Love the Lifeの最新作「Masters Craft Sakura Tower Tokyo」の完成写真をアップしました。Worksからご覧下さい。フォトグラファーは佐藤振一さん。
品川駅の西側に点在するプリンス系ホテルのひとつが2013年にリニューアルオープンを迎え、それまでホテルの直営だった地上階のスーベニアショップが新たにテナントとして改装された。デザインにあたって、ホテル側は既存のストアフロントと照明を含む電気設備の現状維持を条件とした。また、クライアントは移設可能な造作を主体とする売場構成を要望していた。
フロアの北側は共用通路に面し、南側には大きなガラス面がある。その向こうには斜面を覆うツツジの植え込みが連なり、さらに被さるようにしてサクラやモミジの木々が植えられている。手入れが行き届いているとは言えないが、季節の移り変わりを感じるには十分な設えだ。以前の店では什器とカーテンによって遮られていたこの庭が、私たちには大きな手がかりとなった。
私たちは低めのステージをフロアに点在させ、そのうちいくつかに細いフレーム状の造作を組み上げることで、商品展示に必要な機能の全てを賄うことにした。こうして共用通路から屋外へ、ひと繋がりの眺望を確保することができる。植え込みを山並みに見立てれば、店はさながら借景の枯山水だ。一面ブルーグレーのフロアと黒い塊状のステージは波間に浮かぶ神山を象徴する。レジスターまわりはウォームグレー2トーンの特注タイルで仕上げた。この市松パターンは東福寺方丈庭園などに見られる井田の表現から引用されている。左右対称を基調とした全体のレイアウトは、村野・森建築事務所による細やかな環境設計を素直に反映したものだ。
木々の緑を背景に、様々な和雑貨が次々に視界へと現れる光景は、私たちの想像を越えて楽しく華やかなものだった。金色にきらめく破れ格子のフレームは「蓬莱の玉の枝」を連想させる。