事だろうか。

さらにサントリー美術館『和ガラス』。こちらはボリューム少なめでかなり渋い内容。江戸のセレブの暮らしに用いられたガラスビーズグッズの数々をまとめて見たのは初めてなので良し。

夕食は久しぶりの『さかなのさけ』へ。以下、写真はクリックで拡大。

とり肝レア焼、えび豆腐辛味炒、野菜サラダベトナム風、などの定番を除く料理名はすっかり忘れてしまったが、この日もおいしい料理を堪能。上品・繊細な素材と出汁の協奏。日本酒をちいさなグラスでいろいろといただけるのも楽しくて嬉しい。こちらのセレクトは店主氏におまかせ。

質は高く、財布に安心。六本木界隈にあってなんとも貴重な有り難い店だ。

さかなのさけ/東京都港区六本木3-8-3/03-3408-6383
18:00-23:00LO/日祝休,月不定休

2010年07月30日 19:00 | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 表参道・根津美術館

5/1。竹橋から表参道へ移動。根津美術館『国宝燕子花図屏風 琳派コレクション一挙公開』。2009年の新装開館以来、訪ねるのはこの日が初めて。建築デザインを手掛けたのは隈研吾建築都市設計事務所。以下、写真はクリックで拡大。

表参道突き当たりの外観は一瞬あれっ?と思うくらいに仮設倉庫風。しかし門を抜けた後、アプローチからの光景は見事だ。軒下のディテールのミニマルなこと。エントランス手前から見ても建物自体はやはり仮設倉庫っぽいが、薄っぺらい屋根を支える鉄骨柱まわりのラフな納まりを眺めるうちに、これは数寄屋なんだな、と納得。

竹集成材と砂岩、ガラスと鉄で出来たインテリアには、隈建築ならではの質感の高さと軽快さが存分に発揮されている。上の写真は1Fホールから展示室の方を見たところ。こちらは展示室手前からミュージアムショップの方を見たところ。こちらの写真左はミュージアムショップ手前の空間。その上階にあるラウンジ(先の写真右)には、ロゴデザインから着想したと思われる特徴的なかたちのベンチが並ぶ。これも竹集成材。

南東側の軒下をくぐって庭園へ。上の写真は庭先から振り返ったところ。この控えめな佇まいが建物を最も魅力的に見せる。こちらは南東側外観の近景。こちらはB1F茶室口からの見上げ。

広大な庭園はやや鬱蒼としており良くデザインされているとは言い難いものの、都心に居ることを忘れさせる野趣がインパクト大。上の写真は展覧会に合わせて咲き誇る燕子花。その向こうの池では親亀子亀が甲羅干し。さらに奥には古びた木の小舟が一艘

本館から離れ、庭園の樹々に埋もれるような姿で建つのが『NEZU CAFE』(ネヅカフェ)。手前から見ると平屋の体裁。地形を上手く利用して、裏手の地下レベルに車寄せなどの動線を隠している。ガラス越しには溢れんばかりの緑。和紙調のシートを通して店内には木漏れ日のような光が差し込む。食器類にはさりげなくエンボスで燕子花があしらわれていた。会計やサービス機能を一手に引き受けるカウンターは席数のわりに小さい。カウンター背後の扉類も和紙調シート張りなので汚れがちょっと心配。それにしてもこの贅沢な眺めの中で快適に一服させていただけるのはありがたいことだ。運営は大変そうだけど、ぜひとも頑張ってこのスタイルを守っていただければと思う。

展覧会は思いのほかこぢんまりしてはいたが、おそらく初見の『桜下蹴鞠図』(俵屋宗達工房の作と言われる)は大きな収穫だった。一見しておおらかで優雅。その実、構成といいタッチといい、極めて厳しく洗練されている。『夏秋渓流図』(鈴木其一)と『燕子花図屏風』(尾形光琳)もそれぞれじっくりと味わうことができた。凄いコレクションだなしかし。

2010年07月29日 18:00 | trackbacks (0) | comments (0)

ちょっといい風景 : 竹橋・高架下の鉄仮面

5/1。東京国立近代美術館から神保町方面へ移動の途中、竹橋ジャンクションで見つけた建物が妙に気になってパチリ。写真はクリックで拡大。

首都高5号池袋線高架下にあるおそらく倉庫と思しいちいさな2階建て(Google Maps with Street View)。錆びた鋼板葺きのファサードはまるで抽象絵画の佇まいだ。ロケーションも、部材の継目や窓のコンポジションも、実に申し分無い。

2010年07月28日 01:00 | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 建築はどこにあるの? 7つのインスタレーション

5/1。朝から展覧会をはしご。先ずは東京国立近代美術館の『建築はどこにあるの? 7つのインスタレーション』へ。門をくぐるとロビー脇の庭に最初の作品が。以下、写真はクリックで拡大。

『まちあわせ』はアトリエ・ワンによるインスタレーション。竹でできた大型動物の一群が竹橋でまちあわせ。上の写真はロビーとショップのあいだから門の方を見返したところ(門側から見た写真)。楽しく軽快でチャーミングな佇まいに思わず顔がほころぶ。芝生に落ちる影も美しい。

展示室に入るとすぐに出くわすのが中村竜治氏によるインスタレーション『とうもろこし畑』。か細い紙のフレームによる構築物。爪楊枝くらいの部材が接着剤でトラス状に繋がり、100立方メートルほどの塊となる(近景1近景2)。思わず目を疑うくらいに儚げで、それゆえ逆説的に強烈な印象を放つ作品。まるでリアルとアンリアルの大断層だ。その傍らのアントチェアには2006年の作品『クマ』がちょこんと置かれていた。こちらも紙製。

この展覧会で個人的に最も心を動かされたインスタレーションが中山英之氏の『草原の大きな扉』。その手法は1/3スケールの建築模型とそのドローイングを配置しただけの至って単純なもの。プロジェクトの内容は、ふたつのちいさな建物の片方(写真1写真2)にカフェの運営機能を、もう片方(写真1写真2)にテーブルやチェアを収納し、必要に応じて周辺の草原を客席として利用するというもの。シェルターとしての建築ではないオープンな場としての非建築。微妙なスケール感が相まって、不思議に心地の良い空間を味わうことができた。

より建築的な体裁でありながら、一層微妙で曖昧なスケールを感じさせるのが鈴木了二氏によるインスタレーション『物質試行 51:DUBHOUSE』(遠景近景)。模型ともインテリアとも家具とも捉えることのできる「建築の中の建築」。研ぎ澄ました切っ先を突き付けるような端正な空間性とシャープなディテール。

建設現場で見たレーザー墨出し器から着想を得たと言う『赤縞』(写真1写真2)は、レーザーが描く無数の平行線の中を人や物体が移動することで生まれる極めつけに抽象的で変幻自在なインスタレーション。展示室入口で貸し出されるオーガンジーの切れ端を使えば、より多層的で複雑な空間が現れる。これが内藤廣氏の作品だとは実に意外。

さらに菊地宏氏による『ある部屋の一日』伊東豊雄氏による『うちのうちのうち』(写真1写真2写真3)と作品が続く。過去にもコンセプチュアルで体験的な展示手法を用いた建築展を見たことはあるが、これほど明快に新作のインスタレーションのみを揃えた展覧会に出会ったのは初めてのこと。広大なフロアに作品はたったの7つ。贅沢だ。比較的オーセンティックな美術作品を扱って来た美術館までもがいよいよ彫刻や絵画だけの入れ物ではなくなりつつあることは興味深いし、その先鋒が建築であるのも面白い。

2010年07月27日 05:00 | trackbacks (0) | comments (2)

名言コレクション : 植木莞爾の言葉

物をつくるとか、デザインするということは、自分を表現することであり、インテリアデザインでは空間に自分自身の意味を与えることである。
意味を与えられた空間には場の意味が存在する。場の美しさは建築、インテリアの複雑さの中から見出す物であり、そこへ自分自身を投影することである。その調和までの、長い過程の中で美しい感覚が徐々に完成されてゆくのを見るのが私は好きである。
結果としてあらわれる場の美しさは、私の願望であり、私自身の思想、意思、現在の生活のすべてから構成される。場の美しさの追求は私の仕事の情熱となり、永遠のものとなる(植木莞爾)

「Kanji Ueki Works 1999-2006」(2006)より
発行:カザッポアンドアソシエイツ

2010年07月25日 04:00 | trackbacks (0) | comments (2)

都市とデザインと : 京都駅・マールブランシュカフェ

4/28。授業後、学校から京都駅へ。新幹線の発車時刻まで『マールブランシュカフェ』でひと休み。辻村久信デザイン事務所がインテリアデザインを手掛けた洋菓子店&カフェ(以下メニュー以外の写真はクリックで拡大)。

南北自由通路を八条側へとしばらく歩き、新幹線中央口のところで右折。エスカレーターを下ると近鉄名店街の入口右手のガラス越しに『マールブランシュカフェ』の客席が現れる。タイルと木材を使い分けた質感の高い壁、ぽってりと丸みを帯びた一人掛けソファが特徴的だ。エントランスは写真左手の通路を少し進んだところにある。

フロア中央にキッチンと物販カウンター。客席はそれを取り巻くように配置されている。上の写真はエントランス左側のガラス越しに見た客席。こちらは先程とは一転してスクエアなデザイン。薄く張り出したベンチシート、麻の葉のパターンを抜いたフェルト状のクッション、ファブリックに印刷を施し布団張りしたサインボードなどユニークなディテールが散りばめられている。

上の写真はフロア奥から先程の客席を見返したところ。ライティングはほぼ間接光、しかも主に下方からの照明で賄われている。テーブルの上に置かれた箱にはカトラリーやお手拭きなどがすっきりと納まっていた。

上の写真は同じ場所からエスカレーター側を見たところ。向こうに最初の写真のソファ席がある。この日いただいたのはフレンチトーストのセット。一緒に付いてきた濃茶味のラングドシャ「茶の葉」が美味しかった。赤い鱗紋の鉄瓶はこちらのオリジナル。

駅ビル施設内のカフェテリアとあって、全体に機能重視でざっくりとまとめられた空間ではあるものの、辻村デザインならではのディテールがそこかしこに散りばめられた楽しい店だった。カジュアルでいて落ち着きのある雰囲気が有り難い。今後は出張時の息抜きに大いに利用させていただこう。

マールブランシュカフェ
京都府京都市下京区東塩小路釜殿町31-1 近鉄名店街みやこみち
075-661-3808/9:00-LO20:30/無休

2010年07月14日 01:00 | trackbacks (1) | comments (0)

都市とデザインと : 白川今出川・慈照寺

インテリアデザイナーたるもの、京都に来たら真っ先に詣でるべき名所旧跡と言えば慈照寺(じしょうじ/銀閣寺)に他ならない。境内にある東求堂(とうぐどう)北東の一室・同仁斎(どうじんさい)は書院造最古の現存例。つまりは我が国におけるインテリアデザインとディスプレイデザインの原点を垣間見れる場所だ。そんなわけで4/27、春の特別公開を目当てに雨の中をバスで白川今出川へ(以下写真はクリックで拡大)。

庭までのアプローチ沿いにある銀閣寺垣(ぎんかくじがき/近景)。

銀沙灘(ぎんしゃだん/近景本堂南西から本堂南東から)と東山。

観音殿(銀閣)と向月台(こうげつだい)を銀沙灘越しに見る(近景)。

東山から見た境内と京都市街。

そしてこれが東求堂(遠景近景)。残念ながら内部の撮影は不可。同仁斎の心地良い狭さと簡素さ、その付書院の窓からの眺めに思わずじーんと来た。この日のディスプレイには君台観左右帳記の写しも。こちらは裏から見た東求堂。左手に小さく見える「同仁斎」の扁額は足利義政筆とのこと。

庭木越しに見た観音殿(遠景近景)。こちらはその裏手に置かれていた屋根の杮葺(こけらぶき)の原寸カットモデル。

東山麓の斜面はうねる苔の森。素敵なテクスチャー。こういうのを「触景」と呼ぶのだろうか。

センス良く人手の掛かった庭を介してひと繋がりになる風景とインテリア。やはり本物はいいな。秋の特別公開も見に来よう。

東山慈照寺

2010年07月06日 22:00 | trackbacks (0) | comments (2)
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