2011年あけましておめでとうございます。と言いつつ引き続き昨夏の話題を。
8/1。犬島ツアーから一夜明けて高松『うどんバカ一代』で遅い朝食。この日は瀬戸内国際芸術祭2010に敢えて背を向け『栗林公園』をじっくりと堪能することにした。高松平野にモコモコと隆起し独特の景観をかたちづくる山塊群の一角、紫雲山を借景とする回遊式の大名庭園。1625年に生駒家が築庭を開始し、その後水戸徳川家が100年あまりをかけて造営。1700年代半ばに概ね現在見る姿となった。私たちが前に訪ねたのは20年以上前。幸か不幸か、その時のことはほとんど何も覚えていない。以下、写真はクリックで拡大。
東門から讃岐民芸館、商工奨励館を右に紫雲山へとまっすぐ進み、芙蓉池から左へ。鶴亀松を過ぎて箱松の奇観(全景/近景)に感心しつつ道なりにしばらく歩くとようやく最大の見所へ到着。南湖と掬月亭(きくげつてい)を中心とする見事な庭が圧倒的スケールとともに展開される。
上の写真は南湖南から紫雲山を見たところ。水際や植栽の造形が際立つ。こちらはもう少し紫雲山寄りの楓岸と呼ばれるエリアから掬月亭を見たところ。杮葺の直線的な屋根が控えめで良い。東岸には飛来峰と呼ばれる築山。その右脇にある吹上の美しい湧き水がこの庭園の水源となっている。
上の写真は飛来峰の頂から見た南湖全景。手前に偃月橋(えんげつきょう)。南湖の北岸をなぞり、根上り五葉松の脇を過ぎて、別名「大茶室」とも呼ばれる掬月亭へ。西側に設けられた管理棟の脇から縁側を介して初莚観北棟に上がる。ここから東に向かって初莚観、さらに掬月と三つの棟が雁行配置されている。こちらは南側の庭から見た初莚観外観。こちらはその庭を見返したところ。左手に見える八畳の茶室の場所は初莚観と掬月の接続部にあたる。先ずは初莚観北棟でお茶とお菓子をいただいて、いよいよインテリア探索。
上の写真は初莚観を東側へ向かって見た全景。広々とした座敷から白州、根上り五葉松を介して南湖へと視界がひろがる。和紙貼り天井のすっきりとした空間。床の間の背面は黒漆塗りの井桁菱格子で、その外側は紋紗貼りの障子。実に明朗でモダンな意匠に驚かされる。こちらは雨戸下桟のディテール。こちらは東の庭から蘇鉄の植え込み越しに掬月を見たところ。
そして上の写真が掬月を東側に向かって見た全景。こちらは西側を見返したところ。この棟だけに格天井が奢られている。南湖に向かって張り出すように配置され、三方が縁側となったインテリアはほとんど庭の一部。清々しく開放的なことこの上ない。
上の写真は掬月東縁側のディテール。欄干の端に設けられた僅かな傾きが庭へと向かう意識を加速し、飛び立たせる。何とも心憎いデザインだ。
これほどの壮大なスケールをもつ庭でありながら細部まで一切の手抜かり無く、至って品良くシンプルな意匠でまとめあげられていることに心底恐れ入った。この状態を維持することに要する手間と労力を考えると気が遠くなる。何たる意気と趣味の良さ。