9/11。高輪「マスターズクラフト さくらタワー東京」現場へ。商品陳列が進む中、電話まわりの配線のやり直しや花入の取り付けなど。残工事を一通り片付ける間にもう夕方。ホテルにチェックインして「ナイルレストラン」で夕食後、再び現場へ。フォトグラファー・佐藤振一さんと合流して完成写真撮影。朝9:00まで12時間じっくりと。
以下は残念ながら佐藤さんの写真ではなく、合間に私たちが撮ったもの。
明け方に撮影したファサード正面。こちらはやや斜めから見たところ。密度の低い黄金色のフレームが、空間を分割しつつ奥の庭園へと視線を繋げる。
エントランスから見た未明の店内全景。床材はブルーグレーのリノリウムシート。墨流し調の表面を海に、点在する漆黒の什器を島に見立てる。八海・四島の枯山水としてのインテリア。
エントランスからやや右側(南西角方向)を見たところ。こちらは明け方に撮影したその近景。こちらはさらに近づいた様子。
エントランスから右側(西方向)を見たところ。破れ格子と間接照明を背負ってディスプレイが浮かび上がる。こちらは壁付什器全体を斜めに見たところ。
西側壁沿いに南側を見たところ。フレームの谷間から覗く明け方の庭園。
店内奥(南側)には、中央にある建物の柱を挟んで、ランダムな配置の角パイプで支えられた真鍮のステージが並ぶ。上の写真はその西側。庭園の築山へと連なるひな壇状の什器構成。こちらは東側。こちらは南西角の様子。ストックの扉を兼ねたミラー面が窓際の風景を映す。
エントランスから左側(東方向)を見たところ。
北東角・会計カウンターまわりの全景。市松のタイルはマスターズクラフトのオリジナル。こちらはやや斜めから見たところ。こちらは袖壁部分のディテール。こちらは上部のフレームを見上げたところ。
会計カウンター・荷物置部分のディテール。グレーのタイルには細かな青海波が描かれている。見た目は繊細だが、屋外や床にも使用できる表面強度を持つ。
一輪挿の花入もマスターズクラフトのオリジナル。上は南側中央・建物柱面の花入(近景)。花は銀座「野の花 司」で買って勝野が生けたもの。こちらは会計カウンター上の花(正面)。こちらは共用通路に面したショーウィンドウの花。
この店のために作成された2つの花入。右が南側中央・建物柱面に、左が共用通路側ショーウィンドウに取り付けたもの。錆びた金色と墨色のテクスチャー。
佐藤振一さんの撮影風景。こちらは撮影用に什器から間引いた商品を共用通路に並べた様子。この日は意外と商品の移動が少なくて助かった。
佐藤さんに撮っていただいた完成写真は年内に公開の予定。仕上がりが楽しみだ。
高輪「マスターズクラフト さくらタワー東京」は9/14にオープンを迎えた。
9/4。高輪「マスターズクラフト さくらタワー東京」現場へ。
店名サインが付いた。先日貼ったエントランス上部のステンレス面にカルプ文字。こちらはフロア北西角から見た店内全景。
フロア北東角・会計カウンターの意匠パイプ取り付けが完了。什器と同じ25mm角パイプのゴールド色メッキ。売場への出入口には自在扉が付いた。
エントランス脇のショーケースにステージの取り付けが完了。黒いスウェード調人工皮革張り(拡大写真)。ショーケース内にはLEDスポットライトが2灯。
上は南側窓に面して新しく作った腰壁の拡大写真。間接照明の当たった状態でよく見ると所々ビニルクロスの浮いていることを発見。ここに来て残念ではあるが、再度下地処理の上でビニルクロスを張り直すことに。工事引き渡しまであと2日。
9/5。引き続き「マスターズクラフト さくらタワー東京」現場へ。
商品が一部到着し、ひとまず廊下に積まれた状態。
養生シートがすべて剥がされ、クリーニングを終えた店内正面全景。前日に南側窓のブラインドの取り付けも完了。腰壁との間に、庭園を細長く切り取る寸法。こちらは先ほどと同様にフロア北西角から見た店内全景。
フロア北東角・会計カウンター前から見た店内全景。黒い塊と、黄金色の破れ格子が、間接照明を境にして積み重なる。こちらは南西角からの店内全景。こちらは南側中央から会計カウンターの方を見たところ。こちらはフロア中央から見た東側全景。
全ての造作が完成した会計カウンターまわり。翌日は工事引き渡し。
9/6。「マスターズクラフト さくらタワー東京」現場へ。関係者が揃っての工事引き渡し。若干の補修や追加工事は残ったものの、幸い大きな問題は無く手続きは終了。早速商品や事務機器のセッティングに取りかかることとなった。
上はフロア南東角と南西角の2ヶ所にあるミラー面のディテール。ミラーはストックスペースの扉を兼ねており、房はその取手となる。京都の伝統工芸士さんに作成していただいた房に真鍮の玉を追加した。こちらは取り付け前の房全景。
14日のオープンに向けて、気の抜けない準備期間がもうしばらく続く。
9/3。高輪「マスターズクラフト さくらタワー東京」現場へ。
島什器(フロアに点在させる什器)の設置が始まった。写真は昼休みの様子。中央にキューブ型の島什器を10台並べてステージに。その脇で昼食を摂る大工さん。
さらにそのまわりに4台の島什器を配置。中央のステージ上には別バーツのひな壇。こちらはエントランスからやや左側を向いたところ。
夕刻前にほぼ全ての什器の組立が完了。
南東角から見た店内全景。
東側からまっすぐに見た店内全景。黄金色の破れ格子が織重なり空間全体を分割する。こちらは西側什器群の近景。
西側什器群の間から南側庭園を見たところ。島什器は上部フレームのトップが2.2mになるものと1.4mのものを各2台制作。視線の動きを発生させ、店内の散策を促す。
カルプ文字(発泡ウレタン製切文字)の店名サインが到着。
いつもの現場全景。エントランス上部にあったガラス面がステンレス板で塞がれている。先ほどの店名サインはこの中央に取り付ける。ようやく店らしくなってきたところでこの日の作業は終了。工事引き渡しまであと3日。
9/2。前日に続いて高輪「マスターズクラフト さくらタワー東京」現場へ。
依然、ごった返したフロアの端々で作業が進行中の様子。タイル工事が終盤に入り、目地の施工が始まっている。大工さんは家具の組み立てを開始。
電気屋さんは間接照明の取り付けを完了。先日の間接照明ボックスにシームレスライン(DNライティングの商品名/両端まで発光する細型の蛍光灯)が収まった。こちらにごっそり集められているのはパッケージから取り出されたスポットライト本体。ランプの取り付け後、天井の既存配線ダクトに設置される。
西側壁付什器の地袋(下部収納)を細かく調整する大工さん。
先ほどの地袋に金物の上部フレームを取り付けた状態。什器背面に金ピカの破れ格子が現れた。こちらは斜め方向から全体を見たところ。
タイル工事が完了。市松パターンに覆われたマッシブな会計カウンターが出来上がった。
タイル張りの近景。グレーのタイルには細かな青海波のパターン。空間に小紋を纏わせる。こちらはタイル表面の拡大写真。
壁付什器の概形が組み上がったところでこの日の作業は終了。工事引き渡しまであと4日。
9/1。「マスターズクラフト さくらタワー東京」現場へ。
共用通路側から見た現場全景(北→南方向)。金物什器、木工什器、タイルなどがすでに到着している。
設置を翌日以降に控え、フロアに積み上げられた什器類。
什器類のエアパッキンや養生シートを外した様子。現場は一挙に金ピカ状態に(他の金ピカ写真その1/その2)。
主な木工什器は黒いメラミン化粧板仕上。ほとんどが地袋(下部収納)としてその上に金物什器を乗せて設置される。
タイル工事が始まった。水を使わない屋内の表面仕上なので、旧来の下地モルタルによる施工ではなく、石膏ボードにボンドを塗ってそのままタイルを貼り付けてゆく。こちらはマスターズクラフト本社から届いたオリジナルのタイル数百枚。手づくりの工程が多いため、コンディションのバラつきが表面や側面の仕上がりによって細かく分類されている。個々のタイルの状態を見ながら、適材適所で貼ってゆかなくてはならない。
タイルの見分け方をタイル屋さんに説明する現場監督・瀬戸本さん(コラボデザイン)。
この日のタイル工事はこの辺りまで。会計カウンターの表面やそのまわりの壁が全てこうしたオフホワイトの市松パターンとなる。こちらは会計カウンター内部の様子。白いメラミン化粧板仕上。
この日最も主要な作業は大工工事。上は窓際(南側)の腰壁に間接照明ボックスが取り付けられた様子。こちらはショーウィンドウ(北側共用通路に面する)とオフィスの間に引戸を取り付ける大工さん。
18:00頃にこの日の作業を終えた店内全景(北→南方向)。こちらはレジ台の前辺り(北東角)から見たところ。
ふたたび共用通路からの現場全景。工事引き渡しまであと5日。
8/30。「マスターズクラフト さくらタワー東京」金物什器の仕上がりをチェックするため制作工場へ。場所は関東方面ではなく大阪府門真市。
工場内全景。広大な面積に金属加工機械や資材が整然と並んでいる。手前に見えるのが今回発注された金物什器類。
工場の専務氏から熱心なご説明をいただく勝野。金属の加工時に注意すべき点、国内メッキ業界の現状などを伺うことができて大変勉強になった。
壁付什器の背面パネルとして使用されるパーツ。高さ1600mm。今回の什器の金物部分はほぼすべてこうした金色のメッキで仕上げられている。
エアパッキンに覆われ出荷を待つパーツたち。
ショーケースのフレーム。高さ1200mm。こちらは浴衣類のディスプレイに使用されるハンガーパイプ。
プレート状の金物の曲げ加工に使用される大型機械。左手の端末で動作プログラムを行う(こちらはロッド状の金物の曲げ加工用)。その振る舞いは、武骨な外見からは想像できないくらい、実に滑らかで繊細だ。
8/20。「マスターズクラフト さくらタワー東京」現場へ。C工事(テナントの造作や設備の工事)が始まった。
共用通路側から見たサッシ全景(北→南方向)。既存のガラス全面が養生シートで覆われている。
店内に入って窓側を見たところ(北→南方向)。造作だけでなく、既存の設備を含め、ほぼ全てが整然とした左右対称のテナント区画。商業建築設計におけるさりげなく、しかし明確な美意識。工事前にこうしたことを感じる物件は滅多にない。
店内西側から東側を見たところ。薄茶の石膏ボードが先日のA工事で新設された共用部とテナント区画の間仕切り。電話をかけているのは今回の現場監督・コラボデザインの瀬戸本さん。
B工事(テナント側から共用部の業者さんへ依頼する設備工事)で新設したエントランスまわりのダウンライト(4灯)。やや暗めではあるが、今後のランプ交換が可能なLED器具を採用している。同じくB工事での一部配線ダクトの移設も完了。こちらはA工事で撤去されたものを流用している。
C工事は墨出し(新設造作の設置位置を現場に下描きする作業)がほぼ完了。上の写真では床に什器の設置位置が描かれているのが分かる。壁の痛んだビニルクロスは色味や質感を合わせたものを新しく張り直す。
タイルとメラミン化粧板のサンプルを現場に並べたところ。細かな青海波のパターンが描かれた150角のタイルはマスターズクラフト製造のオリジナル品だ。
7/22。「マスターズクラフト さくらタワー東京」現場へ。A工事(共用部の造作や設備の工事)の開始に伴い、既存店舗の内装造作が全て撤去されたテナント区画をチェック。
東側から西側へのテナント区画全景。はじめて見るがらんどうの状態。床はコンクリートむき出し。天井は設備工事のため一部撤去されている。
先ほどとは逆に西側から東側を見たところ。共用部の壁下地となるLGS(軽量鉄骨)が立ち上がり、テナント区画の形状と面積がこれにてほぼ確定。盆が明けたら間もなく着工だ。
そんなわけでデザイン作業は大詰め。上の写真は8/6。使用する内装仕上材を検討中の様子。床用のリノリウムシート、壁・天井用のビニルクロス、什器用のメラミン化粧板や金物など。
8/13。大阪・中津にあるタチカワブラインドのショールームへ。上の写真は南側の窓面に用いるスクリーンの素材を検討中の様子。質感や光の透け具合をチェック。
6/18。「マスターズクラフト さくらタワー東京」現場へ。岐阜県瑞浪市の陶磁器メーカー「マスターズクラフト」が手掛ける和雑貨店。2002年の 品川プリンスホテル、2012年のパレスホテル東京(2012)に続いて、3度目のお手伝いをさせていただくことになった。
品川駅高輪口から徒歩数分のホテル「ザ・プリンス さくらタワー東京」外観。村野・森建築事務所(現・Murano Design)設計の建物は、簡潔で整然とした全体に可愛らしいディテールを控えめに散りばめたインテリアが特に魅力的だった(当時の写真はこちら)。現在ホテルはリニューアル工事中で、これらの造作は既に存在しない。
マスターズクラフトの入居するテナント区画正面外観。この時点ではホテル直営の雑貨店が営業中だった。
今回の設計条件は古い商業施設ならではの厳しさだ。退店時には現状復帰が原則なわけだが、照明器具や空調設備、天井やサッシなど、写真で見ることのできる造作は什器類を除いてほぼ全て既存品。基本的にはいつでも撤去可能な置式の造作のみでほぼ全てのデザインを完結させる必要がある。こちらは区画内西側から東側を見た全景。
区画内北東側から南西側を見たところ。南面には大きな窓がある。
南側窓から外を見たところ。築山を覆うツツジの植え込み、さらに被さるモミジとサクラ。什器とレースカーテンに遮られていたこの眺めが、今回の私たちのデザインの発端となった。
こちらは共用通路側サッシ、エントランスドアのハンドル。こうした細部を含め、村野事務所によるデザインのさりげないエレガンスに応えるものができれば幸いだ。