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食べたり飲んだり : 下鴨・茶寮宝泉

7/17。夕刻前に下鴨方面へ。『茶寮宝泉』へ初めて伺った。和菓子店『宝泉堂』の運営する甘味喫茶。『宝泉堂』の創業は1952年。『茶寮宝泉』の開業年は不明。以下、写真はクリックで拡大。

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下鴨本通を北上し、北大路との交差点を東へ。最初の信号を過ぎたところで右折して住宅街を少し南下すると、背丈より下に木板を張り白木丸太の間柱を配した品の良い土塀が右手に現れる。土塀をさらに右にまわり込むと『茶寮宝泉』の立派な門が登場。上の写真は暖簾をくぐって玄関左手を見たところ。苔と紅葉の小庭(下の写真右)を左に見ながら敷石のアプローチ(下の写真左)を玄関へ。建物は個人邸宅を改装したもので築80年ほどとのこと。

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店内に入ると正面の小座敷と左の待合が20人くらいの客でぎっしり埋まっていた。聞きしに勝る盛況ぶりに思わず面食らうも、けっこう回転が早いんじゃないか、と甘く見て待つこと3、40分。ようやく玄関先の小座敷右手にある廊下を抜け、ガラス張りの縁側を通って奥へと進んだ。

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上の写真がこの日の席からの眺め。8畳2間続きの座敷に籐網代(とうあじろ)と葭戸(よしど)。夏の設えと庭の緑が目に涼しい。布張漆仕上の小振りな座卓は各間に2、3台のみ。実にゆったりと配置されている。

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上の写真左は待合奥の商品ディスプレイ。写真右は客間の手前側にある床の間の様子。祇園祭の設え。どこを見ても簡素でさりげなく、その質と心遣いの高さが伝わる。

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上の写真はわらび餅の近景。お抹茶セットの全景はこちら。強い粘りにつるりとなめらかな舌触り。独特の食感と濃厚な風味が素晴らしい。こちらは季節の生菓子・青嵐の近景。冷抹茶セットの全景はこちら

席を立ったのはすでに閉店時刻を大幅に過ぎた頃だったが、店員の方々には焦る様子も急かすそぶりも一切無く、なんとも贅沢な時間を過ごさせていただいた。京都の都心を少し離れた場所ならではの余裕。これで待合の混雑が無ければ最高なんだけど。いや、山鉾巡行の日にわざわざ来といてそれを言うのは厚かまし過ぎるってもんだ。

茶寮宝泉/京都市左京区下鴨西高木町25/075-712-1270
10:00-17:00時/水休(祝日は営業・翌日休)

2010年10月30日 23:00 | trackbacks (0) | comments (2)

ちょっといい風景 : 祇園祭・宵山の月鉾

7/16。21時過ぎにアトリエを出て祇園祭の宵山へ。

烏丸四条を西へ向かうと通りは溢れんばかりの人出。高層ビル群に負けじとそびえ立つ絢爛豪華な山鉾たち。甲高く荘厳な金属音を奏でる祇園囃子。

写真(クリックで拡大)は現在最大の鉾と言われるている月鉾。建造年についてはっきりした情報は見当たらないが、古くは1573年6月(同年8月に室町幕府が滅亡している)の刻銘が付いた部材も存在するとのこと。前後を飾る駒形提灯は今年から電球型LEDの内照式となっている。

初めて見る祇園祭は驚くほどカオティックで未来的だった。


祇園祭(Wikipedia)

2010年10月14日 02:00 | trackbacks (0) | comments (2)

都市とデザインと : 東京・STAND T

7/4。『STAND T』で夕食。東京駅前、新丸ビルの1Fにあるビアスタンド。山本宇一氏がプロデュースする渋谷『STAND S』(2008年10月オープン)の姉妹店として2010年4月にオープン。インテリアデザインはKata(形見一郎氏)が手掛けている。以下、写真はクリックで拡大。

外堀通りと行幸通りの角に面し、ビル商業ゾーンのメインエントランスに連なったガラス張りの店舗区画は、以前『PG cafe Paris』のあった場所。高過ぎる天井高といびつな平面形を、形見氏は最少限の手数でひとまとまりの空間に仕立て上げている。

フロアに点在する家具類とカウンター、間仕切りは概ね杉材に覆われ、素地の質感を生かした仕上げが施されている。天井のそこかしこからは縦長、横長の照明ボックスが吊るされ、それらに混じって白く大きな『T』のロゴサインがふたつ。照明ボックスの中にはそれぞれ黄色の蛍光灯が2本と白色の蛍光灯が1本。混色の微妙な光に包まれた店内には、賑やかな、でも不思議に冷めた雰囲気が漂う。その光景はどこか見知らぬ街角の止まり木を思わせる。

いただいたのはビールやソフトドリンクの他にグリーントマトのピクルス、にしん入りポテトサラダ、インカのチーズグラタン、牛すじと大根の煮込みなどなど。デザートにプリンアラモードも。ドリンクやフードはカウンターで注文し、そのタイミングによって自分でテーブルへ運んだり後で持って来てもらえたりする。このシステムがまだ試運転中なのか、今後もこのままなのか、そこのところは判然としない。なんともゆるいが、それもまた良し。

店を中心を占めるような造作や、象徴的な仕掛けはどこにも無い。テーブルに居ても、舗道から見ても、この店のテリトリーは至って曖昧に感じられる。その仮設性と、都会への浸透性ゆえの迫力は『STAND S』や『STAND G』(2010年7月オープン)よりも一層強い。行儀の良い丸の内の街並の真ん中にこんな店が加わったことのインパクトは、あの『丸の内ハウス』の登場に勝るとも劣らないんじゃないか。実に痛快だ。

STAND T/東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビル1F/03-3240-6008
11:00-22:30LO/無休

2010年10月12日 20:00 | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 白金台・Chocolatier Erica

7/4。白金台『Chocolatier Erica』(ショコラティエ・エリカ)をようやく訪ねることができた。オープンは1982年。おそらくその頃、世間は「ショコラティエってなんですか?」てな状況だったんじゃないか。内外装のデザインを手掛けたのはカザッポ&アソシエイツ(植木莞爾氏)。以下、写真はクリックで拡大。

地下鉄を降りて目黒通りから外苑西通りへ。坂道をしばらく北へと下ってゆくと、右手の白いタイル張りのビル1Fに『Chocolatier Erica』が現れる。ミントグリーンのファサード造作と、大きなガラス面越しに見える白いインテリアとの対比が爽やかだ。上の写真はファサードを坂のやや上から見たところ。ビルの平面形は右手の客席に向かってすぼまっており三角形に近い。こちらは下側から見たエントランスまわり。ドアハンドルのラインが優美。もう少し引いたところで見るとバックヤードの窓にもミントグリーンの造作が施されているのが分かる。

ドアを開けると左手にカウンターショーケース。正面の壁は白く細いスチール枠にミラーをはめ込んだグリッドで構成され、手前にふくらみながらゆるくカーブしている。上の写真は道路側の客席からカーブ面を見たところ。左にある展示台は華奢なパイプ脚で支えられミラーの前に浮かぶ。中央にはバックヤードへの入口。その上にある開口の内側に天吊型のエアコンが収まる。

グリッドはその枠だけを残してカーブの終端からさらに右手にある客席へとまっすぐ連なってゆく(上の写真)。壁沿いにはミントグリーンのベンチシート。その前にちいさな白い大理石の天板を持つ丸テーブルと、白い成型合板にパイプ脚のチェアが並ぶ。どのディテールもユニークで、特に背と座を別パーツとしたチェアのフォルムは印象深い。道路側にも同じテーブルとチェアがいくつか並べられており、合わせた席数は20弱ほど。オーニングを通した自然光と、間接照明がフロアを柔らかく包む。こちらはカウンター側への見返し(写真左)とベンチシートまわりのアップ(写真右)。全体にポストモダンエイジを微かに感じさせながらも、すっきりと引き締まった品のある空間にまとめられている。それにしても80年代の植木デザインをこれほど良好なコンディションで体験できるとは。素晴らしい。

上の写真は奥がトリュフ数種で手前がマボンヌと言う品。共通する素朴で優しい甘味は、この店が経た時の長さを感じさせるとともに、今や貴重な個性となっている。マボンヌはバー状のミルクチョコレートの中にマシュマロとクルミを入れたもの。見た目も食感も楽しい。持ち帰ったミントミステール(ゆず)ラムレーズンも実に風味豊かで美味しくいただいた。こりゃ東京土産に最適だな。

Chocolatier Erica/東京都港区白金台4-6-43/03-3473-1656
10:00-18:30/8月1日-31日,12月31日-1月3日休

7人の商空間デザイン(November 2, 2006)
ユーハイム 千駄ヶ谷店(September 18, 2009)
植木莞爾の言葉(July 25, 2010)

2010年10月07日 01:00 | trackbacks (0) | comments (4)

日々の生活と雑記 : さよなら元浅草

7/4。2005年からアトリエとして使用させていただいた元浅草のマンションの一室ともこの日でお別れ。

上は最後の掃除が済んだ室内全景。ヒノキのフローリング、水廻りの収納造作、ダウンライトなどはこのまま置いてゆく。

新しい住人がこの床にまた違った風合いを重ねてくれますように。ありがとう、またいつか、我が愛する東(ひがし)東京。

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2010年10月03日 01:00 | trackbacks (0) | comments (2)
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