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life of "love the life"

update info : ふつうの家04・完成写真アップ

Love the Lifeの新作「ふつうの家04」の完成写真をアップしました。Worksからご覧下さい。

香港からのメールが届いたのは2015年の4月のことだ。京都に新築の分譲マンションをセカンドハウスとして購入する予定だが、標準の内装に不満を抱えているとのこと。建設上の条件内でのカスタマイズと、それだけでは対応できない造作のデザイン、家具や家電のコーディネートを私たちに依頼できないか、という内容だった。不慣れな英語のメールでどうにかやり取りしつつ、その月末にはディベロッパーとの打ち合わせを設け、5月頭に最初のラフ案を作った。

その月末に来日したクライアントは、想像していた通り聡明で、とても慎しみ深い人物だった。日本の都市環境は香港とは大違いだ、と彼は言う。静かで、自然に近しく、どことなく懐かしいと。仲の良い夫婦と小学生兄妹の四人家族にはプライバシーへの過度な気遣いは必要なさそうだ。私たちは2004年に東京でデザインした「森の壁」のコンセプトを、京都でこの家族のためにもう一度新しくデザイン化し直せるのではないかと考えた。

大抵の場合、集合住宅の各戸はいびつな白い容れ物でしかない。それにしてもこのマンションのいびつさと天井の低さは格別だった。私たちはまず徹底的に柱型・梁型を整理することで不躾な建物の存在を意識の外へ消し去ることにした。そうしてできたニュートラルなボリュームになんらかのコントラストが加われば、それが生活の「手がかり」になる。大胆な空間操作よりも、表装と陰影を丁寧に制御することが重要だ。

また、私たちは、北山杉の突板を濃いアンバーに染色し、短冊状にして並べた面を「Kitchen-dining room」のあちこちに配置することで、室内を物理的に仕切ることなくいくつかのエリアに分割しようとした。標準仕様では廊下側にあった「Room 1」の入口は「Room 2」と同じく「Kitchen-dining room」側へ移動し、ドアを引戸に変更した。引戸を開け放てば生活空間は大きく拡張され、閉じれば間接光に照らされたアンバー色の大きな面が現れる。北山杉の素朴な質感とともに、そこにはいつも家族の気配が存在する。

業務契約から基本設計まではあっと言う間だったが、そこから先は長引いた。行きつ戻りつ、多くの調整を経てマンションの建設工事が終わり、ようやく内装工事が開始される頃には最初のメールから一年余りが過ぎていた。家具や家電が設置され、細かな残工事までが片付いたのは2016年の10月だ。その間クライアントは実に忍耐強く事の運びを待ち続けてくれた。

そして12月初頭、彼の立会いのもとでオーディオとインターネットのセッティングが行われ、「ふつうの家04」は完成した。明けて1月中には家族みんなでこの部屋へやってくるそうだ。今後は京都を拠点とした中長期の滞在や兄妹の留学など、多様で密度の高い体験がこの家族を待ち受けていることだろう。彼らにとって、この国がいつまでも癒しと発見に満ちた環境であり続けられるよう、心から願う。

2017年01月01日 00:00 | trackbacks (0) | comments (0)
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