2012/4/7。グタイピナコテカ跡から梅田方面へ移動。2011年5月のオープン以来、なぜか行く機会の無かった『JR大阪三越伊勢丹』を視察。商環境デザインを手掛けたのはコマースデザインセンター(徳島功氏)+STAR(佐竹永太郎氏)。
圧巻なのは大阪ステーションシティのアトリウム広場に面したメインエントランス階にあたる2Fからの3層吹き抜け(上の写真/横位置の写真はこちら)。上階にかけてややすぼまるようにして、楕円形に配置されたアルミ押し出し成型のルーバーがフロア中央に見事な曲面を描く。吹き抜けの下は化粧品売場。
上は3F通路からルーバーを見たところ。吹き抜けまわりのインテリアは至って簡潔。うっすらとグラデーションの施された手摺やルーバー越しに、売場や人通りが見え隠れする様子が楽しい。こちらはエスカレーター側から通路越しにルーバーを見たところ。
上は3F通路から2F化粧品売り場を見下ろしたところ。こちらは4F天井とルーバーが接する部分。上へ行くほどサイズの小さい4種類のルーバーが用いられている。
フレグランスやフラワーアレンジメントなどの売場が並ぶ1Fのデザイン(上の写真)もユニークだ。壁面や柱まわりなど、要所にゆったりとした曲線と曲面が取り入れられ、上階に共通するホワイト基調の簡潔な空間の中に優しく包み込むような感覚が与えられている。
上は6F通路の様子。アルミのルーバーによるアーチがこちらにも用いられ、売場のファサードを構成している。
写真にはあまり写っていないが、共用部だけでなく個々の売場まで、各フロアごとに統一感のあるデザインが施されていることは、伊勢丹系の百貨店らしい特徴だ。ただ、その強力な編集手法がここではやや過剰に働いていることは否めない。おそらく「斬新な共用部」に「いつも通りの売場」ではその関係に無理がある。今後のリニューアルを経て、ルーバーの向こう側から売場や商品が適度に主張しはじめた時、ようやくこの商環境は完成するのだろう。
大丸心斎橋店や日本橋タカシマヤなどの近代建築、岡山タカシマヤなどの村野藤吾作品を除いて、百貨店の商環境が記憶に残ることはほとんど無い。それだけに、『JR大阪三越伊勢丹』のデザインは、百貨店の生き残り云々以上ではなく、先日のDSMGやユニクロ銀座と同様、大型商業施設の新しいあり方を考えさせるものだった。
10Fレストランフロアで『高麗橋 吉兆』(インテリアデザインは橋本健二建築設計事務所)をファサードだけ拝見した後、B2F食品フロアの『赤福』でひと休み。赤福ぜんざいなどをいただいて帰京。
2012/4/7。『草間彌生 永遠の永遠の永遠』観賞後、駅へ向かう途中に『グタイピナコテカ』跡を通りかかった。
上は中之島ダイビルのちょうど南側にあるY字路の別れ際の風景。奥に見える工事現場がもと『グタイピナコテカ』があった場所。『グタイピナコテカ』は1962年に具体美術の代表であった吉原治良(よしはらじろう)が実家所有の油蔵を改装して構えた施設。多くの前衛アーティストたちがここで展示や制作を行った。インテリアデザインに関するところでは、野井成正氏(昨年にこの場所から徒歩10分ほどの『design de >』で開かれた展覧会が記憶に新しい)が工業高校卒業後に『グタイピナコテカ』に出入りしており、向井修二氏らの制作を手伝っていたことが知られている。
上は工事現場の仮囲い北側に取り付けられていた2枚のプレート。こちらは右のプレートのアップ。
上は先ほどの分かれ道にあった道標。1799年に建てられたもの。こどもの背丈ほどのみかげ石に「右ハ 梅田 十そう 大仁 尼がさ紀 左り 安治川 やぐら迄十七丁程」と刻まれている。こちらはその脇にあった旧町名「宗是(そうぜ)町」とその由来を記した碑。
ちなみに北向かいの中之島ダイビル5Fには『宗是』という名のそば店がある。渡辺節設計の旧ダイビル時代からこの辺りで親しまれている食事処だそうだ。また、1-3Fの商環境デザインはinfix(間宮吉彦氏/1F『丸福珈琲』と『サトウ花店』のインテリアも)、1F『タイユアタイ/レスレストン』と3F『ヴィノテカ ポルトガリア』のインテリアデザインはJA laboratory(東潤一郎氏)が手掛けている。
2012/4/7。京阪で大阪市・中之島へ。国立国際美術館で『草間彌生 永遠の永遠の永遠』。最終日の前日に滑り込み。
美術館に着くとまさかの長い長い行列。現代美術の展覧会であるとは言え「クサマ」の認知度は別格なのだと改めて思い知らされた。幸い入れ替えはスムーズで、待ち時間は屋外で15分、屋内に入ってさらに15分ほどで済んだ。上の写真はB1Fカウンターでチケット購入後、B3Fの会場入り口にたどり着くまでの途中で撮ったもの。会場外の動線上に鎮座する『大いなる巨大な南瓜』(2011)のまわりは記念撮影の人だかり。こちらの写真左は別の場所から見た南瓜と来場者の列。写真右は南瓜近景。FRPにウレタン塗装の表面は極めて滑らか。パターンはくっきりとしている。よく見ると黒をベースに黄色を重ねてあるようだったが、実際のところはどうなのだろうか。
会場入ると初っ端に『愛はとこしえ』(2004-2007)の連作。160mm×130mmほどのキャンバスをびっしりと埋めるモノクロのドローイングは、マーカーペンで即興的に描いた原画を原寸でシルクスクリーン化したもの。50点ものバリエーションがそれぞれに禍々しい美しさを放ちながら大部屋の四方に整然と居並ぶ様子は圧倒的だ。
他の作品で個人的に特に印象深かったのは『神を見つめていたわたし』、『青春を前にした我が自画像』、『青い目の異国で』(全て2011)のペインティング3連作。主に銀と黒の絵具で戯画的に力強く描かれたポートレート。
上は立体作品『チューリップに愛をこめて、永遠に祈る』のシリーズ。下の写真も同じく。展示室中ここだけは写真撮影OKだった(別アングルの写真1/写真2/写真3/写真4)。
下は草間氏のサイン。
下は赤い水玉のバルーンやFRPが設えられたチケットカウンター手前のアトリウムの様子(別アングルの写真)。
下は1Fエントランスロビーの手前屋外の風景。しだれ桜をバックに夕空へとのびる赤い水玉。さながらテーマパークの様相だ。
近作の平面作品を中心に据えた直球の展示内容は2004年の『クサマトリックス』や『草間彌生 - 永遠の現在』とはまた異質の凄みを感じさせるものだった。見逃さなくて良かった。
2012/4/5。朝から『マスターズクラフト パレスホテル東京』現場へ。翌々日にC工事(ほぼ)完了を控えて、クライアントへの引き渡し前の最終チェック。
床、壁、天井の内装仕上はすでに完了し、工場制作の造作物がこの日一気に設置された。そのため最終チェックとは言っても現場のカオスぶりは最高潮。まさに修羅場の様相。
こちらはフロア右手奥と正面奥に取り付けられたばかりの棚什器。それぞれ背側の上下に間接照明を備える。写真左上はフロア右手奥の可動棚什器。写真右上は下部の間接照明ボックス。タペストリー加工されたガラスのカバーをダボで受けて光源をほとんど遮ること無く拡散させている。写真左下はフロア正面奥の固定棚什器。こちらは前面を緩く傾斜させている。写真右下はその上部のディテール。
棚什器の上部壁面にはセン柾目の突板を短冊に割いて貼り付けた(上の写真)。ホワイトのオイルステインを拭き取って仕上げている。間接照明に控えめで優しい質感が加わった。
上の写真はエントランスから正面奥の壁と天井面を見上げた様子。天井には先日工場で見た14本の意匠ポールが取り付けられている。それぞれにオイスルテインでグレートーンの微妙な配色を施した。棚什器背面の三角フレームと相まって、ひとつの風景が出来上がる。下の写真はエントランス左脇から畳間の方を見たところ。
こちらの写真左上はフロア右手奥にある畳間。ディスプレイと浴衣のフィッティングに用いる変形一畳のスペース。左手にフックを兼ねた意匠ポール。正面奥の壁は幅1200mm、高さ3mほどの大きなミラー張り。元はガラス店から始まったイカハタさんの施工技術が発揮されている。写真右上はフロア左手奥の様子。織部釉陶器タイルの壁の前にレジカウンターが設置された。その前にごろんと置かれているのはこの付近に取り付けられる意匠ポール。写真左下はレジカウンター右脇の壁面見上げ。倉庫と売場の境目にあたる。セン柾目突板短冊貼の面とPB下地AEP塗装(ホワイト)の面、スチール下地メラミン焼付塗装の横格子のディテール。写真右下は先日制作段階をチェックしたショーケース。ガラスと照明器具、スエード調人工皮革張りのステージが取り付けられた完成品。
上の写真左は前々回の現場で取り付けられた壁埋込の棚什器に最終仕上げのラッカー塗料を吹き付けているところ。写真右は意匠ポールの取付が終わって概ね落ち着いたレジカウンターまわりの様子。
上は塗装工事の大詰めの様子。わずかな傷や痛み、塗り損じを見逃さず、丁寧にタッチアップを行う塗装屋さんの勇姿。
そんなこんなで、夕方までに工事はほぼ完了。上はこの日最後にフロア右手から見た店内全景。こちらはフロア左手からの見返し。一部什器の設置、追加や補修の作業を除けば、あとはクリーニングを残すのみ。
Masters Craft パレスホテル東京・什器チェックなど(2012/3/30)
Masters Craft パレスホテル東京・内装下地工事(2012/3/23)
Masters Craft パレスホテル東京・織部釉酸洗浄実験(2012/3/14)
Masters Craft パレスホテル東京・B工事中間チェック(2012/3/2)
2012/3/30。朝から『マスターズクラフト パレスホテル東京』現場へ。
到着するとフロア左手の床の上にクライアント工場によるオリジナルの織部釉陶器タイルがずらりと並べられていた。先日の実験を受けて400枚ほどのタイルすべてに酸洗浄が施されている。手仕事ならではの色合いのバラつきを生かして、配列の美しさを考慮しながら、一枚ごとの場所を勝野が決定。
下の写真は並べ方が決まった後に一部タイルのカットを行っているところ。現場に持ち込まれた工具では切断面の仕上がりが今ひとつ良くないことが分かったため、作業はこの後工場に持ち帰って行っていただくことになった。
午後からは施工ご担当イカハタさんの車で埼玉県草加市の塗装工場へ移動。最終工程の前に木工作什器類の状態をチェック。
今回の什器の主要部分にはセンの無垢材と突板(柾目)が併用されている。上の写真中央に集められているのは壁付の棚什器たち。背面にあたる部分の独特なフレーム形状が持つ意味合いについてはまた後日。
上は棚什器各部のディテール。独立したフレームを最少限のビスで繋ぎ木栓で隠している(写真左)。フレームにいくつか開けられた穴は可動の棚板を支えるダボをネジ止めするためのもの(写真右)。
上は可動の棚什器(写真左上)と意匠ポール(写真右上)。棚什器の隣におられるベージュの革ジャンにグラサンのイカす兄貴が五十畑社長。写真左下が意匠ポールのディテール。60mmの支柱に15mmの枝が各4本刺さっている。写真右下は支柱上面の様子。全部で14本のポールがこのネジ穴で天井面に固定される。
こちらはエントランスの左右両脇に置かれるステージ什器。下段がメラミン化粧板貼で上段がセン材。写真左下が下段上面2ヶ所にある配線カバー。写真右下が上段角のアップ。木口に無垢材、上下面に突板が貼られた様子。
こちらはフロア中央左手に置かれるショーケース。メラミン化粧板貼の本体にガラスケースが取り付けられる。写真右はガラス固定用の溝。こちらはエントランス正面に並べられるセン材のステージ什器たち。写真右は下部引出のディテール。前板の下端を斜めにカットして手じゃくりにした様子。
そしてふたたび現場へ。フロア左手最奥の壁面に先ほどのタイルが、カットの必要な部分を除いて、ほぼ貼り終わっていた。いい景色になりそうで一安心。
こちらの写真左上はこの日の天井の様子。照明器具の取付がほぼ完了している。店内のダウンライトの光源は全てLED。写真右上は壁沿いの間接照明ボックス。こちらの光源はシームレスライン(蛍光灯の一種)。二種の異なる光源が店内に奥行きを与えてくれることを期待。写真左下はミラー貼りを残してほぼ仕上がった壁面の様子。写真右下は先ほどのタイル面下にあるカウンター什器のディテール。上段引き出しと下段扉の間に什器の継目が目立つ。後日メラミン化粧板を貼って隠していただくことに。
床面の一部にはすでに仕上げのリノリウムが貼られはじめている。内装も工場制作物も、いよいよ完成形が見え始めた。次に来た時が山場だな。
Masters Craft パレスホテル東京・内装下地工事(2012/3/23)
Masters Craft パレスホテル東京・織部釉酸洗浄実験(2012/3/14)
Masters Craft パレスホテル東京・B工事中間チェック(2012/3/2)
2012/3/24。『カフェーパウリスタ』(1911年開業/現在地での営業は1970年から)でモーニングの後、パナソニック汐留ミュージアムで『今和次郎採集講義』。『かおりひめ』で釜揚げたらいうどんとミニあられ丼のセットと伊予定食の昼食後、末広町・3331アーツ千代田で『つくることが生きること』。
そんなこんなで代官山へ移動。2011年末オープンの商業コンプレックス『DAIKANYAMA T-SITE』にある『北村写真機店』を視察。『TSUTAYA』の母体であるカルチュアコンビニエンスクラブと『カメラのキタムラ』が手掛ける写真機器店。インテリアデザインは植木莞爾氏(近年、一般にはアップルストアのコンセプトデザインや建築家・谷口吉生氏とのコラボレーションなどで著名)が代表を務めるカザッポ&アソシエイツ。
旧山手通りの北側に面した『蔦屋書店』(建築デザインはKDa)の2号館と3号館の間を抜けてしばらく進むと、右手にある白い建物の1Fに控えめな自動ドアと小さな店名サインが見つかる。
店内はフロア手前と奥のエリアに光天井によるフラットなライティング、フロア中央の木製棚に対してはスポットライトによるライティングを配し、明快にゾーニングされている。
上は店内奥右寄りからエントランス側を見返した様子。コンパクトな店内にボリューム、バリエーションともにかなりの商品を置いてそのまま見せる手法がとられているが、全ての造作が平行線上に並ぶ厳しい構成は、雑然とした印象を一切与えない。
2Fはアマナイメージズのフォトストックを高画質プリント、額装したギャラリー(上の写真)。すべての作品は備え付けのiPadからサイズやフレームを指定して発注・購入することができる。こちらはガラスとステンレスフラットバーによる階段手摺のディテール。これほどシンプルな納まりなのにビクともしない。
代官山 北村写真機店(T-SITE)
下のリンクは植木莞爾氏に関する過去記事。
7人の商空間デザイン(2006年11月02日)
植木莞爾の言葉(2010年07月25日)
白金台・Chocolatier Erica(2010年10月07日)
ちなみに『北村写真機店』の向かいにあるカフェ&バー『IVY PLACE』の内外装デザインはカザッポ&アソシエイツ出身の長崎健一氏(KROW)が手掛けているとのこと。内装屋諸君は要注目の師弟競演だ。
下の写真は夕暮れの『IVY PLACE』。その上に金星と木星が並ぶ。東京の都心にもこんなに大きな空があったんだな。
その後さらに『CAMPER』代官山店(2009/インテリアデザインはコンスタンチン・グルチッチ氏)、『TSUMORI CHISATO』代官山店(2011/インテリアデザインはイガラシデザインスタジオ)、『SUNAO KUWAHARA』代官山店(2000/インテリアデザインはWONDERWALL)を短時間視察して帰京。
2012/3/23。『マスターズクラフト』パレスホテル東京の現場を出て銀座へ移動。久々の『ランブル』でスマトラのカフェノワールとランブレッソをいただいてから『SHISEIDO THE GINZA』(2011/内外装デザインはKDa)を1Fのみ視察。さらに今年3/16にオープンしたばかりの『ユニクロ』銀座と、川久保玲氏(コムデギャルソン)のディレクションによる『ドーバーストリートマーケットギンザ』(以下DSMG)をじっくりと拝見した。それぞれギンザコマツのテナントとして東館(ユニクロ)と西館(DSMG)をほぼ専有する大型店。
上の写真は中央通りに面した『ユニクロ』銀座のエントランス。こちらは上階を見上げたところ。12Fまで全部ユニクロ。フロア面積は世界最大とのこと。インテリアデザインはWonderwall。こちらは1F左側からの全景。正面にLEDディスプレイの列柱を見ながら、フロア中央に据えられた巨大なガラスケース状のショーウィンドウ脇を抜けるようにしてエスカレーターへ。
2Fの中央もまたガラスケースで占められ、その内部は1Fを見下ろす吹き抜けとなっている。上がその全景。面発光する天井と床に挟まれ、垂壁や梁型を覆う鏡面のステンレスが回転するボディの群れを増殖して見せる。大胆、かつシンプル極まりない仕掛けだ。
さらに圧巻なのが11FのUTストア。上がそのフロア中央からの全景。天井は鏡面仕上げ、床はバイブレーション仕上げのステンレス。左右には食品庫を思わせるステンレス扉のショーケースで埋められ、フロアには分厚い透明アクリルの棚什器が整然と並ぶ。
上はやや斜めからの全景。ショーケース上部にあるジェニー・ホルツァーばりの赤いLEDディスプレイが天井面に写り込む。こちらはアクリル棚単体の様子が分かる写真。こちらは壁側ショーケースのディテール。シャープなことこの上ない。
上は10Fのユニクロ×アンダーカバー。ウッドフローリング、オリジナルのカーペットや壁紙、ペンダントライトなどを用いてカジュアルで家庭的な雰囲気に。こちらはその別の位置からの写真。こちらは12Fのイベントフロア。
4Fと7Fにはすずらん通りをまたいで西館『DSMG』へ繋がる連絡通路がある。上は4F連絡通路の『ユニクロ』側から『DSMG』側を見たところ。アーチ状の造作は亜鉛メッキのスチールで仕上げられている。ナイス駄洒落(亜鉛メッキの別称はユニクロメッキ)。こちらは7Fにある『ローズベーカリー』銀座。下はすずらん通りに面した1Fの様子。
『DSMG』の売場はコムデギャルソンと他の数多くのファッションブランドとのコラボレーションで構成されている。貧乏人には手の届かない値札がほとんどではあったものの、今や大型店からはほとんど失われてしまっているファッション特有の高揚感を本当に久しぶりに味わうことができて実に気分が良かった。インテリアの様子は公式ホームページと『FRAME』の記事に詳しい。写真やテキストでは面白さを伝えることは難しいが、内装屋諸君は必見だ。何しろ内装屋は絶対にやらない(でも内装屋しか気付かない)であろうクレイジーなディテールが満載なのだ。
それにしても、名店として知られたギンザコマツを舞台に繰り広げられるファストファッションとハイファッションの両雄による意地のぶつかり合いは、まさに真剣勝負の凄まじさだった。片方では5000円のジャケットが、もう片方では50万円のジャケットが、それぞれの美学と哲学を持って対等に商われている。思わず目眩がしそうなこのギャップこそが、現在のファッションの在り方であり、また銀座と言う場所の在り方でもあるのだろう。
これが21世紀なんだな、と強烈に印象づけられるふたつの店だった。
UNIQLO GINZA
DOVER STREET MARKET
2012/3/23。閉店を翌日に控えた『万惣』神田本店へ。M2Fのフルーツパーラーで朝食を摂った。
上はフルーツホットケーキ。こちらは普通のホットケーキ。その美味しさについては以前の記事に書いた通りだ。
上の写真左は万惣フルーツパフェ。写真右は苺のピュアジュース。どちらもコンディション最高のフルーツ素材がこれでもかとばかりに投入された逸品。問答無用の美味。
上は以前に紹介し損ねたM2Fフルーツパーラー店内の様子。壁面を覆うガラス質モザイクタイルの銅色と天井の明るい水色がシンプルに対比されたインテリアは、落ち着きと華やかさを同時に感じさせる。何度見ても印象深い。こちらはメインの客席全景。こちらは1Fくだもの売場へと続く階段の様子。こちらはカウンターショーケースを兼ねたパントリー。インテリアデザイナーの名前は結局分からず仕舞となってしまった。
上は1Fくだもの売場からM2Fフルーツパーラーにかけての店構え全景。こちらは中央通りと靖国通りの交差点北西側から見たビル全景。さほど古そうには見えないが1967年築とのこと。それにしてもビルの取り壊しが全店休業の直接の原因とはなんともやるせなく残念だ。近い将来に、あの味とあの雰囲気が、何らかの形で復活してくれることを願わずにはいられない。
神田・万惣フルーツパーラー(2009/1/23)
万惣フルーツパーラー
2012/3/23。『マスターズクラフト パレスホテル東京』現場へ。この日は内装下地がほぼ仕上がった状態でのチェック。
上の写真はエントランス左手奥からの店内全景。壁・天井のLGS(軽量鉄骨)が組み上がり、PB(プラスターボード)も概ね貼り終え、空間の正確なボリュームを容易に想像できる状態になった。すでに天井には照明器具や空調設備取付のための穴が開けられ、点検口も取り付けられている。調整の甲斐あって、割合整然と並んで見えることに一安心。写真中央奥に山積みされているのは取付前の固定什器類。
上の写真は棚什器を取り付ける直前の様子。先ずは3台の什器をぴったりと連結。
そして壁の凹みに埋め込んで固定。設計上は店内側へ75mm出っ張らせる予定だったが、下地寸法に思いのほか余裕があったためその場で30mmに変更。こちらは取付後の拡大写真。棚板を差し込むためのリブ自体がデザイン上のアクセントとなる。木工作下地ラッカー塗装仕上。
上の写真はエントランス右手奥天井のディテール。スリット部分の上面に光源を取り付けて間接照明にする。ギリギリまで近づいて覗くと光源がわずかに見えそうだったので、天井面のPBを少しだけ伸ばしてスリット幅を狭くすることにした。こちらは下側の間接照明ボックス。設置方法についてはまた後日。
上の写真はエントランス右手奥壁面の一部(左が腰高の部分で右が上部の見上)。壁の下地は最終的にPBとケイカル板(薄グレーの部分)を貼り重ねて表面とする。ミラーや羽目板が埋め込まれるところはPBのまま。
上の写真はエントランス左手奥の工事の様子。天井のPBエッジに樹脂製のコーナー材を取り付けているところ。ちょうどこの下が会計カウンターとなる。その右手が倉庫、左手がショーウィンドウへの入口。その上部にあるルーバーは防災用の排煙開口。
上の写真はエントランス右手奥からの店内全景。中央に小さく見えるのは倉庫奥の分電盤取付の作業を見守る現場監督・AYAKA様。
Masters Craft パレスホテル東京・織部釉酸洗浄実験(2012/3/14)
Masters Craft パレスホテル東京・B工事中間チェック(2012/3/2)
「カーネーション」が終わってしまった。デザインを生業にすることをあれほど直球で描く朝ドラはきっと今後当分ないだろう。好演の尾野真千子氏から夏木マリ氏へバトンタッチしての晩年編が「デザインと治癒」という極めて今日的なテーマで締め括られたことは興味深い。
しかし糸子が最後に設けたサロンが恐ろしく悪趣味だったのは残念だ。実際の糸子、いや小篠綾子は「洋裁コシノ」のリノベーションをインテリアデザイナー・野井成正師匠に託している。下のリンクがその写真。小篠氏は優れたクライアントでもあった。
加えて、そんな小篠氏の遺作とも言えるサロンが、ドラマの便乗商法で現在こんなことになってしまっているのがまた残念でならない。 当の小篠氏は下界のことなどさほども気にかけてはおられないかもしれないけど。