7/31。高速バスで高松入り。『玉藻うどん』で食事後、維新派公演のための高速艇で早めに犬島へ。先ずは『家プロジェクト』を一巡り。瀬戸内国際芸術祭2010に合わせてオープンしたベネッセアートサイト直島の関連作品群。岡山県の離島、犬島北岸の港周辺に『F邸』、『S邸』、『中の谷東屋』、『I邸』の4つが点在する。建築設計は妹島和世建築設計事務所。うち3ヶ所のインスタレーションを柳幸典氏が手掛けている。以下、写真はクリックで拡大。
上の写真は犬島港から最も近い丘の上にある『F邸』を北側から見たところ(建物北面全景/建物東面全景)。アプローチは写真奥にあたる建物南側。西側エントランスから館内へ。中央に鎮座するネオンの『電飾ヒノマル』を一周し、その左脇の出入口から外へ進むと、くねくね曲がった塀の内側をミラー張りにした『鏡の坪庭』がある。簡潔で細部の美しい木造妻入り瓦葺きの建物を通して、周辺の緑豊かな環境と大胆不敵なインスタレーションが接続する。
港へ戻って南側にある住宅街へ。細道を抜けると曲面ガラスを連ねた建物『S邸』が登場。上の写真はその西面全景(東面全景)。柱になりそうな部材がほとんど見当たらない。驚くべき軽さ。
ガラス内の中空にはところどころ破けて矢の突き刺さったレースが吊るされている(東側から見たガラス内の様子/南側からのレース近景)。南側には若いオリーブの木々。これらが『蜘蛛の網の庭』。上の写真は北側からのレース近景。
丘の中腹に沿った細道を西へ向かうと芝生の中に銀色のお椀を伏せたような建物『中の谷東屋』が左手に現れる。上の写真はその東面全景。こちらは西面全景。コンクリートの基礎とアルミ合金の屋根の間に立つと物音が奇妙に反響する。いくつか置かれたチェアはSANAAがデザインし2005年に製品化された『アームレスチェア』のアルミバージョン。
東屋正面の坂道を北へ下ると畑の向こうに『F邸』を若干小振りにしたような建物『I邸』が見えてくる。南側へまわると色とりどりの花畑。建物内部のプロジェクターからガラス面に対して巨大な目の映像が写し出されている。あまりにシュール。白昼の悪夢を思わせる眺めに息を呑む。
どの作品にも説明的なところは微塵もなく、集落の合間にひっそりと佇む。作家を特定したことに加え、設置エリアを小さく限ったことによって、個々の作品の繋がりが生まれている。結果として独特の強力な「磁場」のようなものをつくり出すことに成功しているように思われた。謎めいた「風景」としての建物とインスタレーション。何やら得体の知れないぞわぞわした感覚を受け取ってしまったようだ。
池沿いの道を過ぎて港を一巡り。チケットセンターから南へ延びる道を『精錬所』へと向かった。
犬島「家プロジェクト」(ベネッセアートサイト直島)